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魔道具製作
第453話 お守りの効果?
しおりを挟む※ちょい鬱回です。電車(人前)では読まない事をお勧めします※
それなりの時間がかかったけど、色変えの魔道具ニューバージョンが完成し、効果の確認をすることになった。
今装着しているのはエミリンさんとブン先生の共同作だから、大事に箱にしまっておこう。片耳ずつイヤーカフを外せば、息を呑む音が聞こえる。
不思議に思って顔を上げれば、チアキさんがとても驚いているんだけど、まあこの髪色は珍しいよね?
「ヴィオ様の髪色は随分綺麗なお色だったのですね。ああ、瞳の色も違ったのですね?」
「そうなんです。髪色は母さんから、瞳の色は父さんからの遺伝だそうです」
「そう……か……」
ルイスさんからは、花の妖精のようで非常に可愛らしいとか言われて照れる。
チアキさんはどうしたのだろうか。
「チアキさん?」
「あ、あぁ。ちょっと昔なじみに似ていて驚いた。前に言っただろう? 俺がクソビッチとスタンピードに行く前に婚約していた人がいるって。その彼女がヴィオと同じ髪色だったんだ。あまりその色は他で見たことが無かったから、驚いた」
懐かしそうな、それでいて淋しそうな顔だったのは、昔の婚約者さんの事を思い出したからだったんだね。母さんも同じ色だったし、大人だったからね。もっと似ていて驚いたかもしれないね。
いや、だけど伯爵令嬢だったという婚約者さんと母さんでは、大分違うか。伯爵令嬢はあんなにヘビーな生活も、語彙豊富な罵詈雑言も知らないだろうし。うん、思い出は綺麗なままが良いと思います。
ちょっとおセンチになっちゃったチアキさんだけど、私の年齢的に出会った頃の伯爵令嬢を思い出したという事だったので、すぐに復活してくれました。
とりあえず右耳に完成した魔道具を付ければ、下ろしていた髪は茶色く変わっている。二人に確認すれば目の色もちゃんと茶色くなっているというので、成功だね。
浄化の魔道具は魔石が特別なだけなので、魔法陣はそう複雑な事は無かった。だけど折角複雑な魔法陣の練習をしたので、浄化と精神保護の効果を入れておいた。
毒を飲むわけにはいかないので眠り草を煎じたお茶を飲んだけど、眠くなることはなかった。
【クリーン】をかけた時みたいに、水玉に包まれたらバレそうだと思ったけどそんな事は無く、お腹がグルグルすることもなかったので、どうやって浄化されているのかは謎だけどね。
この魔道具は聖属性の魔石を使うから、ルイスさんが居ない日に作ったよ。白雪さんが一応監視役としてついてくれてました。
完成後に実験を称して嬉しそうに【スリープ】の魔法をかけてくれたのは、勿論チアキさん。イヤーカフを外した状態だと完全に眠った私だったけど、つけていたら全く眠気は訪れなかった。
「いいな、これがあれば大分安全に動けるぞ。ヴィオ、これは俺も同じものを作ってもいいか?」
チアキさんがいなかったら完成しなかった魔道具だ。わざわざ聞く必要なんてないのに律儀な人ですよ。チアキさんは白雪さんの為にこの魔道具を作りたいんだって。
「俺の方が先にいなくなるだろう? せめて俺が護れない代わりに白雪の事を護りたいんだ」
「チャーキ……」
さ~てと、私は魔石作りに精を出しますかね。この魔道具が一般的に出回ることはないし、魔法陣を知らせるつもりもないけれど、お兄ちゃんたち大事な人には使ってほしい。
今回作った色変えの魔道具も、浄化の魔道具も、魔石は見えないように内側に仕込んでいる。外側はシンプルな花模様が入っただけのイヤーカフになっている。エミリンさんたちが作ってくれたものも、髪飾りも、魔石は見えるようにデザインされていたけれど、それだと白い魔石が目立っちゃうからね。
お兄ちゃんたちの魔道具はどうしようか。ギルドタグにつけるタイプだと動いた時に魔石が見える可能性があるよね。同じようにイヤーカフが良いか、指輪が良いか、それは今度の手紙で聞いてみようかな。
