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スワンプの森ダンジョン
第479話 スワンプの森 その5
しおりを挟む「「「いただきます」」」
パンと揚げ物、炒め物、大きな野菜はピリ辛炒めに入っているマルネギとナガネギだけだと気付いて焦るけど、まあ昼食だし良いかな。
夜は野菜たっぷりスープとお浸しを作ろうと思います。
どう見ても新作なチューリップとピリ辛炒めに皆興味津々で、自分たちのお皿に速攻取り分けています。まだこの肉の正体をベル君チームには伝えていませんが、正体を知っているうちのメンバーも普通に取り分けているのは怖いもの見たさみたいな感じかな?
まずはスタンダードなチューリップから一口。
ジュワっと肉汁が広がり、熱さに火傷しそうになるけど、うん、美味しい。
兎肉に似ているかもしれないね。鶏肉より少し噛み応えがあるけれど、私は柔らかすぎるお肉よりも噛み応えのある肉の方が好きだから、このお肉は美味しいと思う。
餃子の種を詰め込んだものも食べてみよう。
「んんん~!」
濃い目の味付けにしていたから、タレが無くても十分美味しい。臭みがなく淡泊な肉だからこそこの食べ方が大正解だと思った次第。
「これすげえ美味い!」
「本当だな、ほかのやつも全部肉餃子で良かったくらいだぞ」
ベル君も、チアキさんも気に入ってくれたようですね。
「もっと辛くても良いが、これも美味いな」
「この肉は村から持って来たのか? ラビットに似ているが此処にはいなかったよな?」
カエリアンさんがピリ辛炒めを食べながら、私に質問してきたんだけど、全部食べ終えてからの方が良くないですか?
「トードじゃな。その辛いのに使っとるのはロンググラストードで、そっちの足付きのはモストードじゃ。これは大量確保をしておきたいな」
チューリップを両手に持って、嬉しそうに食べている白雪さんが、何でもないように肉の正体を告げちゃったけど、ベル君以外の大人たちが固まってしまいましたよ。
「え? ロンググラストードって、あの気持ち悪いやつ? 草まみれのあれ?」
「それって、あれよね。イブが草むらに火をぶち込んでた……」
「あのトードが……美味いだと!?」
イブさん、タニアさん、カエリアンさん、三者三様の反応ですが、あれかな。イブさんは蛙の姿を見るのも嫌で、いるのが分かった時点で殲滅してたって事ですね。
勿論ドロップアイテムも放置してきたという事なのでしょう。残念です。
狩る気満々になっているベル君に、イブさん達がトードの危険性をしっかり説明しています。
大人の竜人族は問題なくても、まだフォレストウルフでもかすり傷を負うベル君だからね。トードの攻撃も通る可能性は高い。流石に寄生されるという事は大人たちがいる限りない筈だけど、危険性は知っておくべきだと思う。
少々ブルっておりましたが、結界を常に纏う練習をしているからね、それをより意識して行動することができるでしょう。
全員が蛙肉に対して忌避感を持つことなく、逆に肉確保をしようと気合を入れ直してくれたので、大量の肉が確保できることは決まりました。
だからといって、チューリップ餃子を作るのは大分先になりますからね。今夜は野菜三昧メニューにするつもりですよ。
昼食後は二階層の後半を探索。
マムさんの案内で釣りスポットに到着し、池ごと取り囲むように白雪さんが聖結界を作ってくれたので、安心して釣りを楽しめそうである。
「海よりは大人しいが、相手は魔魚だからな、それなりに攻撃もしてくる。気を付けるように」
マムさんが釣竿を渡してくれて、足場が安定している場所を教えてくれた。
土魔法で小さな椅子を作って釣り糸を垂らしてしばらく待ってみるけど、竿は静かで糸も揺れない。
隣を見ればマムさんは目を閉じて瞑想をしているように見える。
釣りをするには精神集中とか聞いたことがあるような気がするけれど、ここがダンジョンでなければそれが正解なのかもしれない。
