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新しい出会い
第397話 ココは何処?
しおりを挟む〈グギュルアァァァァァァ~〉
フワフワとした微睡が続いていたんだけど、聞いた覚えのある魔獣の鳴き声が聞こえたかと思って飛び起きた。
「【ウォーターウォール】」
咄嗟に自分とお父さんを護れるように水の盾を張って辺りを見回す。
ん?
水の壁から見えるのは、見慣れたダンジョンの洞窟独特の土壁でもなく、木の壁、木製の窓、そして見覚えがあるというか無いというか、ヴィオになって初めて見た畳にしか見えない床。
んん?
ふと右側を見れば、胡坐をかいて腕組みをしたまま固まっている少年が、愕然とした顔でこちらを見つめている。
んんん?
「だ、誰?」
何時かと同じ感じだけど、隣にいるのは知らない人だし、知らない場所だし、全然安心できる要素がない。しかもミスって知らない人を一緒に囲ってしまったので、焦って水の壁を自分サイズに小さくした。
「し、しらゆき~~~~、起きた! チビが起きたぞ!」
水色髪のどうみても少年が慌てた様子で部屋を飛び出していった。
自分も少年《チビ》のくせに、私を見てチビとは随分失礼な奴だなと思うけど、ここがどこなのかも分からないし、とりあえず誰かが来るのだろうからこのまま待ってみようと思う。
「あれ、そういえば私装備じゃない……」
自分を見下ろせば記憶にある装備は着ておらず、浴衣のようなものを着ていた。これに着替えさせられ、記憶もない状態でここにいたという事は、直ぐに危害を加えられる状況ではないという事だろう。
キョロキョロと見回せば、私のマジックバッグの上に着ていた装備が綺麗に畳まれた状態で枕元に置いてあった。
「とりあえず着替えておこうかな」
ここがどんな場所であれ、直ぐ身動きが出来るに越したことはないだろう。そう思って浴衣っぽい服(というか完全に浴衣だった)を脱いで装備を着ていく。最後にタイツを履こうと座って足を通していれば、スパーンと小気味よい音を響かせて襖が開いた。
「んなっ!?」
「おや」
「す、すまない」
開いたと思った襖は直ぐに閉じられたけど、驚愕に目を見開く少年と、女性と、青年だったと思う。あまりに一瞬であれだけど、何だったんだ?
「もう開けても大丈夫かの?」
タイツを履き終えた頃に女性の声が聞こえたので、どうぞと声をかければ今度は静かに襖が開いた。
そう、扉じゃないの、襖です。
白髪の美人さんは着物を着ていて、少年は甚平っぽいのを、青年は袴のような服を着ている。畳だし、襖だし、これだけ見れば日本に異世界転生したのかと思うけど、私の装備がある事と、彼らの髪がカラフルなのと、女性の頭に白い熊耳がある事から、かろうじて日本ではない事が分かる。
「あのっ、わざとじゃないからな! まさか起きて直ぐ着替える元気があると思ってなかったからなんだぞ!」
「ベル坊、そうでなくとも人の部屋を訪ねる時に、知らせもなしに開けるなど駄目じゃと何度も言われておったじゃろう? 女子の着替えを覗き見るなど母君にお仕置きをされるじゃろうな」
「なっ、わざとじゃないのだから母上には――」
「ゴホン、病み上がりに騒がしくして申し訳ない。
ところでその水の障壁は解いてもらっても? 我々は貴女に危害を加えるつもりはない。ほら、この通り武器などは身に着けていない」
突然始まった漫才のようなやり取りを眺めていたら、水色髪の青年がそう言って自分の両腕を伸ばして武器は持っていないと見せてくれる。
魔法が使える世界で武器携帯の有無など無抵抗かどうかの理由にはならないと思うけど、まあこの少年の雰囲気を見ていれば大丈夫なのだろうと壁を解除した。
「ほう、やはり其方は素晴らしく魔法を上手く使うのじゃな、チャーキ以外でそのような使い方をする者は初めて見たぞ」
「さっきは起き抜けに無詠唱であの壁を作ったんだぞ! 大きさを変えるのは完全無詠唱だった事を思えばチャーキ様より凄いかもしれないぞ」
「白雪様、ベルフォンス、お客人の前です、まずは礼を言うところからでしょうが」
「そうであったな、あいすまなかった」
「うっ、ルイスゲーンの言うとおりだ。すまなかった」
どういう力関係なんだろうね。
青年が様付けをするなら白髪の美女はそれなりの人なんだろうけど、少年とは髪色が似てるから親子かな? いや、父親を呼び捨てにはしないか? 白髪の女性が母親かと思ったけど違うっポイし意味が分からん。
「まずは貴女に心よりの感謝をさせて欲しい。私は――〈グギュルアァァァァァァ~〉――っと、まずは腹ごしらえをしてからにしましょう。歩くことは出来そうですか?」
「……ダイジョウブデス」
もう、もう、もうっ! 私のお腹! 毎回毎回なんなのさ! もうちょっと空気読んでよ! っていうか今のが私の腹の虫? 魔獣の鳴き声じゃん!
お腹はそりゃ空いてるけどさ、だけど、なんかこれから重要な話し合いっぽい時にあの音はないでしょ!
赤くなっているはずの顔を隠したいけど、移動するっぽいから気にしない事にしよう。少年が先頭を歩くように「こっちだ」と歩く後ろをついて行こうとしたら、ふらついて倒れてしまった。思ってた以上に空腹が酷いのか、何か力が入らないね。
「あれだけ魔力を消費して4日も昏睡状態じゃったんじゃ、歩くのは辛かろう」
「そうですね、お嬢様少し失礼しますよ」
水色髪の青年に横抱きにされたまま居室を後にする。廊下を見ても日本家屋に近い雰囲気がするね。ココはいったい何処なんだろうか。
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