「ん? 今度は何を作るんだ?」
デザインを色々考えながら紙に書いていたら、チアキさんたちが実験室から出てきた。白雪さんは嬉しそうに耳を触っているので、魔道具が完成したのだろう。
「お兄ちゃんたちにお守りを贈ろうと思って。実際に渡せるのは物がモノなので、帰ってからになりそうなんですが……」
「まあ、この魔道具は魔封じしたとしても転送するのは怖いな」
「ほぉ、其方の兄達は幸運じゃな。王侯貴族とてこの様な魔道具は持てんじゃろうに」
お父さんに渡したお守りは効果がなかった。だけどこれは既に効果があるのも確認しているからね。前回もちゃんと効果があるか確認しておけばよかった。
「お守りとは、どんなものを作ったんじゃ?」
白雪さんに言われて、魔鉄に神様のお印を刻んだお守りを作った事を伝える。
「あ~、ヴィオ。それは効果が無かったとしか言えん」
「え?」
「あれだ、気持ちは籠ってるぞ。部活の仲間にマネージャーが贈る優勝祈願のお守りみたいな感じだな」
そういえば私もあの時はそう思って作っていた筈だ。神様のお印を彫るのはできないから、それを転写する為に錬金しただけ。
だけどいつの間にかお父さんを護ってくれるお守りみたいに思ってた。
そうか、私、全く意味のないモノを渡してたんだ……。
「いや、意味がないって事は無いと思うぞ」
「そうじゃ、真剣にそれを持って祈っておったのであれば、神々にはその声が届いておったかもしれんぞ」
「――でもっ、ヒック、お父さんはっ、ちょ、長寿のお守りだったのに――ヒック、死んじゃったもん」
嬉しそうに林檎のお守りを着けてくれていたお父さん。
全然意味がなかったお守りモドキだったなんて。
ちゃんとしたお守りだったら、あの時だって助かったかもしれないのに。
目の前が暗くなったと思えば、柔らかいクマさんクッションが押し付けられていた。顔を埋めると安心する。
「うわぁ~ん、おどうざん、ごべんね、お守りづぐれでなぐで、ごべんね」
ギューっと抱きしめたら沈み込む。顔を埋めたまま思いの丈を叫ぶというのは何度目だろうか。いつの間にか背後に座った白雪さんが、優しく頭を撫でながら声をかけてくれる。
「意味がなかったわけじゃない。其方の父にとっては何にも代えがたいお守りじゃったと思うぞ」
お父さんの最期は薄靄がかかったように思い出せない。私を投げ飛ばした時に「幸せになれ」と「愛している」と言ってくれた事、恐怖ではなく微笑を浮かべていた事は思い出せる。
だけどその後、空を飛ぶお父さんを見たところ位からモザイクがかかったようになるのだ。お父さんを助け出して回復魔法をかけた事も覚えている。だけど、その時のお父さんの姿が思い出せない。
「おどうざん、じんじゃっだ」
「そうじゃな、其方の父は勇敢じゃった。あの森に、あの時間に足を踏み入れることはできんぞ」
「おどうざん、まじゅうに、だべらでだ?」
「――っ、嬲られた可能性はあるが、穏やかな顔じゃった。微笑を湛えとったぞ」
笑っていたお父さんの顔しか思い出せない。
もしかしたら、前に夢で会った時に心配してくれていたから、何かしてくれているのかもしれない。お父さんの優しい声、失敗した時の笑い声、やらかした時に𠮟る声、成功した時に褒めてくれる声。
『ようやったな』
『今のはあかんぞ』
『びっくりしたなぁ』
『あっはっはっは』
『これは気持ちがええな~』
『これは美味いなぁ』
『ほれっ、来い!』
『ヴィオは可愛くて世界一の娘じゃ』
『ヴィオ、幸せになれ!』
色んなお父さんとの楽しい思い出が、走馬灯のように流れていく。
白雪さんの膝に抱えられて、背中に温かい鼓動を感じる。
軟らかい抱き枕と白雪さんの温かさに包まれて、泣き疲れた私はそのまま眠りに落ちた。
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