295 / 584
魔導学園へ
第262話 先生とダンジョン 後半
しおりを挟むお屋敷からダンジョンまでは 先生の風魔法ドーピングで走り抜けたので 4時間ほどで到着していた。追い抜いた人や 商人の馬車の御者さんなどは驚いていたようだけれど、どう見ても貴族の馬車だし 知る人は知るドゥーア先生の家紋は有名らしいので 大した騒ぎにはならないだろうと本人が言っていた。
なので早朝すぎて人通りがそこまで多くなかったのをいいことに、殆どドーピング状態で走り抜けたのだ。
ダンジョンに到着したのが朝の10時ごろ、途中呼び出してランチを食べさせたのが12時過ぎ、昼食時に私が書き写したノートを見て 他もそうしようと言ってたんだけど、壁画に戻ったらやっぱり考察が始まってしまったのは研究者あるあるなのだろう。
仕方ないと笑いながら 私が壁画を黙々と写す事10カ所分、17時を過ぎた所でお父さんから終了の声掛けがあった。
見て回るだけでも2時間程かかった このフロア。
写して歩くとなると5時間あっても まだ終わっていない。
「先生方 もう今日は終わりじゃ、流石にダンジョン内での野営をさせる訳には行かんからな。
一旦出て フルシェの町に宿泊しよう。続きは明日もう一度潜ればええじゃろう。
ヴィオの写しはどうじゃ?」
「明日半日あれば写し終わると思う。文字も同じ文字が多いから写し慣れてきたしね」
「同じ文字が多いですか? そうか、他のものとの共通点を探し出してから文字を当て嵌めていった方が……」
「はいはい、その考察は宿に戻ってからじゃな。スティーブンさんは 屋敷に連絡せんといかんのじゃろう?」
「はっ!そうでした。ああ、またオットマールに怒られる……」
家令のオットマールさんは 先生と一緒になって集中しすぎるブン先生に時々厳しいからね。
日帰りの予定が泊りになるのは 何となく予想をしていただろうけど、私が一人で壁画を写している中で、先生と二人 1か所目で考察をし続けていたと知ったら 滅茶苦茶怒られるんだろうな。
言わないでおいてあげよう。
とりあえず手荷物を片付けて 私が最初にダンジョンから出る。先生たちが続いて 殿がお父さんだ。
「あぁ、お戻りになったのですね。随分遅いので心配しました」
出た途端 受付のスタッフさんが駆けだしてきたけど ずっと気にして見てたんですか?
1階だけだし 護衛までついているのに 何が心配だったんだろうか。
とりあえず受付さんには 調査はまだ終わってないので 明日も潜る事だけ伝えてから フルシェの町に移動した。
招き猫亭は 流石に前回来た時点で奥さんが臨月だったし、多分休業しているので 他の高級宿にお泊りです。
私たちを宿に送り届け 馬車を預けた後、ブン先生は冒険者ギルドにダッシュで向かってた。多分お屋敷に速達便を依頼しているのだろう。
こういう時に電話があったら便利だなって思うよね。
翌日も早朝からダンジョンへ。昨日はお屋敷からの移動時間があったけど、今日は町からだから20分くらいで到着です。
夏だからもう日は上っているけれど まだ朝の6時前。
私たちの早すぎる訪れに 受付スタッフもびっくりしてました。
早朝から続けた壁画の写し、10時過ぎにお茶休憩(先生たちは参加せず)12時過ぎにランチ休憩を挟んだけど 14時過ぎには写しも終了。
途中で3組ほど 冒険者パーティーがダンジョンに入ってきた時に、私たちが壁画を真剣に見つめてメモしている姿に驚いていたけど、お父さんが 学園の先生が文字を調べているだけだと言って追い払ってた。
まあ 聞いてきたのは一組だけで、どう見ても学園の生徒っぽかったから 先生たちに気付いて 気になったのかもしれないけどね。
他の二組は 明らかに貴族っぽい人たちに関わらずに済むようにと速足で2階に上がって行ったので、貴族と冒険者の違いがよく分かった。
「あぁ、ヴィオ嬢 写しをありがとう、どうしても現物を目の前にしてしまうと 考えに没頭してしまって駄目だね。非常に助かるよ」
「ええ本当に、アルク殿もありがとうございます。これだけダンジョンという危険地域で 安心して考えに没頭できるとは思いませんでした」
写しもほどほどに 先生たちは絵の内容、文字の意味、言葉の繋がりなどを考え始めて 全然進まなかったからね。
いや、先生たちの中での考えは進んでいると思うんだけど、写すという作業がね。
私はその点 写すと決めたら 内容は気にせず 写す事だけに集中してたからね。あとでゆっくり見て理由を考えようと思ってます。
昨日とは違い 早めの時間に出てきた事で 受付さんもホッと安心した様子でした。
「ドゥーア先生、先生たちは速く帰って調べたい? きっと帰り道でも考えに没頭しちゃいますよね?
だったらお父さんが御者さんをしてくれるので、私が風魔法つかいますけどどうしますか?」
「いや、流石にそんな……」
お父さんとお茶休憩中に二人で考えていた事だ。
きっと手につかなくなるだろうからその方が安全じゃないかと思ってます。
ブン先生は流石に申し訳ないからと断りかけるけど、ドゥーア先生が 「確かに……」と悩み始めた。
「まあ 首都に入る時には スティーブンさんが御者をしておいた方が良さそうじゃからな、首都の壁が見えた時点で声をかける」
お父さんの一言が決め手となって 二人はそそくさと馬車に乗り込んだ。
私のノートも渡したし、きっと話し合いは私たちが声をかけるまで続けるだろう。
結果、首都の外壁が見えたところで声をかけても気付いてもらえず、門番さんも御者席に私たち親子が座っていることを不思議に思って車内を覗き込んだら納得。結局そのままお屋敷までお父さんが御して帰りました。
もちろん風魔法は首都の壁が近づいた時点で終了してますよ。
「おかえりなさいませ、旦那様、そしてスティーブン? 君には少し聞きたい事と話したいことがあるので 後で私の部屋へ」
「あ、ああ……ただいま戻った」
「は、はい……。アルク殿 あの、ありがとうございました」
お屋敷の門前に立つ騎士さんも既に全員が顔見知り。お父さんが御者をしていることを不思議に思ったようだけど 車内を覗いて納得の顔。
玄関で待っていてくれたオットマールさんは 呆れた溜息を吐いた後、お父さんと私に深々と頭を下げてきた。
そして馬車から下りた先生たち二人に 絶対零度の視線とおかえりなさい。
こんなに怖い “おかえりなさい” 初めて聞いたよ。
隣に立つエミリンさんもヒンヤリした笑顔です。きっと昨日帰らなかった事が原因でしょう。
到着した今、すでに夕食時間なので お説教は後のようですね。
エミリンさんは ダンジョン帰りのそのままで晩餐に行かせたくはないけれど、ゆっくり用意していれば食事の時間が遅れてしまうと 苦渋の決断!みたいな感じです。
その場でクリーンをして汚れを落としたけど そういう事じゃないらしい。
「お嬢様を可愛らしく着飾れるチャンスはそうないのですよ? 旦那様方はそういう事をお考えになられないから……」
もう!とプリプリしてるけど、理由が微笑ましすぎるので 「明日からまたお願いします」と言っておきます。
485
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる