ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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スワンプの森ダンジョン

第478話 スワンプの森 その4

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 思った以上に見た目が気持ち悪かった蛙たち。
 どうやら最後に出てきた草まみれのアレは、グラスモストードの変異種で、ロンググラストードというらしい。
 湿地帯に時々現れる奴らは草に紛れて、自分の身体に生えている草を伸ばして敵を絡めとり、沼地に引きずり込むという攻撃を行う。
 グラスモスの舌には痺れる成分があり、捉えた獲物を動けなくさせている間に獲物の身体に卵を産み付けるのだ。
 宿主から栄養を吸収して成長するので、卵が孵るまでは獲物に死なれては困るそうで、死ねないように生かされるというのもエグイ。
 一週間ほどで孵ったオタマジャクシは、衰弱した宿主を食べ尽くして最初の食事とするんだって。
 なんか、蟷螂《カマキリ》を思い出すよね。あれも交尾が成功した時点でオスはメスに食べられて、子供が生まれたらメスは子供達に食べられるんじゃなかったっけ。
 あれ? そういうラノベだったかな? 忘れちゃった。

 白雪さんは、うっかりその寄生された卵が孵るところを見たことがあったらしく、うつろな目で「助けて」と言われたのがトラウマなのだそうです。
 そりゃ蛙が無理になっても仕方がないと思います。
 蛙はグラスモストードだけではなく、魔獣の蛙がそのような生態だそうで、湿地帯では気を付けようと思います。

 お兄ちゃん達大丈夫かな……。
 いや、サブマスが凍結魔法の練習をしているのが蛙大量発生地点って言ってたし大丈夫だね。

「そっか、そんなのを見たことがあるなら、蛙のお肉は止めておきましょうか」
「いや、美味《うま》いんじゃったらそれで克服できるかもしれんじゃろ? 不味かったら関わる気はないが、美味かったら今後は我も討伐をして殲滅するぞ」

 食い気の方が勝ったようです。
 まあ見たことがあるというのも、子熊時代の話だというし、今の白雪さんが蛙ごときに負けるとは思えない。
 という事で、ベル君チームには連絡を飛ばし、私たちは先に安全地帯に向かうことにしましょう。
 とりあえずお昼ご飯は蛙肉の調理です。


 ドロップアイテムのお肉は、足付きのものと、丸々太った鶏肉にしか見えないものの二種類ありました。
 安全地帯に来るまでにも、あのあたりが蛙ゾーンだったのか、かなり討伐できたので肉は大量にありますが、どうしましょうかね。

「ヴィオ、どうする?」
「こっちの足が付いているのは揚げ焼きにするのと、肉餃子にしようと思います。大きいのはから揚げと、炒め物で使ってみようと思います」

 学校の解剖で使ったことのあるゲコっとなった開き蛙ではないので、多分気付かないのではないかと思うくらい、大きな肉は普通なのだ。
 なので、味の違いに気付くかどうかも含めて、食べ慣れているから揚げを作ろうと思う。
 翼人族メンバーがいるから、炒め物は中華風に少し辛く仕上げれば喜んでもらえるかな?

「ふむ、肉餃子というのが気になるな」
「じゃあ一緒に作りましょう。から揚げは白雪さんにお願いしても良いですか?」
「うむ、それなら我も作れるようになったからな。任せろ」

 腕まくりをしてやる気満々なので、お任せしますね。
 必要な材料は取り出して、テーブルの上に並べておきますよ。
 さて、私はマムさんと足付きのお肉でチューリップを作って行こうと思います。

「ちゅーりっぷ? 肉餃子ではなくてか?」
「ああ、チューリップっていうのは、形の事ですね。お花の種類なんですけど、こうして足があって、この辺の筋を切って――」

 余計な骨がない分非常にやりやすい。鶏肉でもやりたいけど、ココッコはデカすぎるし、ドロップアイテムに手羽元は出てこない。
 マムさんは私の手元を真剣に見つめているので、ゆっくり丁寧にやって見せる。

「――ここまで出来たら骨についている肉を引きはがしながら、最後にひっくり返すんです。そうしたら花みたいでしょう?」
「おお! 花には見えんがこれは食べやすそうだ」

