ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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家族と合流

第156話  お兄ちゃんたちと魔法の練習 前半

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結果として フリーズドライ魔法は 成功だった。
あの後 2時間ほど 魔力切れで眠った後、カラカラになったままの乾燥アポの実を水に浸ければ、5分もしないうちに ムクムクと膨らんで、アポの実として食べることが出来た。
切りたての シャクシャクとした瑞々しさはなかったけどね。

お父さんはとても驚いていて、サブマス達との魔法の練習時間に相談すると言っていたよ。
なので、私が起きてもまだ凍ったままだった 残りの3個も風の盾に纏めて放り込み、ドライで乾燥させて カチカチ アポの実を作っておいた。

「魔力はどうじゃ?」

「うん、さっきの成功があったから 今回は少なめだね。纏めて出来るのも分かったし、これ使いやすいよ」

ということで、午後は スープを沢山作り、スープを飲むときの器1杯分ずつでフリーズドライ魔法をかけた。
1度目は【フリーズ】で凍らせてから、【ウインドウォール(+エア抜き)】、【ドライ】と別々にかけたんだけど、スープの2種類目を作る頃には慣れてきて、【フリーズドライ】の呪文だけで 一連の流れを纏めて出来るようになった。
3つの魔法を其々使うより【フリーズドライ】にしたときの方が ちょっと魔力消費は多くなったけど、これも3種類目のスープに魔法を使う頃には フリーズだけと同じくらいの消費魔力に減ったのだから、慣れって大事だと思った。

流石に3種類目の鍋のスープを処理した時には 魔力の残量が随分少なくなってきたらしく、おなかも空いたので 終了したけどね。

「これだけ魔法を連発できれば十分じゃ。あの虫ダンジョンの時よりも 更に魔力が増えたな。普通の魔法でもこれだけ連続で使うことはないぞ。
これは、他の冒険者がいる場所では 鞭と短剣をメインに使うようにした方がええかもしれんな」

確かに、5人の中で一番小さい私が魔法でバンバンやってたら、どんだけ魔力多いねん ってなるよね。気をつけよう。


◆◇◆◇◆◇


そんなこんなで お休みの昨日はフリーズドライ魔法の実験と、保存食作りで一日が終わりました。
お兄ちゃんたちは 属性魔法の索敵から練習したらしく、トンガお兄ちゃんは土魔法での索敵を、ルンガお兄ちゃんと クルトさんは 風魔法での索敵の練習をしたらしい。

水生成魔法は 目の前で何度か見せてもらったことで 出来るようになったと言うから、感覚で魔法を使う冒険者の凄さが分かるよね。

「ちわ~、今日はこっちに集まれって言われたんだけど、森に行くのか?」

朝食後、クルトさんが自宅に来た。
今日はサブマス達との 魔法練習の日だからね。学び舎のない週末は 成人冒険者たちも訓練場を使うことがあるから、魔法の練習は自宅の裏庭というか 裏の森でやることが多いんだよね。
でも今日は無属性の索敵魔法を練習するから 森に行くかもしれないね。

然程待つことなく 玄関を叩く音がして、ギルマスとサブマスが訪れた。
魔法の練習はどちらか一人の時もあるけど、今日は二人なんだね。

「ギルマスさん サブマスさん、おはようございます。今日は二人で一緒なんですね」

「ヴィオさん おはようございます。ええ、あの【索敵】は ギルマスも是非マスターしたいそうですからね。あとは 昨日また面白い魔法を作ったのでしょう?それも聞かせてくださいね」

お兄ちゃんたちと クルトさんは ギルマスの登場に驚いているけど、昨日練習した索敵魔法との違いを説明されていて、なんだか盛り上がっている。
サブマスが こっそり フリーズドライ魔法の事を聞いてきたけど、昨日私が魔力切れで寝ている間に お父さんが連絡をしてくれてたのかな?

「おお、じゃあ トンガたちは 先にヴィオを連れて 森に行っといてくれ。今日は練習じゃから 初心者の森でええじゃろう」

「ん~、分かった。じゃあヴィオ行こうか」

お父さんは ギルマスたちにフリーズドライ魔法の説明をしてくれるのかな?
トンガお兄ちゃんは 少し不思議そうだったけど 一つ頷き、私を抱き上げて外に出る。クルトさんと ルンガお兄ちゃんは何の疑いも持たずに 普通についてくるね。

「ふふっ、ルンガ達が不思議?」

「えっ!う、うん。トンガお兄ちゃんは お父さんの言葉に何かあったのかなって思ったでしょう?
だけど、必要な事だったら後で聞けるだろう、みたいな判断で 動いたじゃない?」

「うんうん、よく見てるね。そうだね、僕たちが再来週から一緒に行動することになると二つの合同パーティーになるでしょう?そうなると、その全体リーダーは父さんになる。ひとつずつのパーティーにすれば、うちのリーダーは僕。

冒険者は危険があった時には 仲間を見捨ててでも自己判断で逃げる必要がある時もあるんだ。
だけど、パーティーで行動するときには 基本的にリーダーの判断や指示に従う必要がある。じゃないと皆がバラバラになっちゃうからね。
今は何か危険があるような時じゃないから ルンガ達は僕の判断に迷いなくついてくるって行動をとったんだね」

