ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ヒスの森ダンジョン

第421話 ヒスの森 その3

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 昼食休憩はミケさんが持たせてくれたおにぎり弁当でした。
 大きな葉っぱに包まれたのは、おにぎり一個、卵焼き一切れ、焼き魚一切れ、お漬物一切れ、大人たちは全部が二つずつと少ない気もするけど、遠征中はこんなものだというから、ダンジョン生活の冒険者と同じだと思った次第。

「特に予定は決めていないが、採集もしながらだからな、無理はせずに下りていこう。ベル坊は魔獣との戦いに慣れていないからな、積極的に討伐をして慣れたらいい。ヴィオは……そうだな、大人たちは殆ど近接戦だから魔法攻撃の方が良いかもしれんな」
「「「はいっ!」」」
「お、俺っ、頑張るっ!」
「は~い、がんばります」

 食後の休憩を挟んだら、またダンジョン探索の再会です。
 1階は高原しかなかったんだけど2階は森というか、林が点在している感じだね。そして見覚えのあるオーク、ゴブリン、コボルト、ウルフなどの魔獣がいるけど、前半からこの種類という事は上級で間違いないと思う。

「森と高原で生えてる物は違うのか?」
「森は果物がありますし、醤油とかはウツボカズラみたいな感じで木に生ってますよ」

 全員で行動するよりは高原と森で分かれるつもりだったらしいんだけど、目的物があるかもしれないという事で、しばらくは全員で行動することになりました。
『ウツボカズラ』で通じたようだけど、それがどう生っているのか想像がつかなかったみたい。

 ザクっ! ドカっ! ベシンっ!

「この辺の奴らは食えないからな、魔石も屑魔石だから拾わないでいいか」
「あ、蜘蛛の糸は持って帰りたいので、私がやってもいいですか?」

 武器を持っていない大人たち、どんな風に戦うのかと思っていたら無手でした。大人の竜人族というか、こちらの大陸の獣人もだけど、部分獣化が出来るんだって。
 今も片手だけ鱗がある竜の手になってて、それでザックザックと殺っていらっしゃいます。オークですら心臓部分を一突きですよ。ベル君は言語化が未だだったように、部分獣化は翼だけだそうです。ヒトの身体に翼を出すことは出来るみたいだけど、その状態ではうまく飛べないようなので、飛ぶなら完全に竜化する必要があるんだって。ヒトの身体で空を飛べるのは翼人族の人だけの特権みたいだね。

 なので、チアキさんとベル君は剣を使って討伐しており、白雪さんは魔法特化でした。
 白雪さんは肉弾戦もできるけど、汚れるのが嫌だから出来るだけ魔法で倒したいとの事。(武器を使えば良いのではというのは言わないお約束らしい)肉弾戦の時は白熊になった方が楽だというので、その戦い方も非常に興味深いよね。

「あ、チアキさん、あれが醤油の木ですよ」
「お、どれどれ――、ってこれがか?」

 高原の素材は1階と同じだったので、林の方へ移動している現在。肉以外は素材を拾わない人たちなので、蜘蛛の糸や蛇の皮は私が討伐して拾っています。
 こんな低層階で見つかるとは思っていなかったけど、見覚えのある黒いウツボカズラがぶら下がっている木を見つけた。チアキさんは非常に驚いているけれど、見覚えのある植物だとそう思いますよね?

「空き瓶はあるので、一つだけ開けて確認してみますか?」

 そう言って一つだけ採集して、蓋になっている部分をペロンと開ける。クンクンと匂いを確認したチアキさんが満面の笑みを浮かべた事で、他の皆も安心したように採集をしてくれた。

「他はどんなのがあるんだ?」
「このウツボカズラシリーズだと、黒が醤油、白がお酢、茶が味噌、赤がオイスターソース、黄色がナンプラー、オレンジが豆板醤、甜面醤、コチュジャンのランダムでしたね。もしかしたら他にもあるかもしれないんですが、今の所見つけたのはこれくらいです」
「オレンジの三種類はどういう分類なんだろうな。そうか、そんなに種類があるなら探しがいがあるな」

 私もオレンジ三種に関しては思うところがありますが、他にどんな調味料が出てくるのか楽しみなんですよ。

「チャーキ、これは全部採集しつくしていいんじゃな?」
「ああ、ダンジョンは魔獣も素材も時間でリポップするからな、他に潜る奴らも居なそうだし全部持っていこう」

 ここが何時間でリポップするのか分からないけど、48時間より遅いという事はないみたいだし、他の人が潜ったとしてもこれだけ広いダンジョンだからね、素材が全くないという事にはならないでしょう。

「チャーキ様、本日はこの辺りで野営地を作りませんか?」
「ん? 安全地帯があともう少し行った場所にありますけど、そこまで行かないんですか?」
「お? ヴィオは安全地帯の場所が分かるのか?」

 ダルスさんから少し開けた高原地帯で野営の提案があったけど、普通にその場所でテントを出そうとしているから思わず止めてしまった。白雪さんの聖結界があれば安全かもだけど、絶対的な安全地帯があるならそっちの方が良くない?
 チアキさんに索敵魔法について説明すれば直ぐに理解してくれたんだけど、竜人族の皆さんは細かい魔力調整が非常に苦手という事で、早々に諦めていらっしゃいました。

「まあ、私達ってどうしてもの場合は空を飛んで調べれば良いと思っちゃうところがあるしね」
「そうだな、安全地帯は空から見ればわかりやすい。どうしても疲れている時なんかは飛んでいけばいいと思っている節はある」

 成程、それは便利というか、反則というか、そんな技があれば面倒なことはやらないよね。チアキさんと白雪さんは挑戦してみたいという事だったので、安全地帯まで移動して夕食後にゆっくり練習すればいいと思います。
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