ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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伝説のエルフ

第446話 伝説との協力

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 この村に来てから一週間、ずっと木陰から出てこないモフッコ達。
 私にしか攻撃をしてこないので、二日に一度、カボスカカオ回収の為に来ているんだけど、だんだんその飛ばす威力が落ちている事から、やはりストレスが溜まり過ぎているのだと思われる。
 一応チアキさんから、村人接近禁止令が出たんだけど、村の中ですからね。完全に気配を断つことなど出来ないので、彼らは木陰で震えて過ごしている。

「あらあら、恐怖心が伝わってくるわね」
「俺とヴィオだけの時は気配を隠蔽していた事もあって大丈夫だったんだがな……」
「竜という種族は生物の頂点だからな。近づかないとしても村だから、その気配はビンビンに感じてるんだろうな、可哀想に」

 イヴォンネさんの言葉と表情が合っていないんですけど、どうやらチアキさんの失敗が面白いらしいです。
 毛刈りに関しては、イヴォンネさん達の集落にも山羊的な魔獣がいるらしく、問題ないとの事。ただ、カボスの採集方法は分からないだろうという事で、お見せすることに。

「攻撃をさせてから拾えば良いとは思うんですけど、結構軟らかいので、地面に落ちたものを踏んでしまうと潰れてしまうんです。なので、できるだけ全てを受け止められるようにしています。【ウォーターウォール】」

 自分の周囲を包み込む大きな水のドームを作り出す。勿論外側にベタベタがあるタイプです。全部壁にくっつけてキャッチしますよ。

「水の壁を作るの? 攻撃を弾いちゃうんじゃない?」
「ヴィオの壁は普通の水じゃないぞ。あの壁を触ると接着するようになっててな、くっついた物は剥がれない。ヴィオ、まずは小さな壁にして、イブ達に触らせてやってくれるか?」

 あ、確かにそうだよね。大きく広げていたドームを体にフィットするくらいまで小さくすれば、驚かれたけど、まあとりあえず触って下さいな。
 珍しい魔法や、新しい魔法が大好きだというイヴォンネさんが壁に触れてきた。触れたら離れないと言われたのに、全く躊躇することなく右手の掌をべったりと壁に着けてくるもんだから、こっちがビックリしましたよ。

「うおっ! 本当にくっ付いて離れない。柔らかい水の感触なのに、なにこれ、面白いんだけど」
「そんなに?」

 手が離れないのに楽しそうなイヴォンネさん、なんだかドゥーア先生とサブマスと同じ匂いがしますよ。リーヤさんは恐る恐る、人差し指を一本立てて、そっと壁に触れる。水の壁なので固くはない。指でつつけばムニュリと動き、指を飲み込む。

「わわっ、柔らかいわ。ああっ! 埋まったまま抜けないわ」
「ほう」

 埋まった指を見て、驚きながらもキャッキャと喜んでいるように見える。そんな姿を見て、マムさんは一つ頷いただけ。お試しはしないようです。
 一度壁を解除すれば自由になる手と指。
 自分も壁を作りたいというイヴォンネさんを抑え、まずはモフッコ達からカボスを回収しましょう。
 さっきから新しく増えた三人を見て、こちらをチラチラ見ていたモフッコ。数匹が木の実を齧っていたのも見ているので、準備は万端の様です。

 水の壁をまた大きく作り直して、モフッコの元へ向かう。モッチャモッチャとしながら頬を膨らませたモフッコ前衛陣が、首を大きく振りかぶり、唇を尖らせて、ブバババババッと大量の涎と一緒にカボスを飛ばしてくる。忽ち水の壁は薄黄色く染まり前が見えなくなるものの、奴らはその隙に攻撃してくることはなく、後衛と場所を交代して、また木の実を齧って弾の補充をしている。

「おぉ、あのチョコレートの匂いがするな」
「うっわぁ。まさかあの甘味の元ってアレ?」
「種が全部くっ付いているけど、あれをどうやって回収するのかしら」
「自分が取り込みたいものは中に取り込めるんだよ。ほら、見てろよ」