 うん、まあそうだよね。こんな肉の花が実際に咲いていたら恐怖である。

「これに味付けをして揚げ焼きにするのと、この中に餃子の中身を入れて揚げる肉餃子を作ろうと思うんです」
「成程な、では私はこれをひっくり返すのをやってもいいか? 練習が必要そうだ」

 ということで、チューリップを作るのはマムさんにお願いし、私は餃子の中身を用意することにしました。肉種はそんなにいらないけど、どうせ作るなら普通の餃子用に種は沢山作っておこう。
 チアキさんは餃子も好きだから、包むのは得意なんだよね。

「おお、餃子の皮も少なくなってきてたしな。俺は皮を作ろうか」

 何も言わなくても餃子の皮を作り始めてくれるチアキさん。
 米が見つけられなかった分、小麦粉で出来ることを色々挑戦していただけあって、小麦粉使いの達人になっているのだ。

 餃子の種が山盛り出来た頃にベル君たちも合流し、お手伝いの人員が増えた。
 チューリップに入れる分だけ先に貰い、残りはタニアさん、ルイスさん、ベル君、翼人族の三人も揃ってチアキさん指導の元、餃子を包んでくれている。
 一体何個作る気なのか知らないけれど、しばらく餃子は作らないで大丈夫そうだね。

 チューリップ餃子の種はかなり味付けを濃い目にしたので、タレを付けなくても美味しく食べられるようにした。餃子の種が入っていないものは、肉の味を確認してもらいたいという本来の目的のため、塩コショウ、リーガ(にんにく)での味付けだけにしておいた。
 揚げるのは白雪さんが既にから揚げを作っているので、それが終わったらお願いしておいた。

「残りのそれはどうする?」
「これは、ちょっと辛い味付けにしようと思います」
「なにっ!? 辛いのもあるのか?」

 反応が良すぎますが、楽しんでもらえればと思いますよ。
 普通の料理はそんなに得意じゃないという事なので、今は餃子を頑張って包んでくださいませね。

 蛙の肉とは思えない程、プリプリしたピンク色の肉を食べやすい大きさにカットし、マルネギ玉ねぎを櫛切りに、ナガネギ白ネギは白髪ねぎにカットしていく。

「ナガネギが使えるとは思わなかった」
「緑ナガネギの方が有名ですもんね。でもナガネギは焼いたら甘みがでるし、緑ナガネギとはまた違った美味しさがあるんですよね」
「うむ、ヴィオはよく知っているんだな」

 お母さんに教えてもらったんです。と言ってから、そういえば勇者に教えてもらったという事にしろと言われていた事を思い出す。
 う~ん、だけどここには今勇者がいるし、それは使えないよね? 
 そのあれは、あっちの大陸に戻ってからという事にしよう。そうしよう。

 気を取り直し、熱したフライパンに黄色い花油菜種油を入れる。潰したリーガニンニク、マルネギを加え、オレンジのハズレ袋から豆板醤を選んでフライパンに入れる。

「む、一番辛いのを入れるのだな」
「今日は辛い物を作りたかったのでそうなんですが、他のソースで試しても良いと思いますよ」

 メモを片手に時々味見をしながら、隣で同じ材料を入れたフライパンを振るマムさん。真面目なんですよね。
 マルネギが透明になってきたところで、蛙肉を入れてさらに炒めていく。
 中華料理だったら、ここで紹興酒を入れたいところだけれど、ないから料理に使っている酒で代用だ。
 醤油、オイスターソース、砂糖も入れて、更に混ぜながら炒めていく。

 私は重たいフライパンを振れないので、揺すりながらヘラで混ぜるしかできないけれど、マムさんは豪快にフライパンの上で一回転させるように炒める事が出来て格好良い。

 グゥゥゥゥゥゥ

 あちこちから空腹の音が鳴り響いてきたので、完成という事で良いでしょう。
 餃子はマジックバッグに収納され、山盛りのスタンダードなから揚げ、チューリップのから揚げ、チューリップ餃子、ピリ辛炒めをテーブルに並べていく。

 ご飯は炊いてないから今日はパンだね。
 もう皆目の前の肉しか見えていないけれど、味の確認でもあるからね、食レポお願いしますよ。
 では、いただきます!
  
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