そっか、なんでもリーダーに任せておんぶに抱っこで自己判断能力がゼロになるのは困るって事で お父さんからは ダンジョンでの行動スケジュールを決める練習をさせられてるけど、お兄ちゃんたちは そういう事も分かった上で 現状とかを理解して 行動しているってことだね。
ふむ、ソロの冒険者、パーティーの冒険者、臨時パーティーの冒険者、色々あるんだろうね。
お兄ちゃんたちは 家族であり、幼馴染という信頼関係が元々出来ている人たちだから、そうじゃない人たちだとしたら 信用できるかどうかからスタートするんだろうね。

私は どうなるだろう。 金ランクにはお父さんと一緒になるって約束したけど、後10年もしたらお父さんも50歳を超えるし、50歳過ぎて現役冒険者は 長寿種以外ではいないって言うしな。
そうなればソロで冒険者するかな? 誰かと一緒に組むとしても 秘密が多すぎるからなぁ。
まあ、それはその時になって考えればいいかな。

ホーンラビットの森、通称初心者の森に到着したところで お父さんたちも追いついてきた、早いね。

「さて、ではまずは 昨日やった 自分の得意属性での索敵を展開してみてください」

「「「【索敵】」」」

初心者の森だけあって 森の外延部に見えていたホーンラビットは ダンジョンで見たくらいの小さなサイズ。ここではまだ幼獣という扱いの子達である。
私たちの存在を感じ 一目散に穴に隠れたり 遠くに逃げてしまった。
トンガお兄ちゃんは 地面に手をついて、ルンガお兄ちゃんたちは立ったまま 並んで索敵魔法を展開したようだ。
トンガお兄ちゃんのは土魔法だからよく分からないけど、ルンガお兄ちゃんと クルトさんは風魔法の索敵だから ふわっと優しい風が通り過ぎたのが分かる。

「ルンガに クルト、全方向に飛ばしてどうするのですか、無駄な魔力ですよ、前方に集中して魔力を流しなさい。
トンガは 深度をもっと浅く。土中の魔獣を探すわけではありません。土に足を付いている魔獣を見つけるので 浅く、表面だけをなぞる気持ちで森の中に魔力を流していきなさい」

魔力視をしながら サブマスが3人に指示を出していく。
すごいよね、擬音を使わずに魔法の説明が出来るって格好良い。私がアリアナ先生に説明するときはオノマトペを多用するから理解できないらしい。

しばらく 土魔法と 風魔法による索敵魔法の練習をしていた三人だけど、近辺50メートルほどにいる魔獣感知が出来たところで終了した。

「では 次は無属性魔法による 索敵魔法です。 これは昨日お教えした水生成魔法の “魔力を散布する” という工程を思い出してくれるとやりやすいようですよ」

それはお父さんのやり方だね。そうか、ここにいるメンバーは サブマス以外が感覚で使っている人だから、お父さんが使いやすいと思ったやり方が合ってるって事なんだね。

「ドバっと魔力を漏らせば消費が多すぎる。薄く、広く、遠くに伸ばすように考えればええ。
洞窟ダンジョンじゃと 室内全体に行き渡れば 完全なマッピングが出来るが、森ダンジョンや 外ではそのやり方は向かん。
マッピングだけが必要なら くるぶし迄の高さ、魔獣の種類も把握したいときは 腰くらいまでの高さ、森なんかで 木の上も敵が居りそうなら その辺りまでと 高さを考えておけば 消費魔力は抑えられるぞ」

「散布する……?ああ、こういうことか?」

「クルト、それは多すぎます。もっと少ない量で散布しないと直ぐに魔力切れを起こしますよ」

クルトさんが一番最初に 出来たみたい。風魔法の索敵も 同じようなものだもんね。
だけど、ちょっとドバっと出すぎたみたいだね。

「身体から魔力を…広く…薄く……ああ、ヴィオが言ってた 魔力を飛ばしているってのは、これをもっと濃くして強く出してたって言いたかったんだね」

目をつぶったまま考え込んでたトンガお兄ちゃんは、やりながら 威圧の魔力について私が聞いた理由が分かったみたい。そうそう、今は先端を ミストシャワーヘッドにして 霧みたいに薄くしているけど、先端をホースにして指でつまんで水圧あげている感じで ビャ~って出しているのが 私の思う威圧です。

「ルンガ いいですよ、その感じです。ココはホーンラビットくらいですから もっと高さを下げていいでしょう。そのまま伸ばしていきましょう」

ルンガお兄ちゃんは ずっと静かに目を閉じたまま 集中してたようです。

「あ~、これは風よりも正確に見えるな。風は遮蔽物があったらその向こうは見えなかったけど、これは満遍なく行くから木の後ろのホーンラビットもはっきり見える。
これ、死角からの攻撃とか無効になるんじゃね?」

「ダンジョンの中だと パニックルームか そうじゃないかも分かったし、宝箱の仕掛けがあるか無いかもわかったよ?」

「「マジか!?」」

ルンガお兄ちゃんの言葉に肯定すれば 皆が驚いたようにこちらを振り返る。
集中を欠いたことで魔法は途切れたようだけど、慣れない魔法でちょっと魔力を使い過ぎたみたいだから 休憩時間にすることにしたよ。
ちなみに ここまで静かだったギルマスも、ずっと無属性索敵魔法を展開していたようです。
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