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山籠もり
第488話 強そうな盾?
しおりを挟む山の中だけど、チアキさんの野営地設定はいつも通りです。二人分だから超簡単だと、ものの数秒で作り上げてくれました。
「魔力はまだあるか?」
「大丈夫です」
やっと息も整った頃にそう言われ、野営地全体を囲むように聖結界を張った。
寝る時には結界魔道具を使うけど、意識がある時はこれが一番安全な結界だからね。
「大分色が目立たなくなったな」
「本当ですか? 無属性の魔力を混ぜて大分薄くなってきたとは思うんですけど、まだ白いのが残るんですよね。水と風は透明化できるようになったんですけど難しいです」
私の作る盾は、足元まで全部を覆うと中に入った敵は完全無力になってしまう。特に粘着性の水の場合は動きも制限される。
ただし、これが他の人にも知られると危険すぎるので、どんな攻撃をしているか分からないように、盾の透明化を練習しているのだ。
水と風は元々の性質上、透明化させるのは簡単だった。他人に見せる為に色をつけていたくらいなので、透明の方がデフォルトだったともいえる。
ただ聖属性に関しては、相変わらず私が『聖属性』をどんな魔力かを理解していないから、教えてもらった通りにしか作れないのだ。
「聖属性ってキラキラしてるイメージが強いじゃないですか。魔法少女感が一番強い魔法というか」
「成程な、確かにアンデッドの浄化とかはファンタジーの漫画そのまんまって感じだよな。火属性は現実世界でも似たような攻撃があるっちゃあるし、土とかもそうだよな」
「そうなんですよ。他の属性魔法ってアニメでも結構見た覚えがあるんですけど、聖魔法って回復とか浄化のイメージしかないんですよね。
そもそも聖女しか使えない設定の物語が多かったですし、聖女が前線に行くなんてごく少数の本でしか見たことないんですよ」
前世の話を遠慮なく話せるというのは非常に伝えやすくて助かる。
白雪さんも私に前世の記憶があるのは伝えているので隠しはしないけれど、やっぱり魔法少女とかは伝わらないだろうし、例え話として出すことは極力しないようにしているんだよね。
「そうだなぁ。だったら形が定まっていない魔法って考えてみたらどうだ?」
「ん? どういうことですか?」
遅めの昼食は、チアキさんの希望で牛丼です。
ヘレの肉を薄切りにし、マルネギも薄切りで。割下をクツクツ沸騰させたらヘレの肉を入れて煮込んでいく。チアキさんはクタっとしたマルネギが好きなので、薄切りにしたマルネギも一緒に投入。
ご飯を炊くのはチアキさんもできるのでお任せしながら、魔法の考察をしております。
「聖属性の魔法ってのは、瘴気を浄化させるのがそもそもの目的だろう? 他の魔法は他属性の魔法でも応用が利くものはあるけど、瘴気の浄化だけは聖属性以外では出来ない。【クリーン】だって瘴気には効果が無いからな」
確かに、遺骸を消すのに【クリーン】は使えるのに、アンデッドに【クリーン】は効果がない。
ケチャップをこぼしても、汚れは【クリーン】で綺麗になるのに、瘴気が溢れている水溜りは綺麗にならない。
「神々のお力が働いているって事でキラキラして見えるけど、別に神様がキラキラしている訳じゃないだろう?
聖属性は水晶玉が白くなるのもあるけど、聖職者が白い服を着てるのが印象になってると思うんだよな。だからこそ、聖属性の何かを使う時には白い壁とか、白い槍とかになるんだろう。
だってよく考えてみろよ、回復魔法は色がないだろう?」
「確かに! そうですね、回復の時はキラキラすら出さずに使えます」
天才か! こういう柔軟な考え方ができるのはチアキさんの凄いところだよね。
スープの鍋に味噌をときながら考える。
牛丼を沢山食べたいから副菜はいらないとか180歳男児が言いますから、副菜のかわりにキノコ、キャベチ、ゴボウ、ジンセン、ナガネギを入れた野菜たっぷりの味噌汁を作っています。
少年と大人の両面を持つチアキさん。男性は何歳になってもピーターパンだと聞いたことがあるけど、そうなのかもしれないね。
そんな大きな少年の健康は私にかかってますからね。ちゃんと野菜は食べさせますよ。
食後は【ホーリーシールド】の色を無くす実験を何度か繰り返した。
「けど、ヴィオの盾で知られたら危険なやつって水のアレだろう? それ以外は見えても良くないか?
