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伝説のエルフ
第447話 伝説とのお別れ
しおりを挟むイブさん達が来て一週間、モフッコ達は元の森へお返しし、村の牧場は寂しくなった。
イブさん達の集落は、カッツェ村から北へ山を四つ程越えた場所にあり、あの時連れてきたモフッコ達の生息地からもそう遠くない事が分かった。
なので、壁を作れるエルフがもう少し増えれば、家畜化しなくても大丈夫そうだということだった。毛皮に関しては家畜化した方がフワフワのモコモコにはなるものの、【クリーン】で綺麗に洗えば汚れは取れるし、十分膨らむことが分かったからね。
水の壁を作れるようになってからは、イブさんはチアキさんと二人で機織り機の魔道具作りを、マムさんはカボスの加工方法と、チョコレートの新しいレシピ開発を、リーヤさんは糸紬と抱き枕のデザインを、其々得意分野に分かれて頑張っている。
モフッコを森に戻しに行ったのは、私とチアキさんとイブさんの三人だ。ドラってくれたのはダルスさんです。しっかり【スリープ】で寝かせたモフッコ達を森に帰した時にはちょっと寂しくなったけど、あの村にずっといたら衰弱する事待ったなしだったからね。バイバイモフッコ、元気でね。
「ヴィオちゃんの抱き枕は素敵な大きさだけど、モフッコの毛だけで埋めるのはちょっと贅沢すぎるわね。価格も高くなっちゃうし、かさ増しのために内側にはカプラの毛を使うのもありだと思うの」
「その場合は毛が混ざらんようにする必要があるな」
「そうねぇ、デザインはどうしようかしら。白雪ちゃんのクッションもそうだけど、そんな可愛いクマちゃんだったら皆も欲しがると思うのよね」
カプラとはエルフの里で家畜として飼っている山羊の事で、年に三回毛刈りが出来る程、毛量が多いんだって。デフォルメという文化はアニメ大国日本だからこそ生まれた文化だと思うんだよね。
熊なんて恐怖の対象でしかない筈なのに、グッズとなれば結構可愛いものが多いのも特徴だ。某夢の国では主人公のネズミと同じ大きさの黄色い熊が仲良くしているくらいだしね。捕食者と被捕食者が仲良くする、まさに夢の国。ゲフンゲフン。
だけど、デフォルメされた『カワイイ』はエルフや聖獣にも響いたようです。小さい私が大きなクマさんにしがみ付いているというのも、可愛さが天元突破だそうです。
エルフさんも多産種族ではないものの、イブさん達の集落には、ハイエルフだけではなく、エルフ、翼人族の方も一緒にお住まいだそうで、それなりに子供はいるとの事。是非可愛い抱き枕と戯れる子供たちを見て悶えていただきたい。
野生に戻したモフッコだけど、カボスをもらうのと、どれくらい他にモフッコが生息しているのかの確認をするために、数日おきに様子を見に行っている私とチアキさん。魔道具が完成し、今日は久しぶりに皆で集まって今後の方針を話し合っている。
「野生のモフッコから収穫するのはカボスだけで、カッツェ村から毛を買ってもいいんじゃないの?」
「ん~、でもミケちゃんの事を虐めてた相手でしょう? 私たちがこの抱き枕を販売するようになればクッションが売れなくなるだろうし、高値をふっかけてきそうじゃない? チャーキはどう思ってるの?」
「俺か? 俺はあの村がどうなろうとどうでもいいな。
棲み分けで良いんじゃないか? 野生のモフッコも、毛がない方が動きやすそうだったことを思えば、寒くなる時期以外は定期的に刈ってやって良いと思うしな。エルフの織物が売れるようになれば、その正体に気付いた商人がカッツェ村に毛だけの取引を持ち掛ける可能性はあるだろう? それで奴らが応じるかどうかじゃないか?」
イブさんの提案に反対したのはリーヤさん。ミケさんと会ったのは今回が初めてだったけど、抱き枕の縫製とかは一緒にやっていたので、すっかり仲良しになったみたい。
チアキさんの答えは意外……でもないか。
