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お出迎え
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一ヶ月後、いよいよ実家を出る日が来てしまった。
バトラー伯爵家からの迎えの馬車に乗り込むと、一度だけ屋敷へと視線を向ける。見送りしてくれているのは、長くからラミレス男爵家に仕えてくれている使用人だけだ。
昨日まで見送ると息巻いていたオリビアは、熱が出てしまい寝込んでいる。そのため、お父様もお母様も、ジルバート様ですらオリビアの元に寄り添っていた。
荷物を持つ手に自然と力が入る。貴族の花人とは思えないほどに、持ち出した物は少ない。家具も服も、すべてオリビアからのお下がりで古いものばかりだった。
自分の物などほとんどなかったから、すべて小さな革鞄の中に収まってしまったのだ。僕の十八年はたった一つの鞄の中に入ってしまうほどに、薄っぺらいものだったのかもしれない。
三日ほど馬車で揺られると、ようやく領地を出ることができた。ここから十日ほど進むと、バトラー伯爵家が管理しているヴォルフ領に入る。
護衛の方の話では、ヴォルフ領の入り口付近に駐屯地が設営されているそうだ。そこまでデューク様が迎えに来てくれるらしい。
王様からの縁談とだけあり、対応がとても丁寧だ。
(……オリビアならわかるけれど)
皆から大切にされている綺麗なオリビアなら、そんなふうに大切にされるのも納得がいく。けれど実際に嫁いでくるのは、平凡な花人の僕だ。きっと僕を見たらデューク様はがっかりしてしまうだろう。
そんな風に想像して落ち込んでしまう。
丈の合わない衣装の裾を見つめながら、小さく溜息をこぼした。嫁ぐ瞬間でも、お父様は僕になにも与えてはくれなかった。お母様には「気をつけていくのよ」と一言声をかけられただけだ。
目を閉じて馬車が地面を踏みしめる音に耳を傾ける。
眠気が少しずつ襲ってきて、少しだけ気が楽になった。眠っていればなにも気にしなくてもいいから。
バトラー伯爵家からの迎えの馬車に乗り込むと、一度だけ屋敷へと視線を向ける。見送りしてくれているのは、長くからラミレス男爵家に仕えてくれている使用人だけだ。
昨日まで見送ると息巻いていたオリビアは、熱が出てしまい寝込んでいる。そのため、お父様もお母様も、ジルバート様ですらオリビアの元に寄り添っていた。
荷物を持つ手に自然と力が入る。貴族の花人とは思えないほどに、持ち出した物は少ない。家具も服も、すべてオリビアからのお下がりで古いものばかりだった。
自分の物などほとんどなかったから、すべて小さな革鞄の中に収まってしまったのだ。僕の十八年はたった一つの鞄の中に入ってしまうほどに、薄っぺらいものだったのかもしれない。
三日ほど馬車で揺られると、ようやく領地を出ることができた。ここから十日ほど進むと、バトラー伯爵家が管理しているヴォルフ領に入る。
護衛の方の話では、ヴォルフ領の入り口付近に駐屯地が設営されているそうだ。そこまでデューク様が迎えに来てくれるらしい。
王様からの縁談とだけあり、対応がとても丁寧だ。
(……オリビアならわかるけれど)
皆から大切にされている綺麗なオリビアなら、そんなふうに大切にされるのも納得がいく。けれど実際に嫁いでくるのは、平凡な花人の僕だ。きっと僕を見たらデューク様はがっかりしてしまうだろう。
そんな風に想像して落ち込んでしまう。
丈の合わない衣装の裾を見つめながら、小さく溜息をこぼした。嫁ぐ瞬間でも、お父様は僕になにも与えてはくれなかった。お母様には「気をつけていくのよ」と一言声をかけられただけだ。
目を閉じて馬車が地面を踏みしめる音に耳を傾ける。
眠気が少しずつ襲ってきて、少しだけ気が楽になった。眠っていればなにも気にしなくてもいいから。
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