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特級ダンジョン ウミノトモ
第461話 ダンジョン発生地点へ
しおりを挟むルイスドラゴンの背に乗ってほんの少しで目的地に到着した。
最近は四六時中キャイキャイしていた肩が静かで少し寂しい。
『また戻ってくるのよね?』
「うん、あれ? でも一緒に行けないの? 森から出れないの?」
『森からは出られるわ。でもダンジョンには入れないの』
てっきり一緒に行くものだと思っていたのに、精霊たちは下りてきた時と同じ森の切れ間まで到着したところで寂しげに離れてしまったのだ。
「ダンジョンは異空間になるからな。あっちも魔素が濃いから入ってしまった精霊は出てこれんようになってしまうんじゃ。魔素が薄すぎる場所では形を保てんから、例の結界の国には精霊は存在できん。
魔の山にはそれなりにおったが、危険な魔獣に喰われることもあるから聖域に集まっておったな」
物理的に食べられるという訳ではなく、良質な魔素の塊でもある精霊は吸収されちゃうんだって。ダンジョンに入ることはできるけど、出てこれなくなるのは困るよね。寂しいけど、オカン精霊が消えちゃう方が寂しいからお留守番をお願いしますね。
そんなお別れをしてから飛んできたんだけど、川の近くと言うよりも、川の中に半分大岩が埋まっていて、その大岩の一部に見慣れた黒い穴がある。
そういえばヒスの森も岩が入り口だったな。
その岩がダンジョンだと分かったのは、その周辺に超沢山人がいたからだ。見物人なのかな?
ドラゴンが三体、フワリと降り立つ時には皆が警戒していたけれど、チアキさんとイブさんが最初に降り立った事で、ホッとした空気が流れた。
「チャーキ様、それにイヴォンネ様まで! お二人にご一緒頂けるとはありがとうございます」
「ああ、偶々エルフの里にいる時だったから同行してもらった。それで、この岩がそうか?」
「左様でございます。今週初めにカッツェ村まで行こうとするときに行商が気付きまして――」
私達を中心に、ワラワラと大人たちが集まっているんだけど、チアキさんに説明しているのはこの近くにある町の冒険者ギルドのギルマスらしい。
イブさんは最初に挨拶をしたきり話をするのはチアキさんに任せて私の隣にいる。チアキさんと大人たちが話している内容を説明してくれるのは助かるんだけど、多分あっちと喋るのが面倒って感じなんだろうな。
見たことのある猫獣人はカッツェ村の村長で、岩が川に半分入っている事で大雨が降った時に橋が流されるかもしれないから怖いのだと訴えている。
昨日今日見つかった訳じゃないというのは、この一週間で冒険者たちが挑戦したからだということだった。彼らで踏破することができていればチアキさんに連絡が来ることはなかったんだろうけど、無理だったからヘルプコールが来たって事なんだね。流石勇者。
「特級ダンジョンだしな、入った連中からも話を聞きたい。中の様子、敵の強さや特徴、ドロップアイテムも分かる部分だけでも教えてくれ」
「はい! 〔雷撃の剣〕金ランク初級マカードです!
フィールドは砂浜と海でした。入ってすぐは踏み固められた砂地ですが、奥に行けば行くほど深い砂地となっており、動きが制限されるようになります」
「〔雷撃の剣〕魔法担当のマーラです! チャーキ様にお会いできて光栄です!
中の魔獣ですが――」
何とかの剣ってパーティー名は何度か聞いたことがある気がするけど、冒険者に人気なのかね。何かキラッキラした目でチアキさんの近くで待機していた人達が、一人ずつ名乗りながらダンジョンの様子を語ってるけど、なんだろう、アイドルの握手会を見ている気分になるね。
「イブさんってチアキさんとコンビで活動してたんですよね? その時のパーティー名って何だったんですか?」
「つける訳ないじゃん。チャーキは付けたがってたけど、由来を聞いたら何か格好つけすぎてて恥ずかしかったから止めさせたよ」
ああ、厨二呪文をあれだけ考え付いたチアキさんだもんね。ドラゴン系の名前を付けてそうだけど、ドラゴンとはお友達だから付けなかったのかな。
もう昔の話だからとイブさんが教えてくれた名前は、中々尖ったお名前が多かったです。
〔翠魔の救済〕はまだしも〔ドラゴンブレス〕は無いと思いますよ、チアキさん。
当時はドラゴンに出会う前だったからそれが案に上がったんだろうけど、付けなくて良かったと思います。
あ、そうそう、チアキさんに報告しているナンチャラの剣さん達ですが、この近くにある〖フセツの町〗のトップ冒険者なんだって。
こっちの大陸の冒険者ランクがリズモーニとどれくらい違うのか分からないけど、金ランクって事は土竜の皆と同じくらいって事かな?
