274 / 584
魔導学園へ
第241話 貴族のお屋敷
しおりを挟むずらりと並んだ使用人たちに迎え入れられ、客室から案内してもらっている。
何故かドゥーア先生も一緒に来てくれているけど 先生は忙しいのでは?
ニコニコしながら後ろをついて来てくれるので、案内役の方もちょっと戸惑っている感じ?
「こちらの客室が お父様のアルク様のお部屋でございます。お嬢様のお部屋は お隣に準備させていただきましたが、寝具はお二つございますので お嬢様がこちらのお部屋で過ごしていただくことも可能でございます」
メイドさんに案内されたお部屋は 扉を開いたところはリビングルームのようなお部屋で、長いソファーと ローテーブルが中央に鎮座しており、少し後方には 足の長いテーブルと椅子のセットもある。
室内の両サイドに扉があって 右の扉を開ければ ベッドが2台置いてあった。
左の扉はバスルームとトイレだと思う。桶ではなくて 花瓶のようなちょっと豪華な壺が2つ置いている。
壺とはいえ 口の部分が結構広いし、便座として使う丸い穴の開いた蓋が その隣の棚に並んでいるので 多分トイレで大丈夫だと思う。
でも違ったらいやだな。
「あの お姉さん、この花瓶は お花摘みで使っているものですか?」
「お嬢様 その通りでございますわ。ご使用に不安がございますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
良かった、トイレで合ってたらしい。小さいのは もしかしたら普段は置いてないのかもしれないけど、私が来ることで準備してくれたんだろう。ありがたいです。
寝室は広いし、クローゼットまであるのでこの部屋で十分だろう。お父さんと一緒にお部屋を使うつもりだと告げれば 了承された。
「では 共有エリアを案内しよう。大きな荷物はそこのクローゼットにでも入れておいてくれたらいいよ」
私たちの答えを聞いて 先生から別の場所も案内すると言われたので マジックバックも全部置いてお部屋をでる。
「3階は私の自室と執務室があるだけなので 一応立ち入り禁止にしておくけど、この屋敷の中ではどこでも好きに動いてくれていいと皆には伝えているからね」
貴族の屋敷で立ち入り禁止が無いとかビックリですよ。
というか他人の家に入ること自体初めてなのに、それが貴族の屋敷って “初めてのお宅訪問” が豪華すぎるんですけど。
2階には 客室の他、魔術の実験室もいくつかあった。
「この部屋は 回復薬とか 様々な調合をするときに使うかな。薬草系の保管は別の部屋にもあるけど、ここにも置いてるから 窓は遮光になっているよ」
ちょっぴり草の臭いが鼻にくるけど 嫌いじゃない。
何となく郷愁を感じると思えば お母さんの調合室に似ているのだと思い出した。
「こっちの部屋は 主に魔道具を作る時に使うよ。多少失敗して爆発しても大丈夫なように 壁に保護の魔法陣が刻まれているから 安心してくれていいよ」
こちらの部屋は窓があるから少し明るい。
だけど雑然と物が置かれ あちこちに紙も散らばっている。メイドさんが「片付けたばかりなのに またこんなに散らかってる……」と愕然としているので、先生が使ったばっかりなのかな?
薬草の調合も興味があるけど、それは村長にも習えそうだから 魔道具作りを学びたいね。
残り二つの小部屋は 薬草などの保管室と、魔道具作りの為の素材置き場だそうだ。
そして2階の半分くらいを占めているお部屋が 図書室だった。
個人の屋敷に所蔵する本の量としてはおかしくないかと思うレベルの本の数。先生が執筆している本も沢山あるんだって。
「まあ、小難しいことを書いて ページを稼いでいるような本も多いからね。1冊使って ファイアバレットについて書いてある本もあるくらいだ。
ヴィオ嬢が読む必要のない本も沢山あるけど、興味があったらここで読んでも良いし 部屋に持ち帰ってもいいよ」
ファイアバレットだけで1冊の本が書けるって 逆に凄いと思います。俄然その本を読んでみたいと興味津々ですよ。
続けて1階に下りれば 食堂に案内される。
貴族と言えば 端っこが見えない感じの長いテーブルだと思ったのに、6人掛けくらいの 少し大きなテーブルだった。
「なにか気になることがございましたか?」
「お貴族様のお食事の時は 長ーいテーブルの端っこにご主人様が座って、皆は反対側に座って、会話もできないくらい遠い!ってなるのが普通だと思ってました」
「ぶっ」
「くふっ」
「んふ……コホン、お嬢様、それは物語などにある王城などのお食事風景なのかもしれませんわ。
わたくしの生家も伯爵家でございますが、お食事のテーブルは このくらいの大きさでしたし、他のお宅も平均すると同じくらいでしたわ。
お食事のお時間は 家族でその日にあった事などを報告し合う場でもありますから、遠くてお話が出来ないなんてことは無いのですよ。