今までマムさんは時々一人で釣りに来ていたと言っていたけど、壁も作らず集中していたら敵に襲われたんじゃなかろうかと心配になるね。
「思ったより食いついて来んのだな」
「つまらんのぉ」
はじめて五分くらいだけど、既に飽きてきた様子の勇者夫妻。
流石に早くないですかと言えないのは、私も来ないなーと思っていたからです。
「あっ! マムさんちょっとだけ試したい事があるんですけど良いですか?」
「うむ、何だろうか。危険が無ければやってみれば良い。ここで釣れなくともまだまだ釣れる場所はあるからな」
許可をもらったので、マムさんに借りた竿を引き上げて、自分の腰に巻いた鞭を取り出す。木の魔力を流せば鞭の先端から蔦がスルスルと伸びて池の中にポチャンと落ちた。
魔力は止めずに、蔦に纏わせるようにしておけば、水面がバシャバシャと波打つほどに魚が集まってきたのが分かる。
「ほぉ、ヴィオの鞭は魔法武器じゃったな。魔魚じゃから魔力で呼び寄せておるのじゃな」
「成程な、だったら俺も蔦を出すか」
鞭の先端だけでなく、途中にも魚が食いついているのが分かり、鞭をグインと持ち上げれば、丸々と太った良い魚が大量にくっ付いていた。
直ぐに理解したチアキさんも、蔦魔法で作った蔦を池の中に垂らしている。
「ヴィオ、それらは魔魚だ、攻撃が来るぞ」
「おぉ、あ、そっか! 【ウォーターウォール】」
豊漁に喜んでいたら、マムさんから注意が飛んできた。そういえばそうでしたね。
蔦に食いついたままの太った魔魚は、私という獲物を見つけた途端、ヒレをブワリと拡げて鱗を飛ばしてきた。
少し細い白っぽい魔魚は身体をくの字に曲げて、水魔法を飛ばしてきた。
青みが強い魔魚は背ビレを立ち上げて、棘のようなものを飛ばしてきた。
慌てて水玉で包み込んだけど、水の中で生きている相手にこれは効果が無かったですよね。
相手の攻撃は水玉の中にプカプカ浮いているので、まあ防御としては正解だったけど、攻撃としては失敗です。
水玉の上に風の玉をかぶせてから、水玉を解除。突然安全な水中から放り出された魚たちは、再び攻撃を仕掛けようとしてくるけれど、既に私の盾の中。攻撃は外に出てきません。
「どうするつもりだ?」
興味深そうにアリオールさんが聞いてくるけど、どうしようか迷ってるんだよね。色々試してみたいけど、魔魚ってもう魚でしかないから調理工程しか思い浮かばんのよ。
「ならそれでいいんじゃないの? 変わった魚とかは海系のダンジョンに行けば会えるんだし」
リザンドロさんの言葉に納得。
という事で風の盾の中でビチビチするしかない状態の魔魚三匹の頭を落として終了です。
太った魚が飛ばしてきたのと同じ鱗が数枚と、魚の切り身をドロップアイテムとして頂けました。
「流石にこの大きさの魚だと切り身も小さいですね」
「そうだな、量を確保しておくか」
スーパーで売っていた魚の切り身一人分、それくらいの大きさのドロップアイテムは、こないだの特級ダンジョンで手に入れた魚との差が酷くて悲しい気分になる。
いや、自分で捌かないでいいというだけでありがたいと思えって話なんですけどね。でも、大食感が多いですから、量も必要なんですよ。
魔力に魔魚は寄ってくる。
これはマムさんも考えたことが無かったらしく、天啓を得たみたいになってたけど、ここから先がどうなったのかはご想像の通りって事ですよ。
イブさんにも直ぐに伝達魔法で伝えられ、あちらでも蛙討伐隊と、魔魚確保隊に分かれて大量確保に動き出したと報告が飛んできました。
おかげさまで、二日目の夕食は魚の煮つけ、魚の塩焼き、魚のフライ、各種野菜のお浸し、野菜たっぷりお味噌汁というお魚と野菜三昧になりました。
全く泥臭くない魚は、非常に美味しく頂けました。ごちそうさまでした。
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