ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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ミドウ村へ

第509話 一時帰宅

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 ミドウ村まではバレンさんとタニアさんが送ってくれることになった。

「魔道具を作ったらその後はどうするのだ?」
「修行の途中だったからな、また山籠もりを再開させるつもりだぞ」
「え、まだ続けるの?」

 イブさん、修行をはじめてまだひと月ですし、後半の二週間は風竜人族の集落で楽しんでいたから修行になっていませんよ。
 まあ、あの快適野営生活が修行かと聞かれれば謎だけど、一応修行なんです。

「であればうちの集落の近くから再開するのだろう? 一週間ほどヒスのダンジョンに行くつもりだから、その後で良ければ近辺まで送ろう」
「おぉ、それは助かるな。一週間もあれば完成するだろうし、ありがたい」

 おぉ、精霊の依り代という非常に特別っぽい魔道具作りに期限が付いてしまいましたよ。まあ、魔道具スペシャリストが二人もいれば大丈夫かな。

 ミドウ村に到着したら、人化することもなく二人はヒスのダンジョンに向けて飛び立ってしまいました。どぶろくを作りたいと言っていたもんね。
 ヒスは5階から米があった筈だし、フルーツも沢山あったから、是非沢山採集してきてほしいです。

「随分早かったんじゃな」
「ああ、バレンとタニアが送ってくれたんだ」

 伝達魔法でお知らせしていたので白雪さんが玄関先まで出てきてくれた。

「白雪さん、ただいま帰りました」
「ああ、おかえり。イブもいらっしゃい」
「うん、お邪魔します」

 挨拶もそこそこに実験室に歩いて行くチアキさんだけど、あれ? ベル君がいないね。私達が戻ってきたらすぐに来ると思っていたけど、勉強時間なのかな?

「ああ、ベルはヴァレーリオの故郷に家族で帰っておるよ」

 ヴァレーリオさんは、ベル君のお父さんだけど、その故郷という事は水竜人族の集落という事かな。

「竜人族の皆さんも里帰りとかするんですね」
「殆どせんようじゃがな、今回其方らがファニアの里に行ったじゃろう? それでベルを両親に見せてやろうと思ったようじゃな」

 えっと、ベル君は現在12歳な訳ですが、12年間見せてあげてないという事でしょうかね。人間だったら学園に入学する頃ですし、日本だったら中学生ですね。
 いや、あの風竜人族の里で赤ちゃん扱いされた私と、子供扱いされたチアキさん達がいるからね、ベル君も生まれたてホヤホヤ扱いされる可能性はあるのか。

 そんな事を考えていたら実験室に到着した。白雪さんは実験がお好きではないのでお部屋に戻ってしまったけどね。後でお酒作りをするつもりだけど、一緒にやってくれるかな?

「よっし、まずは精霊が依り代にする魔道具をどんな形にするかを考えないとな」
「そうだね、精霊たちは自分達の属性に関する場所を好むから、彼らの場合は明るい光と風が必要だよね」
「光というならランプですかね。風は……風通りが良ければいいのか、風をおこす方が良いのかどっちなんでしょう」
『閉塞してなければいいけど、風が流れてくれると快適だわ』
『私は明るいのが好き。結界魔道具の感じも好きよ』

 結界魔道具というのは聖属性の魔力って事かな。
 ふたり分ということは二つの魔道具が必要なのかな。大きさはどれくらいあれば良いんだろう。大きすぎると持ち運ぶのが大変そうだな。

「光の精霊は外灯とかに引き寄せられることもあるけど、今回のヴィオみたいに側にいたいって理由の時は装飾品にする事が多いよ。ネックレスとか、指輪とかかな」
「ああ、闇と土の精霊が指輪を依り代にしているのは見たことがあるな」

