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ヒスの森ダンジョン
第433話 ヒスの森 その15
しおりを挟むダンジョンに潜って一月半弱、仲良し竜人族の集落へ配るために集められた大量の素材も量は十分、美味しいお肉も楽しんだけど、そろそろ魚も食べたいよねという意見が出たところで、20階のボス部屋に到着しました。
生クリーム、マヨネーズ、ウスターソースが見つかり、新しい果物の木としてオランジ、アングールとアンゴルも見つかった。
アングールとアンゴルは葡萄だったんだけど、アングールは緑色の房でまさにマスカットって感じだった。アンゴルは赤い葡萄で、中身も真っ赤。葡萄の種類は多すぎてあまり覚えていないけど、巨峰とかのもっと甘い感じだった。
ただ、真っ赤な粒がミッシリと房を作っている様は現地人にとって恐怖でしかなかったらしく『血の実』と呼ばれて避けられていたんだって。超絶勿体ないよね。
確かに私達だって紫は見慣れていたものの、真っ赤は初めて見たんだけどさ、苺もトマトも赤くて甘いのを知ってるからね。軽く【クリーン】だけして二人で試食をしたときは、皆から悲鳴が上がったのもいい思い出。
ウスターソースはウツボカズラの青色で、真っ青な袋がぶら下がっているのはちょっとホラーだったよ。
中身がウスターソースと分かった時には、チアキさんから焼きそばが食べたいとリクエストがあったので、大きな鉄板テーブルを作ってもらい、目の前で作ったら泣いて喜んでくれたんだよね。
中華そばはルイスさんが作ってくれたんだけど、どうやらこの大陸では小麦しかないと嘆いたチアキさんのお陰で、小麦で色々作る文化が広がっていたみたい。うどんもパスタもあったからね。
「ダンジョンが終わればタニアたちはしばらく集落巡りだろう?」
「ええ、かなり沢山の素材も集まりましたから、これらを渡すのと同時にレシピも教えてくる予定ですから、それなりに時間がかかりそうですわ」
「チャーキ様達はどうなさるのですか?」
ボス戦前の朝食中、私達をミドウ村に送った後はそのまま旅立つ予定の大人三人、ルイスさんはベル君の監視役というかお目付け役なので一緒だけど、少しだけ寂しくなるね。
バレンさんに今後の予定を聞かれて、チアキさんがうーんと悩んでいる。
「ヴィオは何かしたい事があるか?」
「私ですか? う~ん、魔道具作りを始めたところですし、まずは一つでも自作のマジックバッグを完成させたいです。あとは、魔法の練習は出来たけど、体術はダンジョンに入ってから殆ど出来ていないでしょう? あれをもっとちゃんと身につけたいです」
「訓練かよ! 毎日こんなに実践してたのに、ヴィオすげえな」
「その勤勉さがあるからこそ、ヒト族であるのにこの成長率なのでしょうね」
目標にしていた『大陸中のダンジョンを巡ってドラゴンに会いに行く』というのは、スキップして先にドラゴンに会ってしまった訳だけど、ダンジョン巡りはまだまだこれからだもの。
寿命が80年のヒト族であれば、実際に冒険者として現役バリバリで動けるのは40歳くらいまでだろう。となればあと三十年ちょっとしかないのだ。
30階層もあるダンジョンだと一月はかかってしまう。特殊ダンジョンなんて未知だしね。
そう思えば一年に入れるダンジョンは五つか六つが良いところだと思う。そうなれば急がないとダンジョン制覇が出来ないんだよ!
「そうだな、俺も久しぶりのダンジョンだったが、ヴィオのお陰で美味い飯に、快適な風呂、思った以上に動けたからな。この島のダンジョンは俺も潜った事が無いのが多い。一緒に行けるように他の仲間にも声をかけてみよう」
「なんと! その時には私も戻ってきますから、必ずお声をかけてくださいませ!」
おぉ、チアキさんが同行してくれるなら快適ダンジョン旅が約束されたようなものだね。
タニアさん達もまた一緒に旅をしたいと言ってくれているので、移動も困らなくなるね。ベル君は何か言いたいけど言えない、という感じでもじもじしているけど、ダンジョンはもう嫌になったのかな?
