ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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スワンプの森ダンジョン

第480話 スワンプの森 その6

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 低層階は湿地帯が続き、大量ではないものの野菜類の素材も確保できることが分かった。
 敵は蛙の他、蛇も増えたけど、お肉が増えたと喜ぶ人しかいないので、大した脅威ではなかった。

 ベル君と私が別行動なのは変わらないけれど、大人の組み合わせは一日おきに交代して動いた。私の使う魔法が面白いからというのが理由らしいけど、そんなに変わった事はしていないと思う。

 ダンジョンに入って二週間。
 五階以降は広さも倍以上になったため、二日かけて一階層をクリアするようにした。いや、素材採集と釣りをしなければもっと早く行けたよねって思いますけどね。
 ノンノン、ここはヒスと同じ、新しい素材の発見、素材の確保が目的だからね。ゆっくりいきましょう。

 という事で、今日は中ボスに挑戦する日です。
 大人の皆さんにご協力いただいて、まずは私とベル君でボスに挑戦する予定です。二人だけだと危険、もしくは倒すことが難しいようなら大人たちのフォローをお願いすることになっています。

「ベル行けそう?」
「うん、大分練習してきたし大丈夫だ。まずはヴィオの足止めからだもんな」
「うん、ベル君頑張ろうね」

 二人で頷き合う。ここの敵は巨大な蟹だとアリオールさんから聞かされている。

「立ってるだけだとヴィオよりは小さいけどな、足を立ててハサミを振り上げればかなり大きく見えるぞ」
「甲羅はかなり硬いからな、その剣では難しいと思った方が良いぞ」

 大人たちの助言に頷き、大きな扉に手を付ける。中には一緒に入るから、かなりの大所帯ですよ。
 バタンと閉まった扉、そして明るくなっていく室内。

「ええっと、どう見ても上位か変異ですね。止まってる現在でドラゴンサイズあります」
「まじか。俺達何回もここに潜ってるけど、レッドクラブ以外は初めてだぞ?」

 鳥目なのか、暗闇では見えないという三人だけど、変異だとすれば、私の引きの強さが原因かもしれないね。

「ベル結界と強化は」
「やってる」
「手伝うか?」
「まずは俺とヴィオで行く。ヴィオは大丈夫か?」
「うん、まずはやってみよう。大きいから足止めは氷にしておくね」

 私達の言葉に、大人たちは一歩後ろに下がった。
 しっかり明るくなったところで、ボスが登場演出として爪を振り上げた。

「冷凍ガニになれ! 【アイスフリーズ】」

 ボスが蟹と聞いてから、ボイルにするか、焼きにするかとメニューを考えていたのが駄目だった。
 甲羅部分で二メートルくらいの巨大蟹、足も一メートルくらいあるだろうか。
 しっかり凍らせようと思ったら、アイスよりも凍結の方が凍るスピードも早いんですよね。
 唱えた途端に両足の先端から白く変色していく巨大蟹、ピキピキという音と共に素早く凍っていくさまは早送りをしているみたいで見ごたえがある。
 キョロキョロと見回していた目も凍ったところで、チビドラに変身したベル君が上空からスピードを乗せて滑空、巨大蟹のお腹にグーパンチをぶちかました。

 ドーーーーン!

 ピキピキ ピキピキ 
 パリン
 ガラン ガラン 

 白い彫像にひびが入り、大きな塊が幾つか転がり落ちたところでキラキラエフェクトが出て終了した。
 正に瞬殺です!

「GYA GYA GYA!」
「いえ~い! ベル君やったね!」

 チビドラのまま、私の方にフヨフヨと飛んできたベル君とハイタッチ。
 ドラの時には人語を喋れないけれど、嬉しそうなのは十分伝わってきますよ。

 直ぐに着地して人になってから、もう一度ハイタッチをしてから振り返ったら、大人たちが凍っていました。じゃなくて、固まっていました。

「ルイス、どうだった? 前の鹿の時と同じ失敗はしなかったぞ」
「え、えぇ、ボアの時の攻撃を覚えていたのですね。即座に切り替えたのは素晴らしいですよ」
「チアキさん?」
「ふっ、いやぁ、この巨体にどうやって攻撃するかと思っていたが、驚いた。
 ヴィオの冷凍カニもそうだが、臨機応変に対応できたベルも素晴らしかったな」
「な、な、なんなの!? 何あの魔法! アイスであそこまで凍る? 冷凍ガニってなに!?」
「ベル坊~! 凄いじゃない!」

 固まっていた大人たちだけど、ルイスさんとチアキさんが褒めてくれたところで解凍されたようですよ。
 次々に褒めてくれて、ベル君はタニアさんに高い高いをされてキャッキャと喜んでいます。
 そして私はイブさんから、凍結魔法についてめっちゃ質問されていますけど、この魔法伝えてませんでしたっけ?

 宝箱からは、ウエストポーチ型の時間停止マジックバッグが一つ入っていた。これはマジックバッグを持っていないベル君の戦利品となったので、とても喜んでいるのが可愛い。
 他には蟹味噌、蟹の足(大量)、大量の野菜が入っていたので、ダンジョン様的には『カニ鍋を楽しみなさい』という事なのかもしれない。

「ヴィオ、ヴィオ、この鞄に俺もその飾りを付けたい」

 飛跳ねていたベル君が私のところに来て、鞄にワッペンを付けたいとお願いされた。
 どのワッペンを作るか聞いたら、水色竜と、ここにはないピンク髪の女の子を作ってほしいと言われた。

「だって、ヴィオの鞄にはヴィオがいないだろう? 俺の鞄に付けとけば寂しくないだろ?」

 だって。
 ちょっと、こんな可愛いお願いしてくるとかどうしてくれようか。
 ヒトの顔のワッペンか。ミケさんに相談して可愛いのを作れるように頑張ろう。
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