ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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スワンプの森ダンジョン

第484話 スワンプの森 その10

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 希少種のヘッジホッグと米、これの回収の為に飛べるメンバーは十階層から十九階層までを毎日往復している。
 米は単体で食べるのも好まれていたけれど、海鮮丼と勝手巻きパーティーをした事で、爆発的な人気を博してしまったのだ。

 マムさんが持ち帰った炊飯器は里に一つだけ。
 現在はミドウ村に炊飯器の依頼をかけて完成待ちなんだって。
 完成すれば確実に米の消費は増える。なのでその為にも回収を頑張っているのだ。

 マムさんはタニアさんに乗って、ベル君はアリオールさんと一緒に行動しているので、今私と一緒にいるのは、チアキさん、白雪さん、イブさんの三人だけだ。
 ベル君チームは何かあった時にすぐ駆けつけることが出来るように、この階でヘッジホッグ散策をしている筈だけど、大人たちは其々別の階で単独行動です。

 四人だけといっても、一人は常識外れの勇者、一人は賢者と呼ばれる伝説のエルフ、一人は神様の伝令者聖獣である。魔法少女な私とて自分の身は護ることができるし、四人でも問題は無いのだ。

「あの頃にヴィオが一緒にいたら、凄く楽だっただろうね~」
「まあな。ヴィオがいたらビッチは不要だったし、洞窟だろうが快適に進めただろうな」
「強い男に惹かれる女、美人に惹かれる男というのはよく見たことがあるが、其方らが言う聖女というのはその範囲が広かったんじゃな。そこまでの相手にはまだ会うた事は無いが、会いたくはないな」

 イブさんとチアキさんは出会った当初、スタンピード時代の話を教えてくれる。
 まだ白雪さんと出会う前でもあるので、白雪さんも興味深そうに聞いている。
 それにしてもビッチ聖女は二人からの印象が悪すぎないだろうか。

「スタンピードの時って、魔獣が外に溢れてるんですよね? どれくらい遠くまで出てきちゃうんですか?」
「さてな、あの頃は各町の規模も小さくて、町として機能しているところは頑丈な壁で自分たちを守っていた。街道なんてものも殆ど無くて、未開の森も多かったし、森から出てきている魔獣なのか、ダンジョンから溢れてきている魔獣なのか、見分けはつかなかったな」
「うんうん、町からちょっと離れるとゴブリンやオークも多かったし、単独で歩くなんて自殺行為って感じだったよね」

 そんなひどい状態だったんだね。
 まあでも、結構ハードモードなラノベで、転生主人公が勇者になるタイプの場合は、そんな感じの情景が多い気がする。
 自分ちの畑にオークが現れて両親が自分を庇って死んだ、みたいな最悪からのスタートって結構あった気がするもん。
 あ、そうか。チアキさんは転生勇者だから、まさにその物語の主人公コースを地で進んでたって事だったんだね。納得です。

「スタンピードがひと段落した後にギルドの設立とかをしつつ、街道をどうにかする為に魔獣除けの魔道具も作ったんだけどな、想定以上に魔獣が少なくて、あの時にいた半分以上はダンジョンから溢れてた奴らだったんだなって思ったんだ」
「そういえば、チアキさんとイブさんが考えたあの魔獣除けの魔道具なんですけど、あれの広範囲版が皇国とかの結界なんですか?」
「あ~、原案はあれだけど、効果は違うぞ」
「うんうん、あの結界はヴィオが使ってる聖結界と同じだね、地面を含めて空まで全部を囲い込んじゃうっていうタイプの結界なんだ。
 しかも寄せ付けないっていう強いものだから、魔力もかなり必要だし、一時的な物だったらまだしも、恒久的に使うべきものじゃないって分かったんだよね」
「イブの言う通りじゃな。それにヒトは生きているだけで瘴気を生み出す。
 例えば毎日の排泄物もそうじゃし、腐ったものやゴミなどもそうじゃな。そのままにしておけば瘴気が発生すると教えたじゃろう?」

 白雪さんの説明に頷く。
 だから納豆作りは諦めたし、発酵が出来ないと知ったんだもの。
 クリーンやプリヒケーチョンで浄化させることによって、魔素に還元しているというのがこの世界なんだけど、皇国や神国の場合は浄化して還元するだけしか魔素が存在しない事になっているのだという。
 新しく生まれる魔素は、本来なら土、水、植物などから生まれ出すけれど、その魔素に蓋をしている状態だから、今は何とか細々と育っている植物なども、そのうち土中からの魔素が無い為育たなくなるだろうという。

「今後生まれてくる子供は魔力無しや、魔法が全く使えないというのも出てくるじゃろうな」
「あ、そういえば皇国出身の冒険者が知り合いにいるんですけど、聖魔法以外は邪道だからって魔法を使えない人ばっかりらしいです。洗礼式で水晶玉を光らせても、聖属性以外は何も言われないって。
 生活魔法も知らなかったって言ってたから、自分が魔法を使えるって知らない人も多いかもですね」
「うわぁ、あの国がそうなったのって、まだ百年とかの話だよね。
 次の次の世代とか、マジで魔力無しが生まれそうだね。その時点で結界が消滅したら死ぬしかなくない?」

 イブさんの言葉に、確かに結界を維持するための人だけがいつまでも魔力を持っていられるとも限らないと知る。

「皇都にある大きな結界の魔道具と、地方にそれを支える結界魔道具があるらしいです。
 それこそ隣近所の国で聖属性持ちが洗礼式で見つかると、平民の場合は皇国に連れて行かれるって。今後ますます酷くなりそうですね」

 これはドゥーア先生に報告しておいた方が良い案件だよね。
 誘拐はメリテントの街でもあった。
 あれが聖属性持ちを求めていたのか、見目の良い相手を求めていたのか、その売る相手は誰だったのか、その辺は分からないけど、結界維持の為になり振りかまわなくなりそうだもん。
 神国の方はどうなんだろうね。皇国より一足先に結界を作り出した訳だし、確実に皇国より先にどうにかなりそうだよね。

 そんな真面目な話もしながら、ダンジョン探索を続けています。
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