パーティーなどがあれば そのようなテーブルを準備いたしますが、普段はこの大きさでご用意させていただいておりますよ」
ドゥーア先生もスティーブンさんも肩を震わせているけど、メイドさんだけが物語との違いを教えてくれた。
まああんな食事風景 勿体ないお化けが出てきそうだし、仲良くない家族って感じだもんね。納得しました。
「折角ですから ヴィオ嬢たちがいる間は 朝食と夕食を一緒にできるようにしようか。エミリンが言うように 食事時は色々話しやすいと思うし、その日にあった事で困った事なども聞かせてもらえれば対処もしやすい。
朝は その日の予定を話し合えれば計画も立てやすいだろう」
エミリンさんは案内してくれたメイドさんの事だね。狸獣人は耳が小さいんだけど 尻尾が太くてポワンとしていてとっても可愛い。
そして先生の発言に スティーブンさんと エミリンさんだけじゃなく、少し遠くから見守ってくれていた使用人の皆さんがザワっとしている。
どうやら研究に熱中してご飯を食べ忘れる、家に帰ってこないなんてことも多いらしく、私たちがいる間だけでも健康的な食生活をさせることができると喜んでいるようだ。
うんうん、研究者ってそういう人が多いよね。
「ドゥーア先生、私たちね ダンジョンでもお料理してるの。
ダンジョン産の調味料を流行らせたいから 先生にも試食をしてもらっていいですか?」
そういえば!と思って先生に提案してみる。
先生から誰かにというのは難しいかもしれないけど、先生のところの料理人さんが覚えてくれたら そこから流行らせてくれないかなって言う希望的観測。
「ほぉ、ヴィオ嬢は料理もできるのかい? 」
「お料理が上手なのはお父さんなの」
「いや、じゃが ハズレじゃと思っておった調味料を使った料理は ヴィオの方が美味しく作れるじゃろう」
「おぉ、それは楽しみですね。是非 そのハズレという調味料で作ってほしいですね。エミリン、料理長にもその事を伝えておいてくれ。
二人がキッチンを使いたいという時は 便宜を図るようにね」
「承知致しました」
おぉ、キッチンを使わせてもらえるなら 結構本気で色々作れそうだね。貴族の屋敷のキッチンとか 広そうだよね。
食堂を案内してもらった後は地階に下りる。
そこは まさにギルドの地下訓練場と同じような空間が広がっていて、階段状の石段と、土が固められたフロア、壁は勿論防御の魔法陣が刻まれているらしい。
「ここであれば 様々な魔法訓練が出来るからね。魔法訓練は 巻き込み事故防止の為にここを使っているよ。
外にも訓練場があってね 武術訓練なら外の訓練場も使えるから アルク殿も身体を動かしたいときは使ってもらっていい。
ああ、そういえばヴィオ嬢は回復魔法を使えるようになったかい?」
他の貴族の屋敷では 外の武術訓練場はあるけど 地下訓練場はないらしい。ここは先生が魔法の達人だからこそ 実験ができるようにと特別に作らせたらしい。
「回復魔法は練習中です。お兄ちゃんたちとのダンジョン旅で何度か使ったんですけど、皆殆ど怪我をしないから練習できないんです」
怪我をしないのは良い事なんだけど、練習としては困っちゃうんだよね。
だからと言って 知らない人の回復をする訳にもいかないし、中々上達しなくて困っている。
「それは丁度良かった。では 午前の座学が終わった頃と、夕食後の1日2回、うちの者たちに回復魔法の練習をしてくれないか?
勿論ヴィオ嬢の魔力に負担が無い分だけで良い」
そんなに怪我をする人が多いのかと思ったけど、午前のは騎士訓練で外的な怪我をした人たちに。午後はその他の使用人たちにということ。
使用人は怪我をする訳じゃないけど、例えば あかぎれなどの裂挫創、何かにこすれたことで出来る擦過傷、針仕事などで出来た刺創や、腰痛、肩の痛みなどの 持病なのか 姿勢のせいなのか、そういった痛み、歯痛、頭痛、発熱などの突発的な体調不良など。
そういった者にも回復魔法が使えるかの実験を兼ねて練習してみようという事だった。
「ヴィオ、それは大丈夫なんか?」
「ん~、分かんないけど大丈夫な気がする。やってみないと分からないし、効果があるか分からないけどやってみたい」
「はっはっは、それでこそだ。実験に参加してくれる者達には 既に声をかけているからね、夕食を終えた頃には集まるように言ってる。
その日に出来なくてもいい、数日かけて色々試してみると良い」
なんと!
こんな6歳児の魔法を受けても良いと言ってくれる人が既にいるとは驚きである。
でも魔法は使わないと上達しないので 使わせてもらえるのは非常にありがたい。よろしくお願いします。
577
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる