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家族と合流
第155話 お父さんと旅の準備
しおりを挟む水の日の朝、昨日の夜は結構遅くまで頑張っていたのだろう。
リビングのテーブルの上には 沢山の磨き終えたカルタの板が散乱していた。
それでも 木くずなどが散乱していないのはクリーン魔法のお陰だろう。
木の箱に45枚ずつ集めていく。45枚1セットで納品すればいいからね。
木魔法は二人とも得意属性なだけあって、磨きは完璧だった。学び舎では 最初のうちは 厚みがバラバラになって、先生たちの仕上げ磨きが必要だったのに、全く必要ないくらい 均等な厚さになっている。
「お兄ちゃんたち凄いね。初めてなのに とっても綺麗だし、厚さもバッチリだよ」
「ははっ、トンガは 風魔法に慣れんかった分、磨きで厚さを削るようにしておったみたいじゃがな」
「……も~、父さん それは内緒にしといてよ。カッコ悪いじゃないか」
カルタ板が綺麗に片付き テーブルにカトラリーを準備していたら、トンガお兄ちゃんが起きてきた。随分早いね。
「トンガお兄ちゃん おはよう、早いね」
「ん、ヴィオおはよ。今朝はもうそっちの色なんだね。うん、それも可愛い」
おはようと挨拶をすれば ギューっと抱きしめられて 髪に顔を埋められてしまう。ちょっと癖のある髪だから、ひとつ結びくらいだと フワフワと広がっちゃうんだよね。
お兄ちゃん的には そのフワフワが気持ちいいんだそうです。
「はよ~……」
そうこうしているうちに ルンガお兄ちゃんも起きてきた。大分寝ぐせも凄いし 寝惚けまくってるけど、今日は二人とも起こさなくても起きて来たね。
「おお、ルンガも起きたんか。昨日はだいぶ遅くまで練習しておったのに、随分早いな」
「ん、サブマスに呼ばれてっから」
ああ、水生成魔法と索敵の練習かな?
上級ダンジョンに入るなら 覚えておいて損はないもんね。それなら納得だね。
これだけ寝惚けてたって 朝食を食べれば目覚めるし、食べる量も凄いんだから 冒険者って凄いと思う。
◆◇◆◇◆◇
「さて、ヴィオ 今日はどうする?」
朝食後 さっさと着替えて 出かけて行ったお兄ちゃんたち。カルタ板もちゃんと持って行ったよ。
お皿洗いも終わったところで お父さんから今日の予定の確認だ。今日は 何も予定を入れてなかったからね、どうしようかな。
「そうだな……。あっ!保存食作りたい。
今度は長いでしょ? スープはどうしよう。お兄ちゃんたちだけだったら言っても良いけど、クルトさんにどこまで伝えていいのかな」
武器屋のギレンさんには 強化魔法が使えることと、結界魔法を使えることは伝えている。
だけど、靴屋のミリーナさんや、服屋のリリウムさんには伝えていない。
手合わせをしていたテーアさん達家族には 武器の事も強化魔法と結界鎧の事も伝えているけど、マジックバッグの事は伝えていない。
聖魔法が使えることを知っているのは サブマス と ギルマスと タキさんだけだ。
私の全てを知っているのは お父さん、サブマス、ギルマス、ドゥーア先生、この四人だけで、誰にどこまで伝えるのかは 先の三人で決めている。
今回ダンジョンの旅では野営なんかもあるけど、基本は2つのパーティーが合同で動いているという事にするらしく、夜間の見張りなんかは お父さんも交代要員でやるけど、私は悪者ホイホイになるだけだから免除。テントは2つで お父さんと私、お兄ちゃんたちの三人と分けることになっている。
ごはんとかは一緒だけど、宿とかも部屋割りは同じ感じになる予定。
「あ~、そうじゃな。色変えは 長期間一緒に過ごせば バレる可能性はある。そうなったらその時に説明すればええじゃろう。
テントも宿も部屋割りが別じゃから大丈夫じゃとは思うがな。
マジックバッグは早々にバレるじゃろうから伝えてええと思う。母親の形見じゃと言えば大丈夫じゃ。
ただ 時間停止はトンガたちにも言わんほうがええ。ヴィオのマジックバッグはかなり特殊じゃ。
トンガたちも 上級に潜る理由のひとつが 時間停止で容量が多いマジックバッグを見つけるためじゃ。冒険者にとっては垂涎の道具じゃからな。
あいつらが性能のええマジックバッグを持てた後なら言うてもええが、今は止めておいた方がええ」
お兄ちゃんたちが云々という訳ではなく、知ってしまったがために何気なく 頼られた時、他の冒険者にそれを見られた時の危険性が怖いと言われた。
そうだね、最初は気を付けてても そのうち慣れちゃって 当り前に使うようになったら危険だもんね。
聖魔法に関しては 使わないと練習にならないから 伝えること。ただし 使う時は テントの中など、他の冒険者から見えない場所でやる事。
ダンジョンなど 他の冒険者が居る時には、トリガーだけでも呪文は使う用にする事など、今度のダンジョン旅での注意すべきことが決まった。
「じゃあ スープと お茶は 野営の時に作るくらいだね。
だったらスープの素をいくつか作っていい? 瓶に詰めて持っていけば お料理の時便利だと思うの」
「スープの素?スパイスか? 乾燥野菜は…作ったな」
切った野菜を【ドライ】で乾燥させて 持って行った前回は、スープを作る時に便利だった。持っていく野菜の種類は多かったのに 嵩張らなかったしね。
「ううん、スープを濃縮して 乾燥していくの。フリーズドライっていうんだけど…………
そうか、フリーズドライ製法って魔法で再現できるんじゃない? フリーズって事は凍らせるだよね、で ドライは乾燥だ。
ただ濃縮しまくってドライで乾燥させればいいと思ったけど、それより凍らせてからにすれば 更にいいんじゃない?できるかな?でも この魔法は あまり大々的に知られない方が良いやつかもしれないよね……。
でもやってみたい、どうしよう……」
「あ~ゴホン。ヴィオ? とりあえずやってみるか? 」
ん? 声に出てた?
