ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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グーダン大山ダンジョン

第206話 休養日

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ボス部屋での戦いを終え、宝箱を開ければ 大量の食材盛り合わせと 宝石が数個。
色んな種類の食材だけど、特に私たちが気に入って集めていた食材が多い気がする。もしかしてダンジョン様が セレクトしてくれた?
だとしたら最&高が過ぎるんですけど?

ウキウキした気分は皆も同じで 宝石はサッサと売り払うことで決定。お野菜は 保存のきく穀物系は お兄ちゃんたちが、直ぐに駄目になる葉物系の野菜類は私が貰うことにした。
私たちはこの後も王都に向けて移動するからね。
お兄ちゃんたちは 上級ダンジョンに行くことになっているので 流石に 生野菜を大量に持っていくには 荷物の圧迫が心配という事だった。

「じゃあ、久しぶりの地上に戻るか~」

「は~い」

ボス部屋から続くお部屋の魔法陣に全員で立てば キラキラとした光に包まれて 視界が歪む。
最初は乗り物酔いのような状態になったけど 随分これにも慣れた。
眩しいので軽く目を閉じれば 足元がふわっとした感覚に変わる。
ゆっくり目を開ければ 久しぶりに見た 高原だった。

「おぉ~、そういえば 低層階は高原だったね。森ばっかりで忘れてた」

「確かに。上は結構素通りしたとこも多かったから 懐かしい感じだなっと」

感動してぐるりと周囲を眺めていれば 足元に来ていたらしい ホーンラビットを クルトさんが剣で突き刺して討伐してくれた。
うっかり、そういえばこのダンジョンは 1階でもスライム以外の魔獣が居ましたね。お父さんからも その事を注意されたので反省です。

『あんな子供連れで?』
『けど転移でってことは10階か20階だろ?』
『いいよな、役に立たなくても ギルドカードに 討伐の記録は残るんだろ?』
『後々しんどいのは本人なんだから 無視しとけばいいだろ』

そして1階は日帰りの採集に来る人達もいるから、冒険者や それ以外の人も沢山いる訳で、きっと深く潜る人以外は 水生成魔法を覚える必要もないだろうし、冒険者の階級もまだ低いのだろう。
私たちが転移で戻ってきたのを見て 非常にざわついております。
寄生扱いされているけど、まあ こんなちびっ子だもの、そう見えても仕方がないよね。お前に関係ないだろ?と言いたいけど 私の中身は大人だからね。ガキんちょの言う言葉なんて気にしませんよ。
だから トンガお兄ちゃん、そんな射殺すみたいな目を向けないであげてくださいな。

「トンガお兄ちゃん 抱っこ」

という事で 両手を伸ばして 抱っこのおねだりです。別に疲れてないし 余裕だけど あっちの少年たち チビリそうになってるし、気を逸らすためにはこれが一番です。

「ん、ヴィオ~」

抱き上げて ギュッとしてくるお兄ちゃんの頭をナデナデ。
ルンガお兄ちゃんも ススっと近寄ってきたので 手を伸ばしてナデナデ。
うん、フワフワお耳が気持ちいいね。

「ヴィオ 俺はお前を尊敬するわ」

クルトさん、それはどういう意味での尊敬ですか?
お父さんは ずっと笑ってます。
機嫌が直ったお兄ちゃんは 私を下ろすことなく そのままダンジョンの外へ。

ダンジョンの出口には 相変わらず籠を背負った人たちが 数人並んでおり、いつも通り盛況のようだ。
入る時は受付カウンターに申し出だったんだけど、出てきた時には 販売する物もあるだろうという事で カウンターの後ろにある 建物で手続きを行うらしい。

「ダンジョン踏破の報告です」

「はい、パーティー名と ギルドタグとギルドカードの提出をお願いします」

私もカードと首に下げているタグを外して お父さんに渡す。

「サマニアンズ3名と ヨザルの絆2名です」

「はいはい、サマニアンズと ヨザルの……ん? あなた達の工程表だとあと3週間はかかるのではありませんでしたか?」

「かなり余裕を持った工程表にしてましたからね」

予定を越えたら 捜索されちゃうから 日程には余裕をもって提出するのが基本なのだ。だけど3週間も前倒しになったんだね。多分 低層階の 風魔法を使ったダッシュが原因だろうけど 無茶はしていないのだから 問題なかろう。

「3週間って、てか1か月かからずに踏破したのか? 
いや カードの記録は 踏破になってるから間違いないのか。けど 子連れで? いや、銀の中級以上が揃ってたら いけるのか……」

ブツブツ言いながら 手続きをしているお兄さん。
魔道具にカードを置けば ダンジョンの記録が出るのはいつ見ても不思議。グーダン大山(踏破)って出るんだよね。
これ、途中だったら (〇/20)って途中階層が記載されるらしくって 特殊ダンジョンは 大体そうなるらしい。
お陰で未踏破の上級ダンジョンや 特級ダンジョンも、何階層のダンジョンかは把握できるって訳。

だけど 今回の水生成魔法のお陰で そういう未踏破ダンジョンも 踏破されるようになるだろうってお父さんが嬉しそうに言ってた。
お父さんのカードに ダンジョンの記録は乗せてないけど、もしかしたら 未踏破ダンジョンが結構あるのかもね。

「手続きは終了しました、何か販売するものはありますか?」

「あー、ボス部屋の宝石と ドロップアイテムをいくつか」

「食材関係はよろしいのでしょうか?」

「あー、それは自分らで食うから売らねー」

どうやらこの場所では 食材関係のみ 販売が出来るらしく、ここに直接 八百屋さんなどが 取引に来るので、それ以外のドロップアイテムや宝石は 町の冒険者ギルドに行ってほしいと言われた。
カードとタグが返却され カードの裏に グーダンの名前が入っていることを確認してにやける。
ついでに 許可証としてのメダルも返却したよ。

「ヴィオが嬉しそうで何よりだね」

嬉しいさ、何だろうね 収集癖じゃないけど こうして名前を刻まれるのは 御朱印帳に判子を押してもらったような気分になる。
ダンジョンノートに 日付、ダンジョン名、階数、ダンジョンランク、踏破迄の日数、を記録しているので、新しいダンジョンに入れば追記されるし、同じダンジョンに入る事があれば 踏破迄の日数が短縮できるかもわかる。
まだまだ 今は書き始めたところだから8つしかないけど、これが20カ所、50カ所と増えれば 中々面白いことになると思っている。

その後 町に戻った私たちは 冒険者ギルドで宝石と 依頼に出ていた幾つかのドロップアイテムを売り払い 結構な額を手に入れた。
豊作ダンジョンで 大量の食材を手に入れたから 食材補充はしばらく不要なので、武器屋さんにお手入れを依頼しに行く。
お兄ちゃんたちは 其々顔見知りのお店があるという事だったので ここで別行動となり 私はお父さんの顔見知りのお店にお願いしに行った。

お宿は ダンジョンに入る前にも泊まっていた 〔猪熊亭〕に空室があったので また3泊でお願いした。
予定より大分早かった帰還に驚かれたけど、サマニア村出身の銀ランクがこれだけいたら それも当然だなと笑われた。

お兄ちゃんたちの武器の引き取りが来週の頭だというので、それまではゆっくり観光をしながら 休養日にすることにした。
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