 第二弾のカボスをぶちまけられたため、壁にへばりついたカボスを壁の中に回収していく。既に籠はしっかり準備しているので、籠の上に集まるようにすれば、一切触ることなく回収できる。
 モフッコも、私がカボスを回収するだけで攻撃してこないと理解しているのか、二回攻撃してきたら木陰に戻っていくのだ。
 二周目の攻撃を受けて、モフッコたちが消えたところで壁を解除、山盛りになった籠に入ったカボスを【クリーン】で綺麗にすれば終了だ。

 イヴォンネさんからは水の壁についての質問があり、マムさんからは採れたてホヤホヤのカボスについての質問があった。
 リーヤさんは白雪さんとモフッコの家畜化についての相談が始まったので、とりあえずお家に戻ってお話し合いをしましょう。

 翌日からは、リーヤさんは糸紬を手伝ってもらい、イヴォンネさんとマムさんが水の壁を作る練習を始めた。機織りの魔道具も作りたいけど、まずは水の壁を作れるようになりたいという希望があったので、そこから練習中です。
 盾自体はそんなに時間がかからなかったんだけど、カボスだけを中に取り込むというのが難しいらしい。涎で練習はイヴォンネさんが嫌がったので、豆を入れた水桶をぶちまける方法で練習しているんだよね。

「水を流そうと思ったら豆も流れるし、豆を中に入れようと思ったら水も入ってくる~! 何なの! なんでこんな面倒な事が出来る訳?」
「ええ……、汚れずにって考えてたら出来たとしか言えないんですけど……」

 250歳を超えても、ウガーって叫ぶんですね。
 物語で読むエルフって、寡黙とか、落ち着きがあるとか、賢者と呼ばれるレベルで魔法が得意とか書いてあることが多いけど、私の知っているエルフはイヴォンネさん達以外はドゥーア先生で、ドゥーア先生も魔法の事と、遺跡の事に関しては残念属性が高いからよく分からない。
 誰か、一般的なエルフを教えて!
 美人が頭をグシャグシャにかき乱しながら「ウガー!」って吠えてるのは、漫画で見るなら面白いけど、リアルで見ると「うわぁ」ってなる事を知りました。

「あ、あの、わたくし如きが僭越なのですが……」

 食材の豆を使っているので、その補充の為にミケさんが見学を兼ねて側にいてくれたんだけど、ウガーっと吠えているイヴォンネさんを見ながら、おずおずと遠慮がちに手を上げる。

「ミケ?」
「あ、えっと、イヴォンネ様がお困りでいらっしゃるお水とお豆の分離なのですが、笊を意識なさってみればと思いまして……」
「ザル?」
「あぁ! 成程ね、ミケ、その考えはお手柄だぞ」

 私もアハ体験ですよ。チアキさんはミケさんの頭をワシャワシャ撫でて、ミケさんも嬉しそう。イヴォンネさんだけが理解できていないようなので、キッチンから笊を持ってきて、水に入れた豆を笊の上に流し入れて見せた。
 ザバザバと水が落ち、笊の上には豆だけが残っている。

「あぁ、成程そういう事か。ちょっとやってみる」

 そう言ってもう一度水を入れ直した豆の桶をイヴォンネさんの壁にぶちまけると、水と豆の両方が壁にくっついている。
 その後少しだけ目を閉じて集中したイヴォンネさん、徐々に豆だけが壁にめり込んでいくのが分かる。

「イヴォンネさん、水の壁の中は自分で自由に水流を動かせますから、集まってほしいところに流せばいいですよ」
「ああ、そういう事ね、了解」

 水の壁に埋まった豆がスルリと動き出し、一定方向へ流れ出す。そしてイヴォンネさんが持つ桶の真上からシャワーのようにポタポタと落ちてきた。その中に水はない。

「出来た~! クッソ面倒な魔法だけど、便利ではあるね」

 エルフなのに口が悪い……。
 いや、種族で勝手なイメージをしている私が悪いね。そうだよ、オネエなエルフがいても、もう驚きません。
 こうして水の壁をイヴォンネさんが習得したことで、次の工程に進めそうですよ。
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