ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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魔導学園へ

第240話 ドゥーア先生との再会

お買い物を楽しんで宿に戻れば お手紙が届いていた。

〖ヴィオ嬢待っていましたよ、聖の日の午後に迎えに行きます 
   ~ダンブーリ・ドゥーア~〗

簡単な一言だけだけど、覚えていてくれた事実が非常に嬉しい。
午後にという事だったので、午前中は食材通りのショッピングを楽しんだ。
油袋は まさかのフウセンカズラモドキのまま販売されているお店もあったけど、瓶に移し替えられているお店もあった。
ただ、ごま油はハズレ袋と呼ばれているだけあって 取り扱っているお店はなかった。そもそも冒険者が拾ってこないのだから販売もされないのだろう。
勿論ウツボカズラモドキは全滅である。残念。

幾つかお父さんが探していたらしい食材を購入していたけど、スパイス関係はお父さんにお任せしているからね。私は醤油と味噌の担当です。


午後というのが何時になるか分からなかったので 早めに宿に戻って食堂で軽食を頂いていたら来客の知らせ。

「おぉ!ヴィオ嬢。少し見ない間に随分大きくなったんじゃあないか? アスランからの手紙にも興味深い内容が沢山あってね」

「ドゥーア先生お久しぶりです。まずは一緒にお昼ご飯を食べませんか?もう食べてきましたか?」

「あぁ、そう言えばまだ食べてなかったね。同席しても? 」

食堂で私の顔を見た途端 喋りながら近づいてきた先生、うん、新しい魔法の事を聞いた時のサブマスとおんなじ反応だね。
とりあえずまだ食事の最中だったのでお誘いすれば 先生もまだだったらしいので 一緒に食べることになったよ。

「アスランからね(モグモグ)珍しい魔法の使い方をするって聞いて(ゴクゴク ゴックン)気になって気になって」

口に物を入れたまま喋る訳ではないけれど 器用なものである。食堂での食事の為 詳細は聞けないと分かっていても 待っていた、会いたかったというのを全身で表現してくれるのが面白い。
私に会いたかったというよりは、私が使う魔法を聞きたかったんだろうね。
うんうん、私も先生に聞きたいことが沢山あるんだ。

いつでも出かけられるように マジックバックは持ったままだったので、食事を終えたところで 先生と一緒に出ようとしたら止められた。

「随分荷物が少ないけれど、君たちの荷物はそれだけかい?」

「大きな荷物とマントとかはお部屋に置いてるから これだけです」

「あぁ!アスランから聞いてないかい? この期間中は 私の屋敷で生活してもらおうと思っていてね。学園も案内するが 魔法の練習なんかは補講を受けに通っている学生もいるからね、あまりヴィオ嬢が魔法の訓練をするところは見せない方がいい。
私の屋敷は ギルドの訓練場と同じように特殊な場所があるから そこで実際にやってみようと思っているんだ」

え?
まさかの先生宅訪問ですか?
先生ってば貴族じゃなかったっけ?貴族の屋敷に冒険者がお泊りとかっていいの?

「ドゥーア先生、それは儂も一緒にという事でいいのでしょうか? 儂らは冒険者ですが」

「アルク殿、あなたはヴィオ嬢のお父上なのですから 勿論同行して頂かなければ困ります。ヴィオ嬢が一人でも大丈夫なのは分かっていますが、初めて来た王都で お父上と離れるのは不安でしょう?
それに お二人で行動する中で生み出した魔法が多いと聞いています。
是非 その成り立ちなども伺いたい」

という事で 一旦客室に戻り 荷物を全部持ってチェックアウトです。
ギルマス会議の期間 この宿が埋まるって聞いてたから どうしようかと思ってたけど杞憂だったみたいだね。

お宿の受付ロビーでマッタリ寛いでいたドゥーア先生の隣には どう見ても執事な感じの服装の男性が立っていた。
モーニングって言うんだっけ?黒いスーツの後ろが長いやつ、アレに濃いグレーに黒のストライプの長ズボン、白いシャツには黒い蝶ネクタイ。正に執事!羊の執事さんです!
手袋はしていないようだけど、執事とフットマンの違いって執事喫茶で聞いた気がするからしてないのが正解なのかな?
というか、この人はサマニア村に先生が来た時にはいなかったよね? お屋敷の人なのかな。

「先生お待たせしました」

「いいえ、急がせてしまって悪いことをしてしまったね。
ああ 紹介しておきましょう、彼は私の助手をしてくれている スティーブンです。
私が留守にしなければならない時も、このスティーブンに何でも聞いて下さい」

「アルク様、ヴィオお嬢様、はじめてお目にかかります。スティーブン・シリルドアと申します。
お二方が屋敷に滞在なさる間 ご不便がないように 私が対応させていただきますので宜しくお願い致します」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

「スティーブンさん よろしくお願いします。
シリルドア様というお名前は ノハシムの辺りを自治されている伯爵様と同じお名前ですね」

執事かと思ったけど 助手さんか。執事スタイルの服装なのは 屋敷では執事も兼務しているのかな?

