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スワンプの森ダンジョン
第485話 スワンプの森 その11
しおりを挟むヘッジホッグも各色四匹ずつはゲットし、米も備蓄米倉庫が必要になるレベルで回収し、肉、牛乳、卵なども十分に回収することが出来ました。
「食べ物の事しか言ってなくない? 結構皮とか、牙とか、鱗とか、毛とか、希少素材もそれなりに集まったよね」
イブさんのツッコミは聞こえません。
だって、今回のダンジョンは食材回収が目的だったんだもん。
「まあそれも大きいが、南部に販売できる素材があるかどうかの確認も兼ねてるぞ」
アリオールさんからもツッコまれました。
なんなの? 私といると皆ツッコミ属性になるの?
「ヴィオちゃんが可愛いから、皆が構いたくてしょうがないのよ」
タニアさんに撫でられて気を取り直す。
イブさんの呆れ顔は見ないふりですよ。私は褒められて伸びるタイプなのです。
「さて、今日はボス戦だな。ここはカプラの上位種だったよな?」
「確かそうだったと思う。俺たちも滅多にボス戦まではやらないから微妙だが、多分そうだ」
そうだよね。アリオールさん達は飛んでこれるから、目的のヘッジホッグ狩りをして、肉をゲットしたら飛んで戻る事が出来ていたんだもん、ボス戦をしなくても時短で帰ることができるんだよね。
今までにアリオールさん達が対戦したボスはトラゴッスという山羊の魔獣。
かなり険しい山にも生息するという魔獣で、大きさは一メートルから、大きいものだと二メートルになるという。牡は真横に広がる大きくて尖った角を持ち、牝はくるりと丸まった角を持つ。
前にベル君が戦ったケイブディアの牡と角の雰囲気は似ているかもしれない。
「ベルは牝の方をやらせてもらうか?」
「ううん、前の時に駄目だったから、今度こそ頑張りたい」
ルイスさんが二体出た時の対応をベル君に提案しているけれど、ベル君としてはあの時の雪辱を晴らしたいという事なんだろう。
雌雄で出てくるのかも分からないけど、色んな事態を想定しておくに越したことはない。
まずは私とベル君からというのは変わらないけどね。
ではいきましょう!
バタンと閉まった扉の中、見えてきた姿は一体だけ。
だけど聞いていたのとは明らかに違うと分かるのは、その大きさだろう。まさか二回連続での変異種ですか? それとも上位種ですか? どっちにしても特別っぽいですよ。
「これは、バクラの可能性が高いぞ。こいつは角から魔法を飛ばしてくるし、身体もかなり頑丈だぞ。二人が危険なら直ぐに俺たちが入るからな」
「「はいっ!」」
チアキさんが直ぐに相手を特定してくれた。という事は昔対戦した相手という事なんだろう。
ボックスタイプの軽自動車くらいある山羊の目つきは滅茶苦茶怖い。
そういえば山羊って悪魔とかデビルとかのイメージで描かれることが多いよね。
カプラの穏やかな雰囲気だと全く思わなかったけど、コイツの目つきはマジで何か召喚してきそうで怖いです。
登場演出時点でカカカンと蹄を鳴らしているところも、殺る気満々でやばいっす。
ああそうか。大陸と違って、唯でさえ人が訪れないダンジョン。
なのに入ってきたマムさんは低層階で魚釣りをするだけだし、翼人族はヘッジホッグを狩ればさっさと帰るから、この山羊さんの出番は殆どない。
きっと店に来たのに、試食だけして帰る客を何度も見ていた店長な感じなんだろう。
うんうん、それは怒ってもしょうがない。
って事は普通の山羊さんじゃなくて、ヘイト増し増しの変異種《バクラ》になってるのって、皆のせいじゃないですか?
完全に明るくなるころには、バクラの角がバチバチし始めており、色からして右は火属性、左は土属性の何かが来そうな予感。
「【ウォーターウォール】を両方に!」
自分達とバクラに水の盾をガッツリ展開。
カカンと振り上げた足の下にも水溜りが浸透し、焦ったバクラは後ろ脚も蹴り上げた。
おかげさまで両足が完全固定されたので、あとは本体をどうにかすれば良いだけだ。
「あれって、魔法出てこないんだよな」
「うん、こっちの盾は外しちゃおう。バクラの盾ももう少し縮めちゃった方がベル君攻撃しやすいよね?」
血走った目のバクラが多分魔法を使ったけれど、包み込む形での水の盾の中では魔法が不発になるというのは実験済みだ。
バチバチしていた角も普通の角になり、顔だけで『射殺してやろう』という雰囲気は伝わるけれど、とりあえず私たちは作戦会議です。
〈ねえ、あれってもう詰んでない?〉
〈ヴィオの魔法展開が早いから出来たこととはいえ、もうバクラは何もできないな〉
〈バクラって、僕達結構苦労して倒した覚えがあるんだけど……〉
〈本当に、あの頃ヴィオがいてくれたらな……〉
〈あの魔法は何だ、どうなってる?〉
〈アリオール殿、この魔法に関しては他言無用をお願いしているのです。どうぞ見なかったことに〉
〈うっ、そ、そうだな。ここまでに教示頂いたことは数知れず。これは胸に秘めておくことにしよう〉
振り返れば大人たちは何か話し合っているけれど、このまま私達二人でやって良いという事なので、やっちゃいますね。
まずは水の壁をバクラの身体ギリギリまで狭めていく。キュッとしちゃえば息が出来なくなるけど、それだとベル君の出番がないからね。
次にベル君が魔力をネリネリして、氷の大剣を作り出す。
これは水の子ドラを作って魔力操作を繰り返していたベル君から相談されて、武器にできるのではないかと考えついた物なのだ。
強度は魔力の込め方で変わるけど、最終奥儀っぽくて格好良いよねって言ったら、秘密特訓をしてたんだよね。
「じゃあベル君いい?」
「うん、頼む!」
「【アースウォール】」
ベル君の大剣から冷気が漏れ始めたので、階段状の足台を作り出す。
まだベル君はヒトの状態で飛ぶことが出来ないから、階段の上から飛び降りながら止めを刺すことを考えたのだ。
魔力で作った剣が通るように、バクラの首から背中にかけての水の盾は解除しておく。そこだけぽっかり空いているから、ベル君の目印にもなるだろう。
「うおぉぉぉぉぉ!」
ダッシュで階段を駆け上るベル君、大剣は良い感じに冷気を振り撒いている。
階段の最上段はビルの三階くらいの高さだ。
バクラの真上、飛び降りながら大剣を振り下ろす。
ベル君が普段使っている剣では強度が足りない。
ベル君が下から剣を振り回しても、力が足りない。
だったらそれを補えば良いじゃないという事で考えたこの攻撃は、バッチリだった。
「どりゃあぁぁぁ!」
振り下ろした大剣が纏う冷気はバクラの毛皮を凍らせていく。
全身が凍っていくのと同時に剣先はバクラの身体を捉え、凍った事により脆くなった表皮も筋肉も容易く切り裂いていく。
ザシュン
ベル君が地に足を着けたところでバクラの首も落ちた。
キラキラとしたエフェクトはベル君を祝福しているようにすら見える。
「ヴィオ! やったぞ!」
「ベル君! すっごいね! いえ~い」
思わずお互いに駆け寄って、いつかのパリピよろしくハイタッチで喜びを分かち合う。
ポカンとしたまま固まっている大人たちにが正気に戻り、質問攻めにされるまであともう少し……。
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