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伝説のエルフ
第445話 伝説へのお願い
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ホームシックをきっかけに、気持ちが揺れて涙が止まらなくなってしまった私。お客人の前だから止めたいのに止まらないのだ。
「ミケ、あれを持ってきてくれ」
「はい、直ぐに!」
チアキさんが声をかければ、ミケさんがダッシュでアレを持ってきてくれる。ササッと白雪さんに渡されたソレは、涙が止まらない私の目の前に差し出され、反射的にギュッと抱き締めることで落ち着いてくる。
「――ええっと、チャーキ、それは?」
あまりの素早い行動に、呆気にとられていた美人エルフ達。私の号泣が落ち着いてきたところでイヴォンネさんから質問があった。
「ああ、これは例の食材を落とす魔獣の毛で作った抱き枕だな」
そう、私が抱きしめているのは120センチ大の熊さん抱き枕だ。立った私よりも少しだけ小さいけれど、抱き枕としてはかなり大きな熊さんはこの世界では非常に珍しい。勿論デフォルメした熊さんで、コロンと楕円形のフォルムに、熊耳と熊の顔があるだけだけどね。
イヴォンネさん達が来るまで時間があったので、クッションを作ったんだよね。
ああ、毛刈りはミケさんに猫化してもらったのではなく、【スリープ】で眠らせた状態で行いました。
毛を紡ぐのは、私と白雪さんの二人で行い、機織りはチアキさんが買ってきてくれました。パイル生地ではないんだけど、それでもモフッコの毛は非常に柔らかくて、肌触りが良い生地が出来ました。それで巨大抱き枕を作り、中にはたっぷりのモフッコの毛。もう、モッフモフなんですよ。
これが完成してからは、寝る時、泣くときには直ぐに抱きしめる事で落ち着きを取り戻すようになりました。
白雪さんもデフォルメ熊さんを気に入って、私の茶色の熊さんとは違い、30センチ大の白熊クッションを作っています。抱き枕は中に入れる毛が多いから、小さいので充分という事でした。
私の抱き枕はそのままに、白雪さんの白熊クッションを三人に触ってもらうことになりました。
「まぁまぁ、何この手触り! 気持ちがいいわぁ」
「うむ、そうじゃろう? あの魔獣の毛は非常に上質なんじゃ。本当はこの生地よりも更に気持ちが良い手触りのものを作りたかったんじゃが、時間が足りずに作れておらんのじゃ」
「どういうこと? 聞かせて」
キランと目が光ったように見えますが、気のせいでしょうか。白雪さんがパイル生地について説明しているのを、隣でイヴォンネさんも聞いている。機織り機は魔道具ではなく、普通に木で作られたものだ。
白雪さんの説明後、チアキさんからパイル生地を作れる機織り機を魔道具で作りたいのだと言われ、イヴォンネさんではなく、リーヤさんが絶対に作りましょう! と気合十分になってくれた。
少し生地への情熱が落ち着いたところで、ミケさんが持ってきてくれたのはチョコレートだ。
砂糖抜きのものは木の実やフルーツを混ぜたり、ケーキにする事で村の人達からも大好評。益々モフッコを愛でたい人が増え、モフッコをビビらせるという悪循環が起きている。
三人にお出ししたのは木の実とドライフルーツを載せたマンディアン、甘み入りのノーマルチョコの三種類。ノーマルは蜂蜜と砂糖の違いも楽しんでもらいます。
「黒いわね……」
「だけど、甘い香りがするよ」
「むっ」
リーヤさんは苦笑い、イヴォンネさんは驚きながらも、一粒手に取って香りを確認。寡黙な男性マムさんだけが躊躇いなく砂糖チョコを一口パクリ。一言発したと思えば目を閉じて瞑想中?