「おぉ、ヴィオ嬢は国の貴族を覚えたのかい?」

「……驚きました。お嬢様 まさにそのシリルドアは私の生家でございますよ。よくお勉強なさっておいでですね」

まだ覚えてない人も多いけど、ダンジョンで行く場所と 自治する貴族は覚えるように 少しずつ増やしていってるのが良かったようだ。
ドゥーア先生も 驚いているようだけど、先生と会った時は まだ貴族のお勉強をしてなかったからね。
何処の貴族が武闘派とか、誰と誰が繋がってるとかは覚えてないけど 危険な貴族は覚えたよ。

スティーブンさんも一見冷静なままだけど 私たちを馬車に案内してくれる時 尻尾がピルピル高速で振れてたので 好意的に受け取ってもらえてたみたいです。
そう、馬車。
宿を出たら馬車が横付けされてました。
先生とお父さんと私が車内に乗り込み、なんとスティーブンさんが御者さんをするようです。

「先生、先生は貴族様なのに 馬車に護衛はいらないのですか?」

「あはは 貴族、そうですね。この首都で馬車強盗をするような輩はまずいないと思いますが、私の馬車に護衛が居ないのは この馬車自体に結界魔法がかかっているからですね。
後は こんなに頼もしい冒険者がお二人も乗っているのですから、何かあっても 大丈夫でしょう?」

パチンとウインク頂きました。
勿論私に対しての台詞は お世辞だと分かっているけど 嬉しいものは嬉しいのだ。ニヤニヤしちゃう。

「今日はまず 屋敷に案内しますので、荷物を置いて 屋敷内の設備などを確認して頂きますね。
その後 私と再会するまでに宿題にしていた事の確認と、今日までの間に疑問に思ったことなどを聞きましょう。新しい魔法もその時に見せてください。
それを確認してから この後の計画を立てましょう」

「来週末までは学園の授業がありますので、基本的には屋敷内で座学などを行いましょう。
私からの指示は スティーブンに伝達し、彼からも私の方に連絡が来ますから 何か分からない事が有れば彼に聞いて下さい。
スティーブンは 元々私の生徒でした。卒業後はそのまま助手をしてくれていたくらいですから 大抵のことは彼に聞けばわかりますよ」

「再来週になれば学園が長期休暇になります。殆どの学生がダンジョン巡りや 帰省をしますから そうなれば学園内を案内しましょう。
ヴィオ嬢が入学したいと思っていただけるように 色々準備してきましたからね。楽しみにしていてください」

馬車の移動中に先生から説明を受ける。そうか、まだ学園は授業中なんだね。それで休日の今日来てくれたのか。折角の休日を潰してしまって申し訳ないね。
馬車は 宿を出て 魔導学園をグルリと回った裏側へ進んでいく。
先生は貴族だから 勿論屋敷も貴族街にあるんですね。うっかり忘れてましたよ。そりゃ馬車に乗ってないと入れないですわ。

侯爵という地位の高さもあり、どこまで奥に進むのかと思いきや 学園に通いやすいようにという理由で 学園の北門から 馬車で5分という子爵邸が並ぶ辺りに屋敷はあった。
いうて 私たちからすれば 周辺の建物は全部貴族の家である。
馬車以外での出歩きは出来ないね。

門前に馬車が到着すれば 兵士のような人(というか兵士なんだろう)が門を開けてくれる。

「貴族というのは お金を回すのも仕事のひとつですからね。魔法である程度できることでも 敢えて人を使う必要があるのですよ」

私が物珍し気に眺めていたからだろう、先生がそんな事を呟く。
そっか、お屋敷の管理も 魔道具があればできるだろうけど、敢えて人を使うことで人件費が発生するし、その人たちの食費、制服代、その他諸々でもお金は動くもんね。
兵士さんに関しては 門前にいることが訪問客とのやり取り記録にもなるだろうし、必要経費って事なんだろうね。

「ははっ、相変わらずヴィオ嬢は博識ですね。5歳とは思えない素晴らしい考え方ですよ。母上の教えもあるのでしょうが、アルク殿の教えも素晴らしいのでしょうね」

「ギルドで沢山お勉強してきました。
先生、私6歳になったのですよ。来年は7歳で洗礼です。式はしないけど 銀ランクの昇格試験も受けるのです」

「あぁ、レディに対して年齢間違いとは失礼した。6歳の淑女だったね」

一定年齢を過ぎると 若く言われることに喜びを覚えるのだろうけど、まだまだ今はお姉さんに見られる方が嬉しいお年頃ですよ。
でも先生はちゃんとレディ扱いしてくれるから許してあげます。

門から玄関までも 少し馬車は動き 止まったところで馬車の扉が開く。
先生がまず下りて、お父さんが続く。私は足台が高すぎるので 先に下りたお父さんに抱っこされて下ろしてもらいます。
玄関前には メイドさんと 執事さんがずらりと並んでいる。おぉ!漫画とかで見た事あるやつですよ。

「旦那様 お帰りなさいませ。お客様いらっしゃいませ、お待ちしておりました」

揃った声は何だか背筋がピンとしちゃうね。
数週間お世話になりますが どうぞよろしくお願いします。
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