ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ヒスの森ダンジョン

第424話 ヒスの森 その6

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 戦いに関して危険を感じる事なんて無く(当り前だろう)、5階で米が見つかった事で丼が解禁となりました。ここでも米だけは纏まって生えていたので、途中からバレンさんとダルスさんが空を飛んでポアレス群生地を見つけては採集。他のメンバーはそれ以外と魔獣を採集&討伐するようになりました。

「良いなこれ、丼というのはどれだけ種類があるんだ?」
「ダルス、無限だ、どんな組み合わせも包み込む、それが米の素晴らしいところだ。白飯で食ってもいいし、丼にしてもいい、味を付けて炒めても、焼いても、握っても、どんな調理にも対応できるのが米の良いところなんだよ」

 チアキさんの米愛が止まりません。そしてこの国ではポアレスという正式名称ではなく、米と言う名で定着しそうです。
 5階で米が見つかった直後、一度ルイスさんが離脱しました。
 何故なら五合炊きでは間に合わないと皆が言ったから。二十合炊きの為に釜は作ってもらっているんだけど、錬金しないと炊飯器にはならない。帰ってからだねと言っていたんだけど、待ちきれなかったらしい。
 離脱というか、お使いの為にルイスさんはドラ化してダンジョンを一人で戻り、村に戻って釜と錬成陣を持って帰ってきました。往復をドラゴンで飛んで行っただけあって、お昼前にお使いに行ったルイスさんは夕食時間には戻ってきたんだから、その飛翔能力に驚くことしかできないよね。

「この美味しい食事にありつけないと思ったら、いつもよりも早く飛べた気がしますよ」

 ドラゴンの胃袋も掴めたようですね。この島の全ドラゴンの皆様、是非お米料理と和食を覚えてください。すぐに結婚相手が見つかると思いますよ。
 錬成陣を持ってきてくれたことで直ぐに二十合炊きの炊飯器が完成し、炊いたお米はダルスさん達が作ってくれた米櫃に移され、時間停止のマジックバッグへ収納。48時間リポップだったらしいこのダンジョン、私、ベル君、チアキさん、白雪さんの四人で地上を歩きながら魔獣を討伐しつつ野菜類を採集。
 バレンさんとダルスさんの二人は48時間が経過した低層階をもう一度回って米だけを採集、タニアさんとルイスさんは10階層までを先に進みながら米だけを採集して戻ってくるというとんでも採集をしております。

「他のは放置しているが、フライングラビットとココッコ、ホルルタンは見つけ次第狩ってるからな、肉の在庫も大分増えて来たぞ」

 良い笑顔なんですけど、言ってる内容が脳筋過ぎるというか食欲に忠実というか、まあ美味しいは正義ですからしょうがないよね。
 ここで採集したものはミドウ村に持って帰るのもあるけど、他の集落にも教えてあげるつもりだというから、多めに採集しているんだろう。
 あ、ちなみにホルルタンというのは牛の魔獣です。カウカウと違って見慣れた白黒の牛で、これまたそんなに攻撃的ではない魔獣。カウカウと同じように環境を整えれば飼育も可能という事なので、地上にも生息している魔獣だ。ただ、この牛の落すのがミルクではなかったんだよね。

 カウカウはお肉の他に牛乳を落とす。牛乳はプヨプヨとした乳袋《ちちぶくろ》に入っているんだけど、この乳袋は乳白色というか、クリーム色っぽい色だった。
 ホルルタンも同じようにプヨプヨした乳袋を落としたんだけど、その色が違っていて、黄色っぽいのと真っ白の袋だった。
 黄色っぽいのはハズレだと言われて捨てられそうになったけど、この世界のハズレはハズレではない事が多いので回収して調べたら、ヨーグルトだった。どうやら酸っぱくて腐った牛乳だと思われていたらしい。もう一つの白い袋は生クリームだった。

「おぉ! まさかの生クリーム! チアキさん、ケーキが作れちゃいますよ!」
「まじか、濃い牛乳だと思ってたぞ」

 料理をしない男だったらしいチアキさん、キャベツとレタスの違いもイマイチだったと聞いて納得した。ルイスさん達もカウカウの牛乳との違いをあまり考えたことはなかったらしく、甘いものが出来ると聞いて驚いていました。
 美味しい料理を作りたいと色々やるのはヒト族が一番多く、次いで獣人族だという。ドワーフは辛い物が好きな人が多く、酒が好きだというのはイメージ通り。竜人族は魔素量が多ければ満足というか、肉や魚を焼くだけでも十分な人が多い。ただ、大陸でグルメ舌になってしまった人たちは戻ってこないというので、人によるのかもしれないね。
 チアキさんは食よりもモフが勝ったからこっちに残ったのかな。いや、他の集落に比べれば調理技術はかなり優れているというから、多少は改善されていたのかもしれないね。
 南側の獣人たちが多く住む町ではそれなりに美味しい物も多いようで、魔人族の多くは南に住んでいるというから、竜人族が特別なのかもしれないけどね。


 ちなみにこのダンジョンに出てくるウルフは、見慣れた灰色でも、夜に出てくる黒いのでもなく、緑色だった。フォレストウルフという種類だそうで、毛の色が草原の緑に混ざっているし、ある程度敵に近付くまでは匍匐前進というか草に紛れるように近づいてくるので危険なのだ。
 私は【索敵】があるので見つけた時点で首チョンパしちゃってたんだけど、それだとベル君の訓練にならないからと討伐は森担当になりました。

「身体が丈夫だとはいえ、ダンジョンでは常に身を護れるように障壁を作っておけと言っただろう?」
「べ、別にこれくらい痛くないし!」
「ああ動くな、ヴィオに教えてもらったこっちの回復魔法はまだ慣れておらんのじゃ」

 野営地で夕食準備中、チアキさんから叱られるベル君と、そのベル君に回復魔法を使っている白雪さん。全く気にせず夕食のお手伝いをしてくれているタニアさんとバレンさん、お風呂の準備を整えているのはダルスさん、ルイスさんは今日最後の米回収の為にまだ戻ってきていません。
 ベル君はフォレストウルフの接近に気付けず、奴の風魔法で小さなかすり傷を沢山喰らったようです。私の結界魔法を見て、子供の身を守るには非常に使い勝手が良いからとベル君にも練習をさせている現在。ただ細かい魔力操作が苦手なベル君(大人たちも)なので、障壁を維持させ続けるというのは非常に難しいんだって。

 それでも五匹ものフォレストウルフからの攻撃にかすり傷だけで済むって、本当に竜人族というヒト達の頑丈さには驚くしかない。
 白雪さんはこのダンジョンに来てから魔法しか使っていないんだけど、無詠唱の訓練中なんだよね。白雪さん的にもあの厨二呪文は嫌だったらしい。チアキさんの事は好きだけど、それとこれとは別問題って事ですね。

 良いんですよ、厨二な呪文も。私が使うことはないけれど、何かそれっぽいのを考えるのは楽しいしね。
 ああ、そういえば簡易居住地を作る時には呪文を唱えないチアキさん。理由を聞いたら土魔法と木魔法の混合だし、部屋の間取りとか壁とかを考えて魔力操作をしている時に呪文を唱えたら気が散るからという事でした。うん、そういう理由って事ですよね。
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