ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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伝説のエルフ

第444話 伝説との邂逅

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 チアキさんが爆速でお手紙を書いてから一週間後、伝説のエルフ様が村にいらっしゃいました。
 種族はハイエルフという事で、ドゥーア先生達エルフよりも長命種で、平均寿命は600歳というので倍くらいって事だろう。

「久々の連絡が、美味い物を見つけたから来いとは、相変わらずだな」
「ああ、うちの村で育てようと思ったんだがな、竜人族を前に委縮してしまってうまくいきそうにないんだ。白雪からもこのままでは早死にすると言われて、直ぐに来てくれて嬉しいぞ。
 マムにリーヤも来てくれたんだな。頼みたい事があるから一緒に来てくれて良かった」
「うふふ、チャーキが元気そうで良かったわ。頼みたい事ってあの小さな森の生き物の事かしらね。楽しそうだからついてきて良かったわ」
「ああ」

 チアキさんのご自宅で感動の再会をしているのを見ている現在。
 三人の超絶美人が座っていらっしゃいますよ。ドゥーア先生は性格がアレだから慣れたものの、最初に会った時は綺麗なエルフだなって思ったのを思い出しました。
 勇者と共にあの時代を生きていたという事だから、確実にドゥーア先生よりも年上の筈だけど、年下に見えるんだよね。よく似ているから家族なんだと思うけど、中性的な美人過ぎて、男女の違いがイマイチ判りません。声の感じで判別するしかなさそうです。

「イブ達にも紹介しよう。白雪は覚えているな?」
「勿論だ、久しぶりに会ったが、そのキモノ? よく似合っている」
「あらぁ、あの時の子熊ちゃんなのね? まぁまぁ、本当に美人さんになって、あらあら、チャーキの番になったのかしら、素敵な服ね、良く似合っているわ。」
「ああ」
「うむ、小さい頃の事を言われるのは存外気恥ずかしいが、悪くないな」

 子熊……。
 そうか、白雪さんが救出された時は子供だったって言ってたもんね。真っ白な子熊時代、それはそれは可愛らしいヌイグルミのような感じだったのだろう。是非モフりたかったですね。

「彼女はヒト族のヴィオだ。うちの子竜がグロンディール大陸に行って遭難して大怪我をした時に助けてくれた少女なんだ。小さいが聡明な子でな、今回の美味い素材を見つけて調理してくれたのも彼女だ」
「えっと、初めまして、ヒト族7歳のヴィオです。チアキさんのお世話になってます。よろしくお願いします」

 チアキさんに紹介されたので、慌てて自己紹介。興味深そうにキラキラした目で三人が見つめてくるから、緊張のあまり何かちゃんと喋れてない気がする。

「へぇ~、ヒト族なんだ。この大陸は希少種が多いだろう? どう?」

 にこやかに問いかけてきたのは白金ランクのイヴォンネさん。イブさんと呼ばれていたけど男性で良いんだよね? 

「う~ん、そうですね、あちらの大陸では部分獣化とかは無かったですし、洗礼を終えた以降の子供も大人も獣化することはなかったので、まずそれに驚きました。折角可愛いんだから、もっとみんな獣化すればいいのにって思いました。
 ドラゴンに会うのはお父さんとの夢だったんですけど、ドラゴンが竜人族の人だっていうのにまず驚きました。ダンジョンに行くのに背中にも乗せてもらえたし、一つの夢は叶っちゃいました。まだ猫獣人の人と、竜人族の人にしか会ってないので、他の人達にも会えたら嬉しいです」
「あらあら、確かにこの村は竜人族の村だものね。他の人達に会えたら嬉しいのね? 会えたらどうしたいの?」

 イブさんの隣にいたリーヤさんと呼ばれた人に質問された。多分喋り方と雰囲気からして女性かな。

「お友達になれたら嬉しいです。種族によって出来る事とか、好みの場所とか、得意な事とか色々違うでしょう? それを聞けたら嬉しいです」
「聞いてどうするの?」
「ん? どうもしないですけど、相手を知ることが出来たら嬉しくないですか? 今回イヴォンネさん達にお願いしようとしているようなことを、別の人達にもお願いできるかもしれないし、自分たちがやってみたい事のアドバイスをもらえるかもしれないし、仲良くなったら聞きやすそうだから……」

