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エルフの里
第456話 エルフの里へ
しおりを挟むギルドから手紙と魔封箱を送った三日後、ドゥーア先生から大興奮が溢れ出しているような感謝の手紙が届いた。手紙も箱も開封されることなく先生の元へ届いたことに安心した。
お兄ちゃんたちは、モフッコの為にこないだ踏破したばかりのダンジョンに再挑戦しに行っているらしい。土の三か月目に一度地上に戻ったようだけど、毛とカボスをもう少し採集しておきたいという連絡があったようで、一度目に確保した毛と大量のカボスは郵便ギルド経由で先生宅に送り届けられたとの事。
他のダンジョンにもモフッコがいるかどうか分からないもんね。まずは現時点での素材で実験を進めて欲しいという希望だったんだと思うけど、上級のBランクという結構危険なダンジョンに嬉々として潜るお兄ちゃんたち、やっぱり凄いよね。
で、今回の先生からの手紙には、三度目の踏破をしたお兄ちゃんたちが王都に戻ってくるから、お兄ちゃんたちの分はすぐにでも渡せるという事だった。
〔土竜の盾〕の皆は、メネクセス王国でのフィルさんから頼まれていたお仕事が終わったので、ドゥーア先生の元に向かっているというから、とても良いタイミングだったみたい。
「あの魔封箱があれば問題ないと思っていたが、無事に届いて良かったな」
「はい、ありがとうございました。チアキさん、私もあの箱を作れるようになりますか?」
今すぐに必要な訳ではないけれど、できれば作れるようになっておきたい。何かあった時にあれば便利そうだもの。
「そうだな、エルダートレントの素材がほとんど残ってないから……、ああ、丁度良いかもしれん。ヴィオ、エルフの里に行くか? イブから村の連中も色々できるようになったから、布とチョコレートの確認をして欲しいって連絡があったんだ」
「おぉ! エルフの里! 行きたいです!」
丁度良いというのは、エルフの里から近いダンジョンにエルダートレントが生息しているからだって。それはぜひ行かなきゃですね。
ベル君のご両親も、エルフの里に行くことは許可をしてくれた。ダンジョンに行くのは心配していたけど、前回と同じで、タニアさんとバレンさん、ダルスさんもついて来てくれるし、今回はマムさんとイブさんも多分一緒に潜ることになる。どんな魔境に行くつもりだと言いたくなるほどの戦力だけど、親の心配というのはそういうので安心できるものでもないのだろう。
諸々の準備を整え、タニアさんたちも村に到着した翌日、私たちはエルフの里に旅立った。
いや、旅立ったとか言っても数時間で到着するんですけどね。今回も勿論ドラって行きました。マジでドラゴンって反則だと思います。
エルフの里は、ミケさんの生まれ故郷であるカッツェの村から近いと言っていたけれど、山を三つは越えるので唯人や飛べない人からすれば近くはない。
エルフの里は山と山の間、谷間にあるというけれど、示された場所は木々がモッサモッサとしているので、谷間かどうかは全く分からない。
しかも開けた場所が無いからドラゴンのまま降り立つことはできそうにない。
どうするのだろうとルイスドラゴンの上で考えていたら、チカチカと森の一部が光っているのに気付いた。
「おお、準備ができたみたいだな。じゃあ行くか」
チアキさんがそう言ってバレンさんの背中から飛び降りた。白雪さんもそれに続くように飛び降りるんだけど、ココかなり上空ですよ?
いや、モフッコの時にもやってるから安全に降り立つことができるのは経験済みだけどさ、相変わらずチアキさんは説明が足りないと思います。
「ルイスさんたちはどうするんですか?」
「我々も人化して降り立ちますよ。ヴィオ様は一緒に行きましょうか?」
空中でも人化できると聞いて安心したところで飛び降りる。
まるでパラシュートなしのスカイダイビング。お腹がヒュッとする感覚は一瞬で、自分に風を纏わせて落ちる速度を調整する。
上を見れば大きなドラゴンの姿は消え、大人たち四人と子ドラが一匹。どうやらベル君は空中人化ができないようで、ダルスさんに抱きかかえられています。大人しく羽を畳んでダルスさんにギュッと抱き着いている子ドラは超絶可愛いです。
チアキさんが落ちて行った場所を目指して風を調整しながら下りていけば、森だと思っていた一部は幻影だったようで、木に当たることなく降り立つことができた。上を見上げれば空が見えるし、不思議な場所だ。
すぐにルイスさんも降り立ち、子ドラのベル君も少年の姿に戻った。
「この地は精霊が多いな、流石エルフの里という事か」
ダルスさんの言葉に周囲を見れば、キラキラと光が飛び交って見える。森の木漏れ日かと思ったけど、よく見れば縦横無尽にアチコチ動いている。視力強化をしてジッと見つめれば、蝶や小鳥、マリモみたいな丸いモノ、小さな人など、半透明な何かが沢山いた。
『あらあら、ヒトの子で私たちの姿が見えてるみたい』
『こっちはドラゴンよ、久しぶりにドラゴンを見たわ。この子はドラゴンの子供ね、もっと珍しいわ』
『この子は久しぶりだ』
『この子はこないだ来た所よ』
小さな半透明の存在は、私たちの近くに集まってクルクルと周囲を飛び回っている。
「偶の客人だからと集り過ぎだよ。やあ皆、待ってたよ」
『いいじゃない、外から誰かが来るなんて珍しいんだから』
『そうよそうよ、私たちだって珍しい話を聞きたいわ』
イブさんが手をあげて近付きながら、周囲の存在を手で払う仕草をすると、黄色い存在は木に吸い込まれるように消えていき、茶色い存在は土に溶けるように消えてしまった。
さっきからお喋りしているのは緑色と、白っぽいキラキラした存在だったんだけど、この子たちは人っぽい姿を持っているからお喋りができるのかな?
「好奇心旺盛なのは良いけど、好奇心は危険と紙一重なんだからね。
ごめんね、風と光の精霊たちは君たちが来ることを知ってから興味津々でね、ちょっと煩いかもしれないから【サイレント】をかけてくれてもいいからね」
「精霊……?」
「精霊って喋るのか? 俺全然聞こえない」
精霊と言う存在に驚いたけど、そういえば白雪さんに教わった神話には《精霊は自然と共に生きられるように、彼らの側にはそれを護れる優しき守り人(森人)が過ごせるようにした》って習った気がする。
そしてベル君には精霊の声は聞こえていないらしい。姿はぼんやり見えているという事だったので、ルイスさんに教わりながら、視力強化と聴力強化をしたら聞こえるようになったみたい。
精霊は人嫌いだと思っていたけど、そうでもなかったらしい。私たちの肩や頭の上に陣取って、イブさん先導で進んでいる森の中をアレコレ説明してくれている。
『上から見たら分からなかったでしょう? あれはね、木の精霊たちと、私達光の精霊が協力して森が続いているように見せてるのよ』
『木や土の精霊は静かな子たちが多いの。火の精霊は村にいるわ。あの子たちは火の近くが好きなのよ』
『ほら、あそこにいるのがカプラよ。カプラは時々木の精霊を草と一緒に食べちゃうの』
あれは何だ、これが何だと聞かなくても説明してくれる精霊さん。大人はおざなりな返答しかしないからか、一つずつに感激する私とベル君に全ての精霊が集まってきた。元々飛んでいた精霊だから、どれだけ肩に座ろうが重くはないけど、順番にみんなが喋ってくるのは流石に賑やかすぎる。
どうしよう、精霊って神秘的な存在の筈なのに、世話好きのおばちゃんみたいに見えてきた。
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