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ミドウ村
第405話 回復
しおりを挟む白雪さんのモフに包まれて泣いた日から一週間。
この一週間は起きて水分を取ってはお父さんと母さんのことを思い出して泣き、スチーラーズやこれまでに絡んできた破落戸が夢に出ては魘され、その度にモフ熊になった白雪さんに抱きしめられて眠るというか気を失う。という事を繰り返していた。
無理に食べさせることはせずに、多分回復薬っぽいのを飲まされていた気もするけど、気持ちのアップダウンが激しすぎてよく覚えていない。だけど不思議なもので、一週間もそうして過ごせば、だんだん気持ちが落ち着いてきた。
たった一週間でお父さんが亡くなった事を受け入れるなんて薄情な奴だと思われるかもしれないけれど、ずっと出て来てくれなかったお父さんが昨日夢に出てきてくれたから、やっと受け入れることが出来たんだ。
あれが夢だったのか、それとも本当だったのかは分からない。どちらかというと夢であってほしい内容ではあったけど、お父さんが笑ってくれたんだ。
『ヴィオ、ああ随分憔悴してしもうて……、儂がヘマしてしもうたからなぁ。
ヴィオと金ランクになる夢を叶えてやれんかった事だけは残念じゃが、ヴィオを助けることが出来た事に後悔はない。じゃから、元気で幸せになってくれ。
ヴィオの母ちゃんもそれを願っておるしな、もし早々にヴィオがこっちに来てしもうたら――(ぎゃあぁぁぁ~! あれは不可抗力、不可抗力なんですよぉ~!)(っざけんな! そもそもの話をしてんだろうが!)――あ~、神々が困るそうじゃ。
ああ、それからな≪お母さんに教えてもらった≫は程々にしておいてほしいそうじゃぞ。その島から戻る時には≪勇者の伝説らしいよ≫と言えばええらしいからな。
なに? ああ、それもか。
それからな、ヴィオの宝箱じゃがフィ――――』
そこで目が覚めた。
宝箱についても気になるけれど、あれが夢でなかったのであれば、お父さんは母さんと死後の世界で会っているって感じだよね?
そして私が都合よく使っていた『お母さんに教えてもらった』を本人《母さん》に知られてしまっていた可能性が高いって事だよね?
母さんが登場しなかった理由も知りたいけれど、なんだかお父さんの後ろで聞き覚えのある怒声が聞こえていたから母さんも元気(?)でやっている感じなのかな?
それ壊さないでって、母さんってばどこで何をしているんだろうね……。
それにしても、今私があの大陸ではない場所にいる事をお父さんが知っているという事は、母さんとお父さんが見てくれているって事だろう。それがいつまでかは分からないけど、母さんが死んでからもう二年は経っている事を思えば、そんなに直ぐに居なくなるわけじゃないんだと思う。
だとしたらいつまでも泣いて過ごしてたら駄目だよね。
「おぉ、今朝は随分しっかりした顔つきになったな。どうじゃ? 食事は出来そうか?」
「うん、白雪さんずっとそばにいてくれてありがとうございました。モフモフのお陰でとても癒されたし、今日はお父さんにも会えたんです。もう大丈夫!」
「ほほっ、そうか、それなら良かったぞ。チャーキも心配しておったしな、其方の体力が戻れば稽古をつけてやろうと言うておった。其方は冒険者じゃと言うておったが、チャーキの訓練は厳しいからなぁ。無理はせんようにな」
この一週間、私が起きている時間はずっと白熊姿で側にいてくれた白雪さん。聖獣だというのにそんなお相手に抱き着いて泣いて、慰めてもらうなんて贅沢というか申し訳ないですよ。だけどモフセラピーのお陰もあってすっかり元気回復しました。
白雪さんに少し待っていろと言われて待っていると、静かに襖が開いたと思えば――にゃんと! 三毛猫にゃんが!!!
「お加減いかがですか? お着替えのお手伝いをしに参りましたが……どうしました?」
猫獣人は沢山見てきたけど、皆耳と尻尾くらいで猫成分は少なめだった。いやそれでも幸せ尻尾パンチは最高でしたけどね。
だけど目の前に立っているにゃん様は、二本足で立っているにゃん様なんですよ! しかも三毛猫。髪の毛とかがある訳じゃない本当に純粋に猫にゃん。いや、立ち姿で150センチくらいある猫が純粋な猫と言っていいのかは分からんが、手も猫、足も猫、顔も猫なの(嬉しさのあまり壊れかけている)
よくある猫獣人の語尾は「にゃん」説は否定されたけど、濃いグレーの和風な給仕服に白いメイドエプロン、そしてメイドカチューシャをつけた三毛猫にゃんは、私のハートをクリティカルヒットですよ!
「お客様……?」
「はっ! あまりの幸せ空間に意識が飛んでいました。大丈夫です、お着替えですね、やっておきます」
心配そうに覗き込んできた三毛猫にゃんが、プニっとした肉球ハンドでおでこを触ってくれたら、もうもうもうもう、はぁん、幸せはここにありました。
だがにゃん様を心配させるのは良くないね、しっかりしなさいヴィオ! って事で布団から立ち上がったところでカクンと膝から力が抜けてしまった。
そういえば一週間まともに食べていなかったんだもんね。前回の数日間気を失っていた時から合わせればなかなかの日数だ。そりゃ力も入らんだろう。
思ったよりも力があったにゃん様にそっと受け止められたので倒れることはなかったけど、装備ではなく甚平のような服を着せてもらった。ズボンは裾が少し絞られているので、甚平というよりモンペっぽいのかな? 流石チアキさんとは思うけど、令和を生きていた人のはずなのに、やっぱり日本人は着れないと思ったら和服が恋しくなるのかもしれないね。
「ルイス様お願いします」
お着替えが終わったところでにゃん様が呼べば、部屋の前にいたのか水色髪の青年ルイスさんが入ってきた。前と同じようにひょいとお姫様抱っこで運ばれる。
「ミケありがとうね」
「あっ、ミケさんありがとうございました」
「いいえ、また何か御用がありましたらお呼びくださいませ」
以前と同じ居間に案内されたところでチアキさんがにゃん様に声をかける。まさか三毛猫のミケさんですか? にゃんと素敵なお名前でしょう! お礼を言えばニッコリ微笑んでペコリと頭を下げて部屋を出てしまった。あぁ、にゃん様が……。
「くっくっく、ミケは可愛いだろう?」
「はい、とっても素敵でした……」
「人化できない獣人は迫害されていたのですが、チャーキ様もヴィオ様も獣化の方がお好きとは変わっていらっしゃいますね」
「ヴィオなどこの数日、我の腹毛を掴んで離さんかったくらいじゃぞ? 完全獣化した姿はこの村の大人とて少し怖がるのに、転生の記憶がある人というのは変わっておるの」
チアキさんの言葉に同意しかない。ミケさんが行ってしまった後をぼんやり眺めていたらルイスさんと白雪さんがこの世界の常識とはズレているという事を話している。それにしても、白雪さんの腹毛を掴んで離さなかったとか、それは非常に申し訳ございませんでした!
「そうか、白雪の毛皮は極上だからな、最高だっただろう?」
「はい、とっても幸せでした。白雪さん、まさかずっと掴んで離さなかったとか、ごめんなさい。ありがとうございました」
既に美女に戻っている白雪さんだけど、チアキさんに褒められてまんざらでもない様子、良いのじゃと言いながらもニマニマしているのが可愛らしい人だね。
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