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ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第360話 ウミユ その27
しおりを挟むおはようございます。
清々しい朝、11階以降は朝と夜があるので 朝の爽やかな空気感というのも感じられて中々良いものです。
森を見ながらの露天風呂も ほとんど使うことが無かったランタンをふたつほど土壁の上に乗せてもらっているので、仄かな明かりの中 遠くに宵闇茸の光を見つけたりして 夜景を楽しむなんてことが出来てます。
「じゃあ 行ってきます」
「おう、お前らなら大丈夫だと思うが 気をつけてな」
以前ケーテさん家族と一緒にダンジョンへ行った時、同時にボス部屋前に下りたことによるボス数増減の話をしたので セフティーゾーンで土竜の人たちとは一度お別れ。
採集は程々に、向かってくる魔獣だけを討伐しながら階段を目指す。
「そういえば お兄ちゃんたちは ここを踏破した後、ドゥーア先生のところから 直接メネクセスに行くんだよね?」
「うん、土竜の皆もあいつらの事を直接報告した方がいいだろうからって 戻るみたいだしね。
途中は別行動になると思うけど、いくつか指定ダンジョンに似ている中級ダンジョンがあるって教えてもらったから そこに行くつもりだよ」
冗談半分で言ってたメネクセスへの同伴は 本当になったようです。
でも 大きな国に移動するのに あの6人が一緒だと思えば 心配しないで済むね。
いや、お兄ちゃんたち3人に危険が迫るとかはあんまり考えてないんだけど、ちょっと規格外が更に増してるから 変な相手に絡まれるんじゃないかなって心配があるんだよね。
「まあ 俺らも最初は びっくりしてたはずの事を 今じゃ当り前に受け入れてるからな。土竜の奴らが驚いたことで “ああ、そうだったな” とか思うもんな」
そんな彼らも今では受け入れているから どこが最初のラインだったかを忘れてしまった問題。
まあ、お兄ちゃんたちはもうすぐ金ランクって人達だから 何かあっても大丈夫でしょう。
「ヴィオは帰ったら 銀ランク昇格だろ? 一緒に祝ってやりたいけど お預けだな」
大国に行けば 移動だけでもかなり時間が掛かