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助ける理由はそれだけで充分だ
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ルーカスから角狼の討伐に向かうという連絡が入ったのは魔術協会にある研究室で新人の魔法薬作りを見てあげているときだった。
送られてきた手紙を眺めながら、数日は気楽だとご機嫌になる。手紙が送られたのは昨日のようだ。騎士団は角狼の巣に着いている頃だろう。
「いよいよか……」
ルーカスなら心配いらないだろう。愛する婚約者であるゼンへ♡と宛名に書かれていたのは見なかったふりをしよう。
「ルーカス様は大丈夫でしょうか?」
一緒に教育を行っていた三級魔術師が話しかけてきた。
「なぜだ?」
「調査中、角狼に変異種が確認されたという報告もあったそうですよ。騎士団仲間に聞いたんです」
「変異種?」
変異種は通常の個体よりも体格が大きく、力も強いという特徴を持つ。角狼は群れで活動するため、その変異種がリーダーとして群れを率いているのかもしれない。
ふとそんな話が小説のストーリーで出てきたことを思い出した。
ルーカスとシャノンの距離が縮まる大切な事件。
(……だとするとルーカスは部下をかばって怪我をするはずだ)
シャノンが治癒魔術を発現するのも怪我して帰ってきたルーカスを見て衝撃を受けたからだ。
結構な大怪我で、すぐに治癒できなかったためにルーカスには後遺症が残る。右手が動かしづらくなり、ゼンはその弱点を狙って何度もルーカスを奇襲していた。
「……要請が来るのを待っていたら間に合わない」
「ゼン様?」
声をかけられたが無視して魔術協会を出た。
──助ける必要なんてない!嫌いなんだろう?
自分に問いかけながらも足は止まらない。見捨てられない理由は、助けたいという気持ちが少しでもあるというだけで十分だ。
べつにルーカスが怪我をしようとゼンにはどうでもいいことのはずだ。それでも足が止まらないのは、フィーロ達に良くしてくれている礼をまだできていないから。
(本当にそれだけだ)
伯爵家に戻ると、備蓄庫から回復ポーションや、塗り薬、ガーゼなどの医療キットを抜き出し鞄にしまう。
そのまま風魔法で角狼の巣にひとっ飛びしようと窓を開けたとき、丁度シャノンが入ってきて動きを止めた。
「ゼン様、窓でなにを?ここは三階ですよ」
「今から騎士団の元に向かう。フィーロにはしばらく練習は休みだと伝えてくれ」
「救護要請ですか?」
「そんなところだ。急ぐから頼んだぞ」
「っ、待ってください!僕も一緒に連れて行ってください!治癒魔術は覚えたてですが、僕も役に立ちたいんです!それでいつか魔術協会に入りたい」
必死に思いを伝えてくれるシャノンは本気のように感じた。
それにちょうどいい気もする。ルーカスが怪我をしてしまっても、怪我してすぐならシャノンがいれば完全に治療することができるはずだ。
ゼンも治癒魔術を使えるものの、シャノンほど強力な魔術は使えない。
「ついてこい」
手を差し出すと、シャノンが駆け寄ってきた。そのまま腕を引き、腰を引き寄せると抱きかかえたまま窓の外へと飛び出した。
送られてきた手紙を眺めながら、数日は気楽だとご機嫌になる。手紙が送られたのは昨日のようだ。騎士団は角狼の巣に着いている頃だろう。
「いよいよか……」
ルーカスなら心配いらないだろう。愛する婚約者であるゼンへ♡と宛名に書かれていたのは見なかったふりをしよう。
「ルーカス様は大丈夫でしょうか?」
一緒に教育を行っていた三級魔術師が話しかけてきた。
「なぜだ?」
「調査中、角狼に変異種が確認されたという報告もあったそうですよ。騎士団仲間に聞いたんです」
「変異種?」
変異種は通常の個体よりも体格が大きく、力も強いという特徴を持つ。角狼は群れで活動するため、その変異種がリーダーとして群れを率いているのかもしれない。
ふとそんな話が小説のストーリーで出てきたことを思い出した。
ルーカスとシャノンの距離が縮まる大切な事件。
(……だとするとルーカスは部下をかばって怪我をするはずだ)
シャノンが治癒魔術を発現するのも怪我して帰ってきたルーカスを見て衝撃を受けたからだ。
結構な大怪我で、すぐに治癒できなかったためにルーカスには後遺症が残る。右手が動かしづらくなり、ゼンはその弱点を狙って何度もルーカスを奇襲していた。
「……要請が来るのを待っていたら間に合わない」
「ゼン様?」
声をかけられたが無視して魔術協会を出た。
──助ける必要なんてない!嫌いなんだろう?
自分に問いかけながらも足は止まらない。見捨てられない理由は、助けたいという気持ちが少しでもあるというだけで十分だ。
べつにルーカスが怪我をしようとゼンにはどうでもいいことのはずだ。それでも足が止まらないのは、フィーロ達に良くしてくれている礼をまだできていないから。
(本当にそれだけだ)
伯爵家に戻ると、備蓄庫から回復ポーションや、塗り薬、ガーゼなどの医療キットを抜き出し鞄にしまう。
そのまま風魔法で角狼の巣にひとっ飛びしようと窓を開けたとき、丁度シャノンが入ってきて動きを止めた。
「ゼン様、窓でなにを?ここは三階ですよ」
「今から騎士団の元に向かう。フィーロにはしばらく練習は休みだと伝えてくれ」
「救護要請ですか?」
「そんなところだ。急ぐから頼んだぞ」
「っ、待ってください!僕も一緒に連れて行ってください!治癒魔術は覚えたてですが、僕も役に立ちたいんです!それでいつか魔術協会に入りたい」
必死に思いを伝えてくれるシャノンは本気のように感じた。
それにちょうどいい気もする。ルーカスが怪我をしてしまっても、怪我してすぐならシャノンがいれば完全に治療することができるはずだ。
ゼンも治癒魔術を使えるものの、シャノンほど強力な魔術は使えない。
「ついてこい」
手を差し出すと、シャノンが駆け寄ってきた。そのまま腕を引き、腰を引き寄せると抱きかかえたまま窓の外へと飛び出した。
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