出されていたお茶を一口含み、二つ目の蜂蜜チョコを一口。また目を閉じて瞑想。その様子を二人は見届けることにしたようで、イヴォンネさんもチョコをお皿に戻してしまった。
またお茶を口に含んでから、最後のマンディアンを手に取り、じっとそれを見つめてから一口でパクリ。
「んふっ」
鼻の穴が広がったけど、また目を閉じて瞑想。先程までと違ってモグモグと口が動いているので、さっきまでは溶かして食べたのだと分かった。
「マム、どう?」
ああ、マムと言ってもMomではないです。マララームさんというのが本名なので、通称マムだそうです。
そのマムさんはゆっくり目を開けて私をジッと見つめてくる。いや、目力強いんですって。
「はじめて食べたが、非常に素晴らしく完成された甘味だな。最初のものは砂糖と蜂蜜の違いだろうか。甘みの違いを感じられたのもそうだが、蜂蜜の種類を変えることでその地域ごとの味になるだろうし、砂糖はそれなりにどこでも採集できることを思えば作りやすいだろう。
こちらの木の実のものは、甘み自体は少ないが、その分木の実や果物の甘みを引き立てることが出来ていて非常に素晴らしい。柔らかい黒いこれに、コリコリとした木の実、弾力のある果実、色々な食感と味を楽しむことが出来て非常に楽しかった」
めっちゃ喋るやん。
最初の「ああ」は何処に行った? 饒舌すぎる食レポに驚いているのは私だけじゃなかったけど、エルフのお二人は見慣れているのか頷いている。そしてそれを聞いて二人もチョコに手を付けて「本当ね」「これは他のものとの組み合わせも楽しめそう」などと楽しくお喋りしながら試食している。
どうやらこの感じだと、魔道具担当はイヴォンネさんで、生地に関してはリーヤさん、チョコはマムさんになりそうですね。
チアキさんからもお願い事を改めて発表されました。
「そうなのね、まあ確かに竜人族の気配が平気な魔獣は少ないかもしれないわね」
「そうだね、あの山にいるんだったら、僕たちの集落からも遠くないし、生息地から離さなくても済むんじゃない? 半分野生のままでも行けそうな気はするけど」
「ああ」
という事で、とりあえずモフッコ本体を見に行くことになりました。
「ミケ、あれを持ってきてくれ」
「はい、直ぐに!」
チアキさんが声をかければ、ミケさんがダッシュでアレを持ってきてくれる。ササッと白雪さんに渡されたソレは、涙が止まらない私の目の前に差し出され、反射的にギュッと抱き締めることで落ち着いてくる。
「――ええっと、チャーキ、それは?」
あまりの素早い行動に、呆気にとられていた美人エルフ達。私の号泣が落ち着いてきたところでイヴォンネさんから質問があった。
「ああ、これは例の食材を落とす魔獣の毛で作った抱き枕だな」
そう、私が抱きしめているのは120センチ大の熊さん抱き枕だ。立った私よりも少しだけ小さいけれど、抱き枕としてはかなり大きな熊さんはこの世界では非常に珍しい。勿論デフォルメした熊さんで、コロンと楕円形のフォルムに、熊耳と熊の顔があるだけだけどね。
イヴォンネさん達が来るまで時間があったので、クッションを作ったんだよね。
ああ、毛刈りはミケさんに猫化してもらったのではなく、【スリープ】で眠らせた状態で行いました。
毛を紡ぐのは、私と白雪さんの二人で行い、機織りはチアキさんが買ってきてくれました。パイル生地ではないんだけど、それでもモフッコの毛は非常に柔らかくて、肌触りが良い生地が出来ました。それで巨大抱き枕を作り、中にはたっぷりのモフッコの毛。もう、モッフモフなんですよ。
これが完成してからは、寝る時、泣くときには直ぐに抱きしめる事で落ち着きを取り戻すようになりました。
白雪さんもデフォルメ熊さんを気に入って、私の茶色の熊さんとは違い、30センチ大の白熊クッションを作っています。抱き枕は中に入れる毛が多いから、小さいので充分という事でした。