 そこまで言って考える。なんだかそれって友達を良いように使おうとしている感じになってない? 手伝ってもらうとか、アドバイスが貰いたいとか、ちょっと自己中な気がしてきたぞ。

「希少なモノが欲しいとか、珍しいモノを侍らせたいとかはないのか?」

 悩んでいたら、全く予想外の質問が来たんですけど? 
 今まで「ああ」しか喋ってなかった人が喋ったよ。見た目を裏切るバリトンボイス。ダブルでびっくりだよ。

「希少なモノをもらってどうするんですか? 誰かに見せびらかすとか? 
 でもそれって、絶対に争いの元になりますよね。希少なモノはその場所にあるから神秘的なモノとか、意味があるモノが多いでしょう? 
 ああ、でも希少な肉とか果物とか、食べ物だったら欲しいかも。
 いや、けど、希少って事はもう二度と食べられないかもしれないって事ですよね。凄く美味しくて、また食べたいけどもう食べられないって、かなり辛いかも。う~ん、だったら知らないままの方が幸せかもしれないですね。栽培とか養殖が可能なら食べたいけど、そうじゃないなら知らないままでいいです」
「くふっ、食べ物って……くふっ。じゃ、じゃあ侍らせたいっていう方は?」

 イヴォンネさんが笑いを堪えながら、そんな事を言ってくる。いや、堪えられてはないですが。
 チラリと隣を見たら、チアキさんと白雪さんも楽し気に、私の答えを待っているような感じだ。

「侍らせたいっていうのは、所謂《いわゆる》ハーレムを作りたいかどうかって事でしょうか。
 私はまだ7歳だし、女子だし、あんまりそういうのは興味がないです。あ~、でもモフモフに囲まれるなら幸せかもしれないとは思うかもしれないです。だからといって侍らせたいとは思わないですね。
 私が育った村では月に何度か、普段は家にいる小さな子供達も集まって薬草採収をする体験の日があったんです。そこでは人化出来ないとか、直ぐに獣化しちゃうちびっ子が多くて、その子達と戯れる時間はとっても楽しかったんですね。だけどあれは、彼らが自由だから楽しかったんだと思うんです。もしその自由を無くしてしまえば、あんなに自然に笑えないだろうし、はしゃげないと思うんです」

 ココアちゃん、クッキーちゃんをはじめとしたチビモフ達を思い出し、サマニア村が急に恋しくなってきた。次に会える時、私の事を覚えてくれているかな。レン君たちとは違い、小さすぎる彼女たちには忘れられているかもしれないな。
 あの村を襲撃したスチーラーズはヒト族だ。私も同じヒト族で、同じ他所者だった。彼女たちにとっては恐怖する相手となっているかもしれない。そう思うと急に怖くなってきたし、悲しくなってきた。

「ヴィオ……」
「ヴィオ、お前と襲撃者は全く違うだろう? その小さい子供達だってそれは理解している筈だぞ」
「うん……グスっ。けど、おにっ、お兄ちゃん達も……、お手紙……、返って来ないし……グスっ」

 二回目の手紙を送って一月以上が経った今も、まだ返信はない。一度目は金ランク試験に挑戦中だと思っていたけど、流石にこんなに長く連絡が取れない場所にいるという事は無いと思う。
 もし、何らかの事があって、大怪我をしていたとしても、ドゥーア先生からその連絡は来ると思う。そう、先生からも返信が無いのだ。それは、気にしないようにしているけれど、とても気になっていた事なのだ。
 こんなことを言えば、あちらに戻りたいのだろうと心配されて、お世話になっているチアキさん達に申し訳ないと思い、言い出せなかったのだ。だけど、チビモフ達の事を思い出したら隠せなくなってしまった。
 美人エルフ達がオロオロしているのが見えるけど、未だに情緒不安定な私は涙が止まらなくなってしまった。
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