 土も闇も石に籠るのは何となく理解できるね。でもキンキラに光る指輪は目立ちそうだし、風をどうするって話だよね。

「風車とか?」

 自分で言っておいて無いなと思った。
 風車と言ったのに身に着ける事を考えてしまうと猫型ロボットのアニメに出てくる頭につける竹とんぼが浮かんでしまった。
 どうやらチアキさんも同じ発想をしたらしく、プルプルしながら「そんなに空を自由に飛びたいのか」とか言ってます。
 空を飛びたいのは事実ですが、ちょっとしたミスじゃないですか。
 というか、この世界だったらあれを作れたりしないですかね。

「確かに、重量軽減をいれて、風を起こせば身体を浮かび上がらせることは出来そうだな」

 飛べる竹とんぼのイラストと、魔法陣に入れる文字などをメモし始めたチアキさん。私も一緒になって意見を出していると、イブさんがメモ用紙を覗き込んでくる。

「へぇ、面白いけど、これでどうやって飛ぶの? 浮かぶだけ浮かんで自分に追い風を当てれば進めそうだけど、魔道具と追い風の両方に魔力がいるし、下りる時はどうするの? ヴィオたちは風魔法で器用に空から落ちてくるけど、うちのエルフ達でもあそこまで器用に下りてこれないよ?」

 メモを見たイブさんから指摘をされた。
 頭の上にポンと乗せるだけというのも、外れないようにする必要があるし、プロペラが回るのであればその風に髪の毛が巻き上げられて危険だし、かなり危険じゃないかと言われてしまった。
 流石未来のロボットが考えた便利道具、魔道具で同じものを作るのはかなり大変そうです。

「いや全部を込めて、帽子とかに取り付けるのであれば可能だとは思うよ。
 だけどそうなると魔法陣は凄く複雑になるし、そもそも動かすための魔力が相当必要になるから、普通の人は動かせないんじゃないかって事。冷蔵魔道具だってかなり複雑な魔法陣を使っているけど、あれらは魔石を入れ替えながら使うようにしているでしょう?」

 そうか、変身魔道具が使えるのも、翼人、竜人共に魔力が多いからって事なんですね。白雪さんが平然としているのも、あの人は獣人ではなく聖獣だからね。
 身に着ける魔道具の魔石が小さいのは、装着している人の魔力を使用しているからで、お兄ちゃん達のお守りについている魔石は、その魔法を使う媒体というだけなので小さいもので問題ないのだ。
 それとは違い、冷蔵庫も携帯コンロみたいな魔道具も魔石を電池代わりに使っている。冷凍魔道具が少ないのは氷の魔石が少ないからだし、魔道具単体として使うなら魔石が結構必要になるという事だね。

「ヴィオだって常に二つの魔道具を使っている訳でしょう? 普通のヒト族だったらそれを常につけてるだけでも結構魔力消費が大変だと思うよ? 
 その上で結界、索敵、身体強化でしょう? あと魔獣を見つけたら盾を張って魔法で倒してるよね?
 だからこそ、本当にヒト族って疑問なんだよね」
「おぉ、そう考えたらヴィオは凄いな。本当にヒト族なのか?」

 時々出るヒト族疑いはそれが原因か。
 魔力操作の訓練は今でも毎晩寝る前にやっているし、多分そのお陰なんだよね。魔力自体も増えてきているとは思うけど、なにより消費魔力が少ないというのが一番の原因だと思います。

「というか、魔道具ってそんなに魔力を消費してるんですか?」

 あまりそれを感じたことが無かったんだけど、もしそうだとしたらお兄ちゃん達は大丈夫だろうか。冒険の途中で魔力が足りなくなるとか、それこそ本末転倒じゃないですか。

「いや、ヴィオの片方は色変えをしているから常に消費されてるだろうが、家族に渡したあれは本人が意識していないと殆ど消費は無いと思うぞ。こっち浄化のも、効果が出るときしか魔力は使わんだろうよ」

 そう言ってもらえると安心しました。
 そういえばハバネロの時も、痛辛いって思った時に浄化されたもんね。
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