考え込んでたら お父さんに声をかけられて びっくりした。
ちょっと困った顔しているけど、これは声に出てたやつですね?
うん、お父さんのOKはでたし、失敗するかもしれないけどやってみよう。
まずはアポの実で試してみよう!
という事で 赤いアポの実を6等分に切ります。
「1個丸々使わんのか?」
「うん、失敗したら悲しいもん。1個で6回は練習できるよ」
切ってもらったアポの実の1つを凍らせましょう
「【アイス】」
アポの実が冷たくなったけど、水を凍らせた時のよう 本体がカチカチになったという感じではない。
急速冷凍とは違うからかな?
「違うんか?」
「うん、冷たいけど、カチカチではないんだよね」
「凍結魔法は別にあった筈じゃが、儂は水魔法を使わんからなぁ」
凍結!それです それです!あるんだね?
って事は出来る筈。呪文にするなら何だろうね。まあわかんなくてもフリーズでいいかな?
アポの実が 芯から凍る様に、ゼロ度だとアイスと一緒だよね、氷点下になる様に。
そうそう、工房見学では マイナス何度かって言ってた気がする。マイナス30度くらいだったっけな、50度だったかもしれない。
よし!まずはマイナス30度になるように、中心から外側に向けて、凍って頂~戴!
「【フリーズ】」
しっかり想像しながら魔力を流せば、見た目はさっきとあまり変わらないアポの実だけど、触ればカッチカチになっているのが分かる。あれですよ、冬の北海道とかで バナナで釘打っているあれ。あんな感じ。
「いけたんか?」
「うん、さっきよりは凍ってる。触ってみて」
「おお!カチカチじゃな。これは嚙めんぞ」
そうでしょう。噛めてしまえば困ります。凍らせただけの一つ目は お父さんが食べてしまいました。シャクシャク冷たくて美味しいと感想を頂きました。
とりあえず残りの4個にも 同じように【フリーズ】で凍らせてしまいましょう。
で、次はこれを乾燥させるんだよね。
「【ドライ】」
1つ目の冷凍アポの実に乾燥魔法を使ってみたけど、カチカチに凍り過ぎているからか 表面だけが乾いた感じになってしまった。
中は凍ったままだし、形もほとんど変わっていない。
見覚えのあるフリーズドライされた野菜や果物は、干物以上にサイズも小さく、カラッカラになってたはず。これは失敗しているよね。
「失敗か?どうなりたい感じじゃ?」
「ん~、中の水分も全部抜けるようにしたいの。でも栄養分とかはそのままにしたくって、余分な水だけを吸い取る感じで、カラカラにしたいの」
「吸い取るんじゃあ 水魔法の搾るとは違うなぁ……。吸い取る、押し出す、難しいのう」
押し出す?
そう言えば フリーズドライは 真空状態が必要って工房の人が言ってた。真空状態?
「【エアウォール】」
とりあえず風の盾を丸く作り、その中に一つの 冷凍アポの実を入れてみる。入れたら壁の入り口を閉じ、中の空気を無くしていくイメージを高めていく。
空気を抜くのと同時に ドライによる乾燥が行われるように、アポの実から水分が抜けることもイメージしていく。
風の盾、盾の中の空気を抜く、乾燥のドライ、3つの魔法を同時にしているからか、魔力がグングン減っていくのが分かるね。だけど、全く想像してない事象を起こすよりは 想像している分 減りは緩やかだ。
風の盾は 水の盾と同じく 透明なので中が見える。
盾の円自体も小さくなってきているけど、それより早く アポの実が小さくなっていくのもわかる。
うん、うん、良さそうだよ。1/6欠片のアポの実なのに その欠片が 更に1/4くらいの薄さと小ささになった時点で 風の盾を解除した。
掌で受け止めれば カラカラの乾燥アポの実が出来上がっている。
「これは……、食べられるんか?」
「水に浸ければ 最初ほどではないけど 戻るはず。やってみよう」
水を器に準備しようと 椅子から立ち上がった途端、フラリとふらつき お父さんに抱え込まれる。あれ?眠い……、魔力使い過ぎたかも。
「実験はまた後でじゃな。回復薬はいらんじゃろう。ゆっくり休みなさい」
お父さんに抱っこされたまま移動しているうちに、ユラユラが気持ちよくてそのまま寝落ちしてしまった。
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