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身代わり②
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「婚約はどうなるのですか……僕とジルバート様は……」
「まだ社交界で公式に発表したことはないだろう。初めからオリビアと婚約していたことにすればいい。そうすればお前も余計なことを考えず嫁ぐことができる」
お父様の言葉が建前だということはわかっている。可愛いオリビアが平民出身の騎士団長に嫁ぐことが嫌なのだ。だから僕を身代わりにすることにした。
両親の愛が偏っていることはわかっていた。生まれてから十八年、自分もそれを受け入れて生きてきたから構わない。けれど今回のことはあんまりだ。
「ジルバート様僕は……」
助け舟を出してほしくてジルバート様に声をかけようと口を開いた。
それとほぼ同時に、執務室の扉が開き中へとオリビアが入ってくる。彼の足取りはやけに軽い。
「お父様っ、僕、ジルバート様の婚約者になれるの!?」
「オリビア、盗み聞きしていたのか?悪い子だ」
隣にきたオリビアの額を、お父様が小突く。その一連の流れを見つめながら、まるで自分だけ違う場所に立っているような心地になった。
きっと僕が同じことをしたら、お父様は目くじらを立てて怒るのだろう。長男のくせにはしたないと。
「俺はオリビアとの婚約を受け入れます」
ぼーっとオリビアを見つめていた僕は、ジルバート様が発した一言で意識を覚醒させた。彼の言葉が信じられず耳を疑ってしまう。
「ジルバート様……なんで……」
僕達の関係はそんなにもあっさりと解消できてしまうものだったのだろうか?
いやきっと、先程の彼の言葉がすべてを証明している。
オリビアを見つめるジルバート様の瞳に、隠しきれない熱が含まれていることに気がつく。だから僕はそれ以上なにも言えなくなってしまった。
「すまないアルビー……。君を大切にしなくてはいけないと自制していたけれど、オリビアへの気持ちをもう抑えることができないんだ」
「……っ……」
泣きそうだった。
僕だけがこんなにも辛い。ジルバート様とオリビアは笑顔を浮かべながら、幸せそうに微笑み合っている。お父様も二人の様子を見て満足そうだ。
やっぱり僕だけが蚊帳の外にいる。
愛情が欲しかった。誰でもいいから、僕だけを見てくれる唯一が欲しかった。だからジルバート様と婚約したとき、ようやく僕の欲しかったものが手に入ると思ったんだ。
そんな不純な気持ちを抱えていたから、今こうして彼から見放されているのかもしれない。
「そういうことだ。嫁ぐ準備をしておけ。一ヶ月後にはバトラー家の屋敷に向かってもらう」
「……はい。お父様」
反論をする気はもう起きなかった。ただ、夢であってほしい。
受け入れられない現実が襲いかかり、視界はぼやけている。それでも、涙を見せることは許されない。
僕はオリビアの兄だから。
オリビアが笑えば一緒に笑い。泣けば寄り添ってあげる。そうするように教えられてきた。そうする以外の生き方を選ばせてはもらえなかったんだ。
「まだ社交界で公式に発表したことはないだろう。初めからオリビアと婚約していたことにすればいい。そうすればお前も余計なことを考えず嫁ぐことができる」
お父様の言葉が建前だということはわかっている。可愛いオリビアが平民出身の騎士団長に嫁ぐことが嫌なのだ。だから僕を身代わりにすることにした。
両親の愛が偏っていることはわかっていた。生まれてから十八年、自分もそれを受け入れて生きてきたから構わない。けれど今回のことはあんまりだ。
「ジルバート様僕は……」
助け舟を出してほしくてジルバート様に声をかけようと口を開いた。
それとほぼ同時に、執務室の扉が開き中へとオリビアが入ってくる。彼の足取りはやけに軽い。
「お父様っ、僕、ジルバート様の婚約者になれるの!?」
「オリビア、盗み聞きしていたのか?悪い子だ」
隣にきたオリビアの額を、お父様が小突く。その一連の流れを見つめながら、まるで自分だけ違う場所に立っているような心地になった。
きっと僕が同じことをしたら、お父様は目くじらを立てて怒るのだろう。長男のくせにはしたないと。
「俺はオリビアとの婚約を受け入れます」
ぼーっとオリビアを見つめていた僕は、ジルバート様が発した一言で意識を覚醒させた。彼の言葉が信じられず耳を疑ってしまう。
「ジルバート様……なんで……」
僕達の関係はそんなにもあっさりと解消できてしまうものだったのだろうか?
いやきっと、先程の彼の言葉がすべてを証明している。
オリビアを見つめるジルバート様の瞳に、隠しきれない熱が含まれていることに気がつく。だから僕はそれ以上なにも言えなくなってしまった。
「すまないアルビー……。君を大切にしなくてはいけないと自制していたけれど、オリビアへの気持ちをもう抑えることができないんだ」
「……っ……」
泣きそうだった。
僕だけがこんなにも辛い。ジルバート様とオリビアは笑顔を浮かべながら、幸せそうに微笑み合っている。お父様も二人の様子を見て満足そうだ。
やっぱり僕だけが蚊帳の外にいる。
愛情が欲しかった。誰でもいいから、僕だけを見てくれる唯一が欲しかった。だからジルバート様と婚約したとき、ようやく僕の欲しかったものが手に入ると思ったんだ。
そんな不純な気持ちを抱えていたから、今こうして彼から見放されているのかもしれない。
「そういうことだ。嫁ぐ準備をしておけ。一ヶ月後にはバトラー家の屋敷に向かってもらう」
「……はい。お父様」
反論をする気はもう起きなかった。ただ、夢であってほしい。
受け入れられない現実が襲いかかり、視界はぼやけている。それでも、涙を見せることは許されない。
僕はオリビアの兄だから。
オリビアが笑えば一緒に笑い。泣けば寄り添ってあげる。そうするように教えられてきた。そうする以外の生き方を選ばせてはもらえなかったんだ。
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