私の抱き枕はそのままに、白雪さんの白熊クッションを三人に触ってもらうことになりました。
「まぁまぁ、何この手触り! 気持ちがいいわぁ」
「うむ、そうじゃろう? あの魔獣の毛は非常に上質なんじゃ。本当はこの生地よりも更に気持ちが良い手触りのものを作りたかったんじゃが、時間が足りずに作れておらんのじゃ」
「どういうこと? 聞かせて」
キランと目が光ったように見えますが、気のせいでしょうか。白雪さんがパイル生地について説明しているのを、隣でイヴォンネさんも聞いている。機織り機は魔道具ではなく、普通に木で作られたものだ。
白雪さんの説明後、チアキさんからパイル生地を作れる機織り機を魔道具で作りたいのだと言われ、イヴォンネさんではなく、リーヤさんが絶対に作りましょう! と気合十分になってくれた。
少し生地への情熱が落ち着いたところで、ミケさんが持ってきてくれたのはチョコレートだ。
砂糖抜きのものは木の実やフルーツを混ぜたり、ケーキにする事で村の人達からも大好評。益々モフッコを愛でたい人が増え、モフッコをビビらせるという悪循環が起きている。
三人にお出ししたのは木の実とドライフルーツを載せたマンディアン、甘み入りのノーマルチョコの三種類。ノーマルは蜂蜜と砂糖の違いも楽しんでもらいます。
「黒いわね……」
「だけど、甘い香りがするよ」
「むっ」
リーヤさんは苦笑い、イヴォンネさんは驚きながらも、一粒手に取って香りを確認。寡黙な男性マムさんだけが躊躇いなく砂糖チョコを一口パクリ。一言発したと思えば目を閉じて瞑想中?
出されていたお茶を一口含み、二つ目の蜂蜜チョコを一口。また目を閉じて瞑想。その様子を二人は見届けることにしたようで、イヴォンネさんもチョコをお皿に戻してしまった。
またお茶を口に含んでから、最後のマンディアンを手に取り、じっとそれを見つめてから一口でパクリ。
「んふっ」
鼻の穴が広がったけど、また目を閉じて瞑想。先程までと違ってモグモグと口が動いているので、さっきまでは溶かして食べたのだと分かった。
「マム、どう?」
ああ、マムと言ってもMomではないです。マララームさんというのが本名なので、通称マムだそうです。
そのマムさんはゆっくり目を開けて私をジッと見つめてくる。いや、目力強いんですって。
「はじめて食べたが、非常に素晴らしく完成された甘味だな。最初のものは砂糖と蜂蜜の違いだろうか。甘みの違いを感じられたのもそうだが、蜂蜜の種類を変えることでその地域ごとの味になるだろうし、砂糖はそれなりにどこでも採集できることを思えば作りやすいだろう。
こちらの木の実のものは、甘み自体は少ないが、その分木の実や果物の甘みを引き立てることが出来ていて非常に素晴らしい。柔らかい黒いこれに、コリコリとした木の実、弾力のある果実、色々な食感と味を楽しむことが出来て非常に楽しかった」
めっちゃ喋るやん。
最初の「ああ」は何処に行った? 饒舌すぎる食レポに驚いているのは私だけじゃなかったけど、エルフのお二人は見慣れているのか頷いている。そしてそれを聞いて二人もチョコに手を付けて「本当ね」「これは他のものとの組み合わせも楽しめそう」などと楽しくお喋りしながら試食している。
どうやらこの感じだと、魔道具担当はイヴォンネさんで、生地に関してはリーヤさん、チョコはマムさんになりそうですね。
チアキさんからもお願い事を改めて発表されました。
「そうなのね、まあ確かに竜人族の気配が平気な魔獣は少ないかもしれないわね」
「そうだね、あの山にいるんだったら、僕たちの集落からも遠くないし、生息地から離さなくても済むんじゃない? 半分野生のままでも行けそうな気はするけど」
「ああ」
という事で、とりあえずモフッコ本体を見に行くことになりました。
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