というか、【ホーリーシールド】に関しては見せておいた方が良くないか?」
「ん? そうですか? 全部透明の方が楽じゃないです?」
ここまで練習しといてというツッコミは致しませんよ。
チアキさん曰く、身動きが出来なくなり更に魔法も使えなくなる、しかもそのまま密着させれば窒息もさせることができる水の盾は、魔力が多い種族に悪用されたら逃げようがないと。
「けど、他の属性の盾ではそんな使い方しないだろう?
【ホーリーシールド】は中に閉じ込められた魔獣が弱り過ぎるし、相手によっては触れて死ぬしな。その使い方はせんだろう?」
確かにそうだね。風の盾はドラった時に空気抵抗を無くすために使うのが基本だし、土の壁はダンジョンの安全地帯以外の場所で休む時に通路を分断する為に使う。
戦闘訓練の時の盾は氷の盾が一番使い勝手が良いけど、それ以外では使わない。
木の盾というかあれは【リーフウォール】を忍者のまねごとをしている時に使ってたくらいだ。
気配を消しておく時に闇属性の盾を使うことはあるけれど、敵に対して使うなら水の盾一択だね。
【ホーリーシールド】は最近の休憩で使うようにしているけど、これは敵が近づいてこないから便利なんだよね。
「確かに、閉じ込めるという理由で使うのは水の盾ですね。他は自分を守るためだから見えても問題ないかもです」
というか、じゃあこの練習の時間は何だったんだと思ったりする。
いやいや、いつか役に立つかもしれないからね、良いことにしよう。
「でな、ちょっと試してみたんだ。この盾になんか攻撃を当ててくれ」
ウキウキしているチアキさんにお願いされて、ほんのり白いドームに【アースボール】を放ってみた。
カーンと良い音がして石は跳ね返されたんだけど、ちょっと今の何ですか?
「おぉ! 成功だな」
「ちょっ、今の何ですか。何か一瞬見えましたよ」
「そうだな、あれだ、火炎放射みたいな攻撃だったらしっかり見えるぞ」
石が当たった瞬間だけだったから、攻撃の時に出るのかな。
言われた通り【ファイア】を唱え、すぐに消えるのではなく、チロチロと火が舐め続けるように調整してみる。
炎が当たったところで半透明だった盾の白さが濃くなり、盾の上部、この場合屋根になるところになんか複雑で格好良い紋章みたいなのが浮かび上がっている。
「あの模様は何なんですか?」
「ん? 適当に考えたやつだ。なんか格好良いだろう?」
ズコーってこけそうになったわ。
古代文字でも神代文字でもないし、何だろうって思ったけど、なんだそれ!
でも確かに格好良いです。しかも普通は一瞬しか見えないわけだし、凄い特別な盾っぽくてこれは格好良い。
「なんか、聖属性の盾って感じがするだろう?」
「うん、しますね。なんか神聖っぽいです」
チアキさんが同志を見つけた! みたいな顔しているけど、これに関しては完全同意ですよ。厨二な呪文には全く憧れませんけど、こういうなんか凝った紋章とか、魔法陣とかはトキメキます。
この盾を作るのに特別な事は無く、攻撃を防ぐときに模様が出るように想像して作っているだけだった。紋章に関してはチアキさんの過去に見てきた色々の中から気に入ってたものをコラージュしたものだと思うとの事。
完全お揃いだと白雪さんがやきもちを焼きそうなので、違う模様を考えよう。
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