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ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第356話 ウミユ その23
しおりを挟む私たちが10階のボスを倒したのが ウミユダンジョンに入って8日目の火の日だった。
あれから1週間がたった同じ火の日、待ちに待っていたテリューさん達が合流した。
実は11階をローリング中、襲撃者以外の冒険者たちが2組ほど11階に下りてきたのを確認している。
つまり 破落戸たちのボス戦はすでに終了していたのは間違いないという事。
冒険者たちの存在はキャッチしたけど、広いフロアで【索敵】をしていたからこそ気付けた距離。
こちらから聞きに行くのもおかしな話だし 結局関わることなく彼らは12階に下りて行った。
テリューさん達が10階のボス戦をしたときにはタグは無かったというので、多分彼らのどちらかが回収してくれたんだろうと思う。
踏破後にギルドに提出するんだろうけど 10枚ものタグ、パーティーも合同という訳じゃないだろう。
ギルドはどう思うんだろうね。
「いやあ、持たせてもらってた飯が 途中でなくなったらどうしようかと思って 結構走っただけあった」
「うん、1週間離れてただけなのに レスもシエナも随分料理の腕が上がってる。くやしい」
「あ、お鍋とかの調理道具も沢山買ってきたの。あとで見てもらっていいかしら?」
「うまい!パンも好きだったけど ポアレスも好きだ」
久しぶりに全員集合の昼食だったので リクエストされた 牛丼、かつ丼、親子丼の丼三兄弟を作りましたよ。
ちなみに 誰が牛丼で 誰が親子丼とかじゃないよ、1人3つの丼を食べるという事です。
私は牛丼の上に 粘り花と粘り芋を乗せてお醤油を少しだけ垂らして混ぜ混ぜしながら頂いてます。美味い。
「え~、どうだろうって思ってたけど そうやってヴィオが食べてるの見ると美味しそうだね。僕も2杯目はやってみようかな」
オクラを採集した時は 何か分かっていなかったけど、切った時に糸がミョーンとなったのを見てドン引きしていた皆さん。
日本でのオクラなんて スーパーで緑のネットに綺麗に揃えて入れられたあれしか見た事がないので どんな風に成長するのかは知らないけど、こちらでは花のように咲くらしい。
鑑定の結果【花になる直前の蕾、粘りがあるが食べられる】と書いてあった。
スーパーのものよりは大きいけれど、キュウリほどまで育ってはいない。
おろしたトロロと細かく切ったオクラは茶色い牛丼の上に乗せれば 色合いも綺麗になる。
「トンガお兄ちゃんもやってみる?」
嬉しそうに頷いたので 残っていたすり下ろしたトロロと 茹でたオクラを切ってあげれば、いそいそとお替りをよそってきたので 牛丼の上に乗せてあげる。
私の真似をしてオクラとトロロを先に混ぜてから 牛丼と一緒にパクリ。
「はにほへ、んま、んま」
牛丼は飲み物ですか?
カレーに対しては飲み物だと言う人はいたけど、私にとってはカレーも牛丼も食事です。ツルツルと食べれるから 豪快に 器に口をつけたまま ズルルっと幸せそうに食べてます。
「うわっ、マジか。兄貴がそんなになるほど? え~、俺も食ってみる」
「俺も試してみる」
俺も俺もと 男性陣が次々に牛丼をお替り。すりおろしたトロロはもうないので 自分たちでお願いしますね。茹でたオクラは鞄に入れたままだったので それは出しておくので 食べる分だけ切って下さい。
女性陣は 悩んでいたものの 既に3杯食べてますからね。
流石に今回は諦めたようです。次回は絶対に試したいとの事、牛丼は週に1回くらい登場しそうかな?