「ベル君はダンジョンつまらなかった?」
「ちがっ! 違う。逆だ。凄く楽しかった。だけど俺はヴィオみたいに料理も作れないし、戦いだって全然まだ駄目だから、足手まといにっ――、グスっ、また行きたいけどっ――」
美少年が堪え切れずに涙を流しながら一緒に行きたいと訴える……、可愛いなコンチクショウ。
同行者が変態…ゴホン、変人…ゲホンゲホン、常識外れしかいないから自信を無くしているのかもしれないけれど、今まで海の魔魚以外とやり合ったことのないダンジョン初心者が、上級ダンジョンで最終階まで遅れることなくついて来れるという事だけでも凄いと思いますよ?
足手纏いだったと心配しているけれど、それはベル君が討伐する前に肉を見つけて尻尾バシンをしてしまった大人たちが悪いと思います。
オークナイトは美味しいけど、あれは金ランクに近い冒険者じゃないと逃げる一択だって教えてもらったしね、あれに一対一で対峙出来るベル君は凄いと思います。
「そうだな、ヴィオが育った環境が多少心配にはなるが、ベル坊は優秀だと思うぞ。
自分より小さいヴィオがこうだから自信を無くしているんだろうが、これは慣れが必要なだけだな。料理を学びたければミケに教えてもらってもいいし、家でも料理人がいるだろう? ヴィオの知らなそうなレシピを勉強してこればいい。
ベル坊が希望するなら、次も一緒に来ればいい。ダンジョンは入ったからと言って、必ず踏破しなければならんわけでもないしな。無理なら戻ればいい」
チアキさんの言葉にベル君の顔に赤みが差し、やっと微笑んでくれました。キラキラと潤ったお目目に赤いホッペ、時々美少女にも見えるくらいまだ中性的な顔立ちのベル君なので、なんだか私の心のお腐れ様がムクムクと起き上がりそうですよ。
「さて、では最後のボスじゃな」
「なにが出るだろうな。ここまで出てきた相手と全く関係ない奴って事はないだろうから、肉系だと良いな。蜂の大軍とかだと萎えるな~」
「肉だとすれば、オークナイト以上という事でしょうか。ジェネラルの肉は久しく食っておりませんからな、あれを食えるなら楽しみです」
ヤベエ、この人達にとってはボスなど美味い肉でしかないのか。ジェネラルってナイトの上位種だよね。更に知的になって人語も喋れるとか何とか。だけど、ナイトであの美味さだってことは、更にって事だよね……。オークの上位って事は肺呼吸だから壁と顔面水球でいけそうだし、うんうん、楽しみにしておこう。
安全地帯のお片付けを終えれば、全員で20階ボス部屋ゾーンへ。
緊張しまくりのベル君だけど、10階の時程ではないかな?
「よし、行くぞ」
「「「はい!」」」
全員で扉に手を付け、中に入る。扉が閉まったら暗視が効くようになるんだけど……誰だこれ?
「えっと、象くらい大きなボア……かな?」
「あ~~~、ギガントボアの可能性が高いな。まあでも肉は旨いぞ」
「ひっ!」
「ベルフォンス、あの時の雪辱を晴らせる好機ですよ!」
見た目を伝えれば、チアキさんから魔獣の情報が。聞いた途端に隣のベル君がガタガタと震え出したのが分かる。
ルイスさんの言葉から、きっと山に落ちた時に攻撃してきた相手がギガントボアだったのだろうことが分かる。
毛の色で使える属性が分かると言うけれど、まずは動けないようにしちゃった方が色々出来るよね?