最初に挨拶をしていたリーダーは狼獣人で、狼率60パーセントくらい。リズモーニでお会いしたことのある狼獣人さんが20パーセント(耳と尻尾だけ)だと考えれば、その濃さが分かるだろうか。
モッフモフですよ、モッフモフ。槍を背負っている女性も狼獣人だと思うけど、彼女は20パーセントのスタンダード狼獣人なので面白みは無い。まあ手足がモサモサなのは女子的に嫌なのかな?
いや、でも魔法使いの男の人は狐率20パーセントだから、リーダーだけ特別なのかもしれないね。
「イブさん、あの回復の人はエルフですよね? あっちの魔法使いの女の人は何の獣人さんですかね」
「ああ、魔人族じゃない? チャーキもそうだけど、ヒト族と見た目が一番似ているのは魔人族だしね、この島にヒト族は多分いないと思うから、魔人族だと思うよ」
ヒト族がいない? 全くいないのだろうか。
いや、考えてみれば迫害された人たちが移り住んできたこの大陸だもの、いなくても当然なのかもしれないね。となれば私ってかなり特殊な人になっちゃわない?
「ヴィオの場合は種族云々が無くても特殊だからね」
フフっと笑いながら頭を撫でられたけど、それって褒めてませんよね?
チアキさんは、ナンチャラの剣からの話を聞いた後、ギルマスと報酬の話に移っている。
・ドロップアイテムは私達が総取りできるけど、買取ができるものがあれば買い取りたいから教えて欲しいとはギルマスと行商人からのお願い。
・ダンジョン踏破の後、ダンジョンコアは破壊して良い(というか破壊してほしい)達成した時の報酬は1ダリル(金硬貨一枚=100万ラリ)。
これが安いのか高いのかは分からないけど、イブさん曰く中身総取りで買取ありなら高い方だとの事。ドロップアイテムでも稼げるからって事なのかもしれないね。
・ダンジョン内の情報も多少安くなるけど買取するから持ち帰れる物は持ち帰ってほしい。
その他諸々取り決めをして書類にサインをする事になったけど、こういうのってギルドの会議室とかでやるんじゃないんだね。全部大岩の前でやっちゃいましたよ。
勿論サインをするためのテーブルは、チョチョイと白雪さんがテーブルを作りましたよ。
ちなみにバレンさん、ダルスさん、ルイスさんは最初から我関せず状態で、集団から少し離れた場所に今夜の野営地を設営中です。
チアキさんの話が気になっていた私と、チアキさんを気にしている白雪さん、私を心配して一緒にいてくれたイブさんだけが集団の近くで待っていた状態です。
「さて、ではこれで決まりだな。俺たちは明日からダンジョンに入る事にする。特級ダンジョンは踏破日数も読めないが、終わったらギルマスに伝達魔法を送ろう。受け取りはできるか?」
話が終わったらしいチアキさんの声で周囲の冒険者以外の人達がホッとしたように胸を撫で下ろしている。まあ今は問題なくても大雨とかで橋が流されたら困るもんね。
踏破後、そのまま町に向かってもいいとは思うけど、お金の準備とかも必要だもんね。伝達魔法は受け取れますとギルマスが言ったところで解散が告げられた。
「あのっ! 俺達も明日からのダンジョンに同伴してもよろしいでしょうか」
さて野営地に向かおうと思ったところで、60パーセント狼さんから声をかけられた。イブさんは全く気にせずに私と手を繋いで歩いているから、私もついて行くしかないんですけどいいんですか?
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