ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔道具製作

第452話 魔道具作成

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「ふぅ~、できました」

 額に浮かんだ汗を拭い、見上げた先には口を開けたままの二人。夫婦って似るんですね。

「チアキさん? 白雪さん?」
「はっ! お、おぉ、凄いものを見せられた気分だが、そうか、大きな魔石に魔力を移動させたって事だな。魔石は使い捨てという認識が根底にあったからな、充電と考えればできなくはなかったのか」
「聖属性の魔石など、まさか作るものがおるとは思わんかったな。其方の周りには規格外が多いんじゃな」

 筆頭は私の母です、とは言い出せない何か。
 チアキさんは魔力の移動を充電と考えたことで理解できたみたいだね。私も魔力の移動はそれを想像しながらやってます。
 ただ、この実験に関してはチアキさんも秘匿すべきだろうという意見だったので、ルイスさん達にも内緒で行うことになりました。

 聖属性の魔石は、ダンジョンのボス宝箱から時々出るくらいで、氷属性の魔石よりも高値で買い取られる。というより、オークションでの目玉商品になる。

 ベニ婆ちゃんのお話では、聖獣のもつ魔石だけが聖属性の魔石と言われており、それを目的に聖獣狩りをしようとした馬鹿が過去にいたんだと。神様の伝言役を魔石目的で殺そうとするとは、人の欲望ってヤベエと思うけど、例の戦争が沢山起きていた時代だというから、本当に混沌とした時代だったんだろう。
 ベニ婆ちゃんたちの寿命が延びた頃から、ダンジョンで聖属性の魔石が出るようになったというから、きっと創造神様が聖獣狩りをしないようにしたんだろうね。
 ん? という事は、ダンジョン様は創造神様が担当してるのか? 三つ子だって言ってたし、分担してたりするのかしら。

 まあ聖獣の魔石の属性はさておき、聖属性持ちのヒトなら頑張れば作れるって事で、浄化の魔道具を作ることにしましたよ。

「常に身に着けておいた方が良いからな、ネックレス、指輪、腕輪、ピアスが良いだろうな。そういえばヴィオのそれは魔道具だろう? どんな魔道具なんだ?」

 魔道具作りには興味がない白雪さんは、魔石に魔力を込める練習を頑張ってます。魔力をぶち込み過ぎて屑魔石が受け止めきれずに粉々になるという事を繰り返していますが、頑張ってください。
 同じく粉々にしてしまうチアキさんは、魔力を移すのは白雪さんにお任せして、魔道具作りを手伝ってくれるようです。
 そういえばここに来てからずっとつけっぱなしだったイヤーカフ。聞かれることもなかったし、倒れていた時に外されてもなかったね。

「これは色変えですね。私の母さんの髪色と、父さんの目の色が珍しかったので、両方変えられるようにしてたんです。こっちが目の色、こっちが髪色を変えてます」
「なるほどな、同じ魔道具だと思っていたが、そういう理由だったんだな。同じ色に変えてるんだったら、ひとつにまとめればどうだ? そうしたら浄化の魔道具をイヤーカフにできるだろう?」

 確かに、それができれば非常に楽だと思うけど、ドゥーア先生のお屋敷で練習した魔法陣の数々を思えば、複雑なやつを書けるとは思えない。

「纏めるのも考えたんですけど、一つの魔法陣では入れられないでしょう? 複数の魔法陣を重ねるのは物語の中だけって……」
「大丈夫大丈夫、練習あるのみってな」

 あ、何かスイッチを入れてしまったみたいですよ。
 ニッコリ笑うチアキさんだけど、組手の時もまだまだ行けると分かった時はこの顔をしていた事を思い出す。まあ、私も作れるようになるのは嬉しいから頑張るけどさ、お手柔らかにお願いします。


 鬼教官チアキさんとの魔法陣のお勉強会は、チラリと覗きに来た白雪さんも、ベル君もすぐに居なくなるほどひたすら図形を書き続けております。
 ルイスさんが一緒にいるから何とか頑張れてるというのが実情です。

「一つだけならまだしも、重ねることで図形がずれてしまいますね」
「うぐぐ、コピーできればいいのに」
「印刷技術はあるけどなぁ。魔法陣には使えないぞ。インクもだけど、書くときの魔力も重要だからな。そんなに簡単に魔道具が量産されるのは駄目って事なんだろうな」

 グヌヌとなりながらも、ひたすら図形を書く毎日。
 ドゥーア先生のお屋敷での勉強会が懐かしいですよ。複数の効果をもたらせるには魔法陣を組み合わせれば良いだけだとチアキさんは言う。
 そうは言うけど、一つの魔法陣が丸と三角と四角が入り混じっているのだ。そのうちの小さな丸を重ねながら、別の魔法陣を組み合わせるのはなかなか難しい。今は基本の三角魔法陣を組み合わせるだけの練習なんだけど、それでも重ねた方の三角が正三角形ではなく、二等辺三角形になってしまうのだ。

「あっ! チアキさん、私良い事を思い付きました!」
「はい、ヴィオくん、どうぞ」

 思わず挙手すれば、乗ってくれるのがチアキさんですよ。
 丸を書くときにコンパスを使っているんだけど、これってステンシルにしたら良くない? 特に今は同じ大きさの三角魔法陣の組み合わせなんだから、丸く切り抜いたステンシルに合わせて書けば同じ丸は簡単に書ける。その中に三角を入れるだけなら難易度は下がる。

「ヴィオ様、それは素晴らしいですね、どうせなら三角も同じように作りましょう」
「ヴィオは頭が柔らかいなぁ。やってみるか」

 これに関してはコンパスじゃないと駄目という事は無かったようです。という事で、早速厚紙が用意され、コンパスで丸印を一つ、同じ丸をもう一つ書いた中に三角を一つ、三角の先に付ける小さな丸もついでに描いていく。
 これを小さなナイフで切ってくれるのはチアキさん。フィギュア作りが趣味だっただけあって、細かい作業は得意だという事で、刃の大きさ、薄さが色々ある小刀でカリカリと器用に切ってくれました。

「これ、透明の板とかがあれば良かったですね」
「確かにな。小さい丸は自分で書く方がずれないぞ」
「最初に三角から書いた方が良いですね」

 羊皮紙に書くところで、白い厚紙では下が見えずに合わせるのが難しいことが判明した。いや、誰か気付けよって話なんですけどね、まあ仕方ない。
 三角を書いてから丸印を重ねるなら、三角が見えるので綺麗に書くことができた。ただ、二つ目の三角を書くときに、最初の図形が見えないのは致命的だったんだよね。

「まずはこれでも効果があるのかを試してみませんか?」
「そうですね。これで効果があるのが分かれば、透過する何かを探しましょう」
「そうだな、確か昆虫の羽素材があった筈だから、あれが使えるか試してみればいい」

 完全に透明でなくてもいいもんね。チアキさんは素材が入った棚をゴソゴソしながらその素材を探している。昆虫の羽といえば、窓ガラスになる虫の羽もあるって言ってたもんね。そんな感じのやつなのかな?
 魔法陣は問題なく発動できたので、透明素材でステンシルを速攻で作ったよね。
 お陰様で、二個、三個の図形を組み合わせた複雑な魔法陣も書くことは難しくなくなり、片耳分のイヤーカフに髪色と目の色を変える魔法陣を入れることができました。
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