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ヒスの森ダンジョン
第423話 ヒスの森 その5
夕食後、見張り番は特に立てないと聞いて驚いた。
安全地帯だからというのもあるけど、チアキさんの作った建物全部を結界魔道具で覆うから問題がないんだと。屋根を幕にしているのは面倒だからというだけではなく、非常事態(スタンピード)の時に屋根から飛び出す為なのだそうです。
チアキさんだからか、竜人族という種族だからなのか、中々無茶苦茶だなぁと思いつつ、私はいつになれば一般的な常識レベルの冒険者と知り合えるのだろうかと少し心配になる。
「はっはっは、そうは言ってもな、俺もダンジョンで風呂に入ろうと考えたことはないぞ? テントに関しては設置が面倒だったからだし、魔力は余ってたからだからな」
「そうじゃな、料理もそうじゃが、まさかダンジョンでこんなに心地よい風呂に入れるとは思っておらんかった。これは家でも使えそうじゃな」
常識外れな人たちに非常識扱いされていますけど、どっこいどっこいだと思いますよ?
ハンモック風呂は私の鞄に入っていたので、夕食後にセッティングしていたら突っ込まれ、皆も興味津々で入りたいと仰ったので、交代しながら入りました。すっかり夜になった森の中、ランタンの光だけでハンモック風呂に浸かるのは非常に気持ちが良かったです。
「だけどチアキさんはお風呂に入れない環境が続いた時に嫌だって思わなかったですか?」
こっちの人達が平気なのは理解しているけど、チアキさんはお風呂大好き、清潔第一の元日本人だもの。きっとどうにかしてお風呂に入りたいって色々挑戦していた筈!
「あ~~~~、俺は、まぁ、あれだ」
目が泳ぐチアキさん、どうやら社畜だった当時、会社に寝泊まりすることも然程珍しくはなく、デスクの下に寝袋を置いて仮眠、数日風呂に入れないのも当り前の生活を送っていたらしい。
「だから【クリーン】だけで十分だったんだよな。いや、風呂が入れるなら風呂が好きだぞ? ただ、困らなかったというか、そこまで重要視していなかったというか、な?」
分かるだろう? と同意を求められても分かりません。だって、私はそれが嫌で木桶で風呂を作ってもらったくらいだもの。だけど、そういう生活を余儀なくされている人がいたことは知識として知っているし、こちらの世界ではその方がスタンダードだという事も知っているので理解は出来ます。
女性陣は勿論の事、男性達にも楽しんでもらえたので、明日からも毎晩お風呂に入れることが決定しました。
しっかり夕食を頂き、ゆっくりとお風呂に浸かり、個室のベッドで眠った翌朝、元気満タンなのは当り前だよね。
簡単な朝食を頂いて、二日目の散策開始です!
「おっ! ヴィオ、ココッコの卵があれば親子丼が作れるか?」
「お米の残量がちょっと心配ですけど、一食分なら余裕ですね」
五合炊きの炊飯器は電源不要なので勿論持ってきている。ただ、ダンジョンには大人が六人もいるからね、昨日の食事量を思えば二回炊いても足りない気がする。
今回潜っている理由が米を目的にしているだけあって、私の鞄に入っているお米はあと二袋を切った。一袋10キロだから、まだそれなりに残っているけど、このダンジョンに米が無かったら悲しいことになる。
「そうか、丼は止められなくなるだろうからな、米が見つかってからにしよう。だけどあれば作れるなら狩っておく方が良いな。行ってくるぞ!」
そう言うが早いかチアキさんはココッコの群れに駆け寄って行ってしまった。
「オヤコドンとはどんなものなんじゃ? チャーキがあれだけ喜ぶという事は旨いモノなんじゃろうが想像がつかんな」
自宅では煮物とか、お浸しとかも好んで食べていたから、丼料理は作ってなかったんだよね。
「丼というのはご飯の上におかずを乗せて食べる料理ですね。親子丼というのはココッコのお肉と卵を煮込んだものをご飯の上にかけているんです」
「成程、肉の親と卵の子、それを一緒に食べるから親子の丼という事なのですね? 素晴らしい名付けですね」
「だったらカウカウの肉をミルクで煮込んだスープをかけても親子丼になるのか?」
ルイスさんが感激してくれるけど、そのネーミングを考えたのは私ではないので、そんなに褒められると居た堪れない気持ちになります。
そしてベル君が言うのはビーフホワイトシチューですね? お乳は『子供に与えるもの』であって『子供になるもの』ではないので、親子丼にはならないと思いますよ。
シチューにはパン派とご飯派があったけど、私はどっちでも好きです。カレーだって、ライスでもナンでも両方美味しく楽しめていたと思います。どちらかしか認めない! 邪道だ! というヒトが居たことも知っていますが、自宅でやれとしか思えなかったよね。
タケノコが好きか、キノコが好きかという論争はネタ化していたと思いますけど、私はすぎのこが好きでした。いや、語呂合わせで考えたら「きのこ、たけのこ、つくしのこ」じゃない? なんで杉の子だったんだろう。
そんなどうしようもない事を考えていたら、チアキさんが両手いっぱいに肉を抱えて戻ってきた。
「卵は落とさなかったんですか?」
「いや、いっぱいあったぞ。卵は割れると嫌だからな、直ぐに鞄に入れてきた」
なら何故肉は? と思ったけど、ルンルンしているチアキさんに聞くのは野暮だろう。白髪交じりでイケオジなんだけど、少年っぽさが見え隠れするチアキさん、そんなチアキさんを見て嬉しそうに頬を染めている白雪さん。うんうん、ハートフル。ここダンジョンだけどね。
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