「とりあえずボアの周囲を壁で囲うから、ベル君はゆっくり対処方法を考えて。【ホーリーシールド】と【ウォーターウォール】」
内側は聖なる壁で、その外側に水の壁、水の壁は足元まで包み込むように作ったからボアが魔法を外に打ち出すことは出来なくなった。
「う、うん、おれ、俺がやる!」
キっと目の前のギガントボアを睨みつけたベル君。
私が目覚めた時には傷一つない状態だったけど、翼は根元から折れ、足も骨折、アチコチ突き上げられたせいで傷だらけの満身創痍な状態だったらしい。日が落ち切る前だったからまだよかったけど、もし日が暮れてから落下していたら、更に危険な魔獣に集られていて、流石にルイスさんも助からなかっただろうと聞いた。
あの日、あの聖結界の外にいた魔獣は怪獣のような大きさで、かなり危険な風貌の奴らが多かった。聖属性攻撃だったから殺れたのか、それとも物量で攻めた結果だったのかは分からないけど、私達という餌に釣られて集まっていたのは、ベル君たちにとっては幸運だったみたいです。
自分の周辺に作られた壁にぶつかっていく象――じゃなくてギガントボア。色んなところがトゲトゲしているというか、全体が硬そう。
聖結界だからぶつかる度にボアの皮膚からジュウっと煙が上がっているんだけど、気にしていないのか、気付いていないのか、何度も何度もぶつかっている。
毛の色は全体的に赤みがかっているので、多分火属性のギガントボアなんだと思う。
「ヴィオ、盾を保持する魔力は大丈夫か?」
「ぶつかられる時に多少減りますが、全く問題ないです」
「よし! もう少しそのままキープしてくれ。ベル坊、どうやって攻略するか考えたか?」
「ヴィオの盾をギリギリまで小さくしてもらって、目から攻めます」
成程、確かにあの硬い外皮をどうにかするのは難しそうだよね。ただ、あの大きな体の中では小さな目だけど、そこまでベル君が届くのか? という心配はある。
「そうか、やってみればいい。じゃあヴィオ、盾をギリギリまで狭くしてやってくれるか?」
チアキさんの指示を受け、内側の聖結界は解除し、水の盾を徐々に狭くしていく。一応ベタベタタイプにしているので、既に足は床に縫い付けられているような状態だ。
あとはベル君の攻撃だと思って隣を見れば、少年はドラゴンになっていました。成程ね、飛べば確かにあの位置でも狙えるね。
フワッと飛び上がったチビドラゴンは、象サイズのギガントボアよりも更に高度を上げてその場で停止した。
「成程な、確かにドラゴンの強度があれば行けそうだ。部分竜化出来ないが、ベル坊の大きさならこの部屋で竜化しても問題ないな」
チアキさんも納得のご様子。確かに大人のメンバーが竜化したらこの部屋だと大分狭いもんね。チビドラだからこそかもしれないね。
しばらく睨みつけていたベルドラゴンは、頭を下に、翼を畳んだ状態で真っすぐギガントボアに向かって落ちてきた。ギガントボアもその様子に気付いていたものの、既に全身が水の膜で覆われており、身動ぎ一つ出来なくなっている。
両手を前に突き出したア〇ムスタイルで直撃したベルドラゴンの腕は、真っすぐギガントボアの左目を貫いた。
「GYA GYA」
ベルドラゴンが何やら叫んだと思えば、ギガントボアの右目も真っ白になり、その直後にキラキラエフェクトが出て、宝箱が出現した。
ドラゴンから少年の姿に変わったベル君は、その場に座り込んだと思ったら、バタリと後ろに倒れてしまった。
「ベル君! だいじょ――」
「勝った~~~~! やった~! 俺の翼を折った奴とは違うけど、だけど、勝てた~~~!」
駆けつけようと思ったところで勝利の雄叫び。
ルイスさんも、白雪さんも、満足そうに笑っているので、当時の事を思い出しているんだと思う。
目に突き刺した後、叫んだ理由は氷魔法を中でぶちかましていたらしい。外からの魔法は通らないけど、打撃や剣の攻撃は効く。であれば、打撃で敵の身体の中に到達した時点での魔法なら効果があるんじゃないかと思ったらしい。
全く考えたことがなかったですよ。だって、生身で相手の目でも口でも手を突っ込もうとか思いませんもん。あの時ベル君がやったのは【アイスランス】、ベル君の掌を中心に四方八方に氷の槍をぶちまけたんだって。恐ろしい攻撃ですよ。
ボス戦の宝箱からは超巨大なギガントボアの鞣し皮、大量の肉、魔石、食材各種盛り合わせでした。
「この皮でハンモック風呂を作れそうだな」
「おぉ、それは作ろう。ひとつじゃと待ち時間も長いしな」
チアキさんと白雪さんは一枚皮に大喜び。確かに一枚だけではお風呂の待ち時間が長かったもんね。見張り番を立てない私達だったので、最後の人は結構待つことになったんだ。
「ダンジョン様、今回も美味しい食材を沢山ありがとうございました!」
「「「「ダンジョン様、ありがとうございました!」」」」
大量の食材は私達が気に入っていた物をピックアップしてくれているのもいつも通り。ダンジョン様がやってくれているのか、裏で待っているボス部屋管理人がやってくれているのかは分からない。
だけど今日もありがとうの気持ちは忘れませんよ。皆もお礼を言ってダンジョンを後にした。
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