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貴方へ向けた誓い
しおりを挟む結婚式当日、緊張しながら式が始まるのを待っていた。銀色の狼の刺繍が施されたタキシードを着て、待機部屋でそわそわと身体を揺らす。
緊張で胸がドキドキとしている。
当日の楽しみに取っておきたくて、まだ会場も見ていない。なにもかもデューク様に任せてしまい、申し訳無さもある。
「そろそろ時間です」
「はいっ」
一度大きく深呼吸をして、席を立つ。
使用人が訓練場へと続く木製の入り口をゆっくりと開けてくれる。大きく息を吐きだして前へと一歩踏み出した。
その瞬間目に飛び込んできたのは、大輪の花々に囲まれた美しい会場。真っ白なバージンロードの周りにはいくつものベンチが用意されている。そこに使用人や騎士の皆さんが、腰掛けていた。
デューク様がゆっくりとこちらへと歩いてきてくれる。銀色のタキシードにも、同じように狼の模様が描かれているのが見えて、嬉しくなった。
「似合ってるな」
「っ、デューク様も素敵です」
僕だけに聞こえるように耳打ちされる。でもきっと、僕の真っ赤に染まった顔のせいで、皆にはバレているんじゃないだろうか。
緊張がドキドキへと変化する。デューク様の隣に立つとますます心音は大きくなった。僕達は正式に夫婦になる。嬉しくて、切ないような気持ちだった。実家に居たころのことを思い出す。まるでこの瞬間が嘘のよう。
中央に並び合って立つ。
誓いの言葉が紡がれ始めると、顔は自然にデューク様のことを見てしまう。本当は真っ直ぐに前を見ないといけないのかもしれない。けれど僕は、神様でも見ている人でもなく、デューク様自身に誓いを立てたかった。
「病めるときも、健やかなるときも、富めるときも、貧しきときも、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい。誓います」
デューク様の方を見てはっきりと答える。
その瞬間、デューク様が僕の方へと同じように顔を向けてくれた。
「あんま見るなって」
どこか気恥ずかしそうなデューク様の様子に、胸がぎゅっと鷲掴みされる。どんなときだって本当に素敵な人だ。
出会った日から、僕はデューク様のことばかり考えている気がする。目が離せない。もっと一緒にいたい。出会ってから期間は短いけれど、デューク様のことを知れば知るほどに好きになっていく。
「ずっと見ていたいんです」
聞こえるかどうかわからないほどの、小さな声で相槌を返した。そうしたら、デューク様の目尻がほんのりと赤く染まったのがわかって、思わず笑みが咲いたんだ。
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