「あ~、幸せだった」
「みんなで一緒にこうしてテーブルを囲んでワイワイ食べるってのも美味しさが増すわね。急いでたからって事もあるけど、4人だとちょっと殺伐とし過ぎてたしね」
食堂によくあるような寸胴鍋、あれ2杯分の親子丼と牛丼が空っぽです。かつ丼は流石に1杯ずつ作る手間があったので一人一杯だったんだけど、他はお替り自由だったからね。健啖家がこれだけ揃うと 作り甲斐もあるというものです。
「さて、幸せ気分の後に嫌な報告だが、これを済ませとかねえと 残りのダンジョンも気になるだろうから報告しとく」
さっきまでのフニャフニャ気分から一転、真剣な表情になったテリューさん、それを見て皆も姿勢を正した。
「結論から言うと 依頼主……この場合破落戸共に対しての依頼者だが ヴィオを狙った理由について聞き出すことは出来なかった」
銀ランク上級の4人で聞きだせないって 凄い手練れだったってこと?
「あ~、強い弱いって事じゃ無くてな、まず3人組って話だったんだが 2人は既にいなかった。
逃亡したのか、別件でいなかったのか、戻ってくるのかも不明。
ただ、宿の女将からは 数日前に旅装をした二人が出て行ったって事だったから 別件でいなくなったんだろうと思う」
「ということは アジトには一人だけがいたってこと?」
「ああ、オトマンがいたから 武力抵抗は出来ないようにしたんだけどな、歯の奥に毒を仕込んでたらしくて 尋問前に自殺された」
マジか……。
一流の殺し屋とかってそういうことするイメージだね。なんだろう、変態貴族に売るための仲介者かと思ったけど、もしかしたら変態貴族の直属の飼い犬だったのかな?
事件の匂いがプンプンしますよ。
よくある物語の展開からすれば 実は私がやんごとない人の子供で 傀儡か政略結婚の駒にしたいと思った 現政権反対派の筆頭公爵とかが 犯人だったりするよね。
「え~っと、ヴィオはそういう物語をどこで読んでくるの? サマニア村には本屋さんがあったとは思わなかったんだけど……」
「あ、え~と、魔導学園とかドゥーア先生の図書室でも沢山本を読ませてもらったよ。
あとはお母さんに読み聞かせでいっぱい色んなお話を聞いてたから その記憶かな。どこで読んだかは覚えてないの」
お母さんごめんね。かなり色んなところで 都合よくお母さんを使ってますが、きっと天国からツッコんでいる事でしょう。私が死んだらDOGEZAするから許してね。
「まあ そっち側の専門家だったのは間違いないと思う。
身分証になるようなものは商業ギルドのカードだったけど、これはメネクセス王国とリズモーニ王国の2枚あったし 両方名前が違ってた。
冒険者ギルドのカードは魔力登録が必要だから偽造出来ないけど、商業だけのカードは書類の提出だけだから偽造しようと思えば出来るんだ。
とりあえず 2枚ともヘイジョーのギルマス宛に送って詳細を調べてもらう事を依頼したから ダンジョンが終わったら 何らかのことは分かってるだろうと思う」
オトマンさんの言葉に商業ギルドと冒険者ギルドの違いを知る。
私は最初に冒険者から登録したから このカードに商業ギルドの情報を上書きしたけど、商業ギルドだけの人はカードが違うらしい。
後から冒険者登録をした場合は 冒険者ギルドカードに統合されるらしいけど、一生冒険者にならない人もいるだろうしね。
そもそもそうなったのは 大店などは貴族がやっていることが多く、お貴族様の尊い身体を無暗に傷付けるなんて不敬である!的な事が理由らしい。
それで偽造され放題なんて わざとな気がするけど 権力者に関わるとろくなことがないから見ないふりをしておこう。
結局襲撃予定だった破落戸は 勝手にボス戦で全滅、指示をしていたらしい1人は自殺、2人は逃亡。
何だかスッキリはしない結果となってしまったけれど、まあこのダンジョンと ウミユの町でつけ狙われる可能性は無くなったという事だ。
憂いがなくなったのであれば スッキリした気分で後半も楽しめそうです。
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