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酔ってるよね?
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「もしかして弱い?」
「弱くない」
強気に出て持っていたグラスの酒を一気に煽った。
ルーカスが制止する声が聞こえてくるが、意地っ張りのため今更止まれない。
瞳を瞬かせることで緩れる視界をなんとか保とうとするも、結局酒に負けて隣にいるルーカスの肩に額を着けて寄りかかった。
「ゼ、ゼン?」
動揺したような声音が上から降ってくる。けれどそんなことにはかまっていられない。
「ずっと思っていたんだが……」
「うん」
「ルーカスはいい匂いがするな」
やめろやめろやめろー!とまだ微かに残っている理性が叫んでいる。けれど、普段あまり喋らない反動が来ているのか、勢い付いた思考と言葉は止まらない。
「お前に近づかれると動悸がしてくる。わかっているのか?お前は俺をおかしくさせる」
「ゼ、ゼン?相当酔ってるけど大丈夫?」
「酔っていない」
「うん。酔ってるよ。これじゃ会場に戻せないな。休憩できる部屋に行こう。歩けるかい?」
肩を揺すられた気がしたが、ルーカスから離れるのが嫌で彼の首に腕を絡ませた。
こうして密着していると安心する。
「まったく……」
ため息まじりの声音と共に、ルーカスがゼンを抱き上げた。
ルーカスの首に抱きついたまま顔を肩にくっつける。
早鐘を打つ心臓の音と、歩くたびに耳をくすぐる衣擦れの音が合わさり、とても心地よい。
「部屋についたよ」
「どこ?」
「俺の部屋。ここが一番ゆっくりできるから」
部屋の扉を開けると、靴を取られてそのままベッドに寝かせられた。せっかくの高級スーツがシワだらけだ。
「ジャケットだけ脱げる?」
「脱がせてくれ」
「はいはい」
呆れながらもどこか嬉しそうに表情を緩ませたルーカスが、ジャケットを脱がせてくれた。お酒のせいで少し苦しくなっていた首元を、ゼンはネクタイを緩めることで楽にした。それからルーカスの首に腕を回しなおし、そのままマットレスへ倒れる。
「ゼン、この状況はよくないかも」
「俺はこれでいい」
ぷいっとそっぽを向くと頬を突かれた。
ルーカスがゼンの上に覆い被さっている状態になっている。ゼンが腕を離そうとしないためルーカスは上から退くことができない。
「酔うと誰にでもこうなっちゃうの?」
それはわからない。
視界もぐらつくうえに、胃もひっくり返ったみたいに気持ち悪い。でも、ルーカスの匂いに包まれていると少しだけ楽になる気がした。
フェロモンに鎮痛効果なんてあるわけはない。だから楽になるのはただの気のせいだ。
冷静さなんてすでに散り散りになってしまっている。だから今は、こうしたいと思う気持ちに素直になればいい。
「ルーカスだけだ」
『たぶん』という言葉が語尾に付くが、それをあえて言う必要はないだろう。
「好きな子にこんなことされたら、我慢できる男は何人いるのかな?」
「なにを我慢するんだ?」
「わかっていて俺の忍耐を試しているのなら、ゼンはかなり悪い人だね」
顔が近づいてくる。
受け入れたらどうなるのだろう。酒で酔った頭では冷静にその先を見通すことなどできない。
「ルーカス勘違いするな。俺は元から悪人だ」
隠し事ばかりの悪役がゼン・レゲンデアだ。主人公達のための引き立て役で、いつかルーカスに殺される運命を背負っている魔術師。
「ゼン、作られた物語と現実は違うと思わない?」
「……?」
「ううん。なんでもない」
そう言ったルーカスがゼンの唇を優しく食んだ。
「弱くない」
強気に出て持っていたグラスの酒を一気に煽った。
ルーカスが制止する声が聞こえてくるが、意地っ張りのため今更止まれない。
瞳を瞬かせることで緩れる視界をなんとか保とうとするも、結局酒に負けて隣にいるルーカスの肩に額を着けて寄りかかった。
「ゼ、ゼン?」
動揺したような声音が上から降ってくる。けれどそんなことにはかまっていられない。
「ずっと思っていたんだが……」
「うん」
「ルーカスはいい匂いがするな」
やめろやめろやめろー!とまだ微かに残っている理性が叫んでいる。けれど、普段あまり喋らない反動が来ているのか、勢い付いた思考と言葉は止まらない。
「お前に近づかれると動悸がしてくる。わかっているのか?お前は俺をおかしくさせる」
「ゼ、ゼン?相当酔ってるけど大丈夫?」
「酔っていない」
「うん。酔ってるよ。これじゃ会場に戻せないな。休憩できる部屋に行こう。歩けるかい?」
肩を揺すられた気がしたが、ルーカスから離れるのが嫌で彼の首に腕を絡ませた。
こうして密着していると安心する。
「まったく……」
ため息まじりの声音と共に、ルーカスがゼンを抱き上げた。
ルーカスの首に抱きついたまま顔を肩にくっつける。
早鐘を打つ心臓の音と、歩くたびに耳をくすぐる衣擦れの音が合わさり、とても心地よい。
「部屋についたよ」
「どこ?」
「俺の部屋。ここが一番ゆっくりできるから」
部屋の扉を開けると、靴を取られてそのままベッドに寝かせられた。せっかくの高級スーツがシワだらけだ。
「ジャケットだけ脱げる?」
「脱がせてくれ」
「はいはい」
呆れながらもどこか嬉しそうに表情を緩ませたルーカスが、ジャケットを脱がせてくれた。お酒のせいで少し苦しくなっていた首元を、ゼンはネクタイを緩めることで楽にした。それからルーカスの首に腕を回しなおし、そのままマットレスへ倒れる。
「ゼン、この状況はよくないかも」
「俺はこれでいい」
ぷいっとそっぽを向くと頬を突かれた。
ルーカスがゼンの上に覆い被さっている状態になっている。ゼンが腕を離そうとしないためルーカスは上から退くことができない。
「酔うと誰にでもこうなっちゃうの?」
それはわからない。
視界もぐらつくうえに、胃もひっくり返ったみたいに気持ち悪い。でも、ルーカスの匂いに包まれていると少しだけ楽になる気がした。
フェロモンに鎮痛効果なんてあるわけはない。だから楽になるのはただの気のせいだ。
冷静さなんてすでに散り散りになってしまっている。だから今は、こうしたいと思う気持ちに素直になればいい。
「ルーカスだけだ」
『たぶん』という言葉が語尾に付くが、それをあえて言う必要はないだろう。
「好きな子にこんなことされたら、我慢できる男は何人いるのかな?」
「なにを我慢するんだ?」
「わかっていて俺の忍耐を試しているのなら、ゼンはかなり悪い人だね」
顔が近づいてくる。
受け入れたらどうなるのだろう。酒で酔った頭では冷静にその先を見通すことなどできない。
「ルーカス勘違いするな。俺は元から悪人だ」
隠し事ばかりの悪役がゼン・レゲンデアだ。主人公達のための引き立て役で、いつかルーカスに殺される運命を背負っている魔術師。
「ゼン、作られた物語と現実は違うと思わない?」
「……?」
「ううん。なんでもない」
そう言ったルーカスがゼンの唇を優しく食んだ。
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