あの村のヒト達に怒っていたのは先日のやり取りでよく分かったし、ミケさんの故郷だから潰れたらいいとは思ってないとは思うけど。何なら私はあの家族が不幸になるのは大歓迎と思っていたりする。
まあ、そういう事で、モフッコは冬以外には毛刈りを行い、通年でカボスの回収を行う、森には魔素がたっぷりあるから大丈夫だとは思うけど、ダンジョンのように時間でリポップするわけではないので、同時にモフッコとカボスの木がダンジョンにないかも確認することになった。
チョコレートは、マムさんが張り切ったお陰で、ケーキにトリュフ、クッキー、ラングドシャなど、様々なお菓子が完成した。
イブさんとリーヤさんは肉食大好きっ子だけど、マムさんは菜食とまでは行かないけど、そこまで肉が好きではない。魚は好きだけど、住んでいる場所が内陸だから川魚をたまに食べるくらい。
あまり食に興味がないと思っていたけれど、それは狩った肉を軽く捌いて焼く、煮る、蒸すしかしていない料理だったからだと、ここに来て分かったらしい。
チョコだけではなく、ハズレ袋を使った料理にハマりまくったマムさんは、一日の殆どをキッチンで過ごすようになっていたからね。
「マムは少食だと思っていたけど、美食家だったのね。夫婦なのに全く気付かなかったわ」
「俺も気付いてなかった」
二人で見つめ合う姿は非常に絵になるんだけど、話している内容が残念なんだよね。
ちなみに兄弟だと思っていた彼らは親子でした。マムさんとリーヤさんが両親で、イブさんが息子、長命種の老化速度の恐ろしさですよ。
「今度はヴィオちゃんがうちの村に来てもいいんじゃないかしら? うちの近くにもダンジョンはあるし、お魚も沢山採れるのよ~」
「おぉ! 海のダンジョンなんですか?」
「いや、沼地が多いダンジョンだよ」
リーヤさんのお誘いに喜んでいれば、イブさんから海ではないとの答えが返ってきた。
沼地……。それは泥臭い魚って感じなのかな。いや、例え泥くさくても【クリーン】で匂いも無くなるか。
「そもそもダンジョンに出てくる相手は全部魔獣か魔魚だからな、出てくるならドロップアイテムだぞ」
そうでした。
そのダンジョンにはチアキさんも潜ったことが無いらしいので、行くときはマムさん達が先導してくれることになったよ。エルフとのダンジョンとか楽しそう!
伝説の人って事で緊張していたけれど、実際に接してみれば普通のヒトでした。
いや、普通ではないかもしれないけど、私の周りにいる人って、夢中になれる物を見つけると集中しすぎる人が多いから、彼らと何も変わらないという意味で普通のヒトでした。
そんな彼らと過ごした三週間、モフッコの事業は村全体で取り組むことになるので、リーヤさん達が村人に伝える必要もある。
カボスの実を安全に回収する為には、あの水の壁が必須だろう。マムさんとイブさんが使えるようになったとはいえ、彼らでも習得するのに数日かかっているのだ。それを村の人たちに周知するにも時間がかかる。
モフッコの毛刈りに関しては急いでいない。というか、モフッコの森がある場所は、比較的暖かい場所だけど、来月からは少し冷えてくるからね。うっかり今月毛刈りをしちゃったけど、大丈夫だろうか。
森に帰る前に、カッツェ村に寄って毛、というかクッションを大量に購入すると言っていたので、しばらくは糸紬と機織りをする事になるんだと思う。
私のクマさんも、パイル生地に変わった事で、より手触りが良くなりました。
パイル生地のループ部分をカットしたことで、更に手触りの変化を楽しむことができ、高級タオルとして販売すると鼻息を荒くしていたのはリーヤさん。勿論試作品はチアキさんのお家に納品されました。
これはモフッコの乱獲が始まるかもしれないね。出来るだけ早く、ダンジョンでモフッコを見つけないと危険だと思います。
イブさん達が落ち着いた頃に遊びに行く約束をして、伝説の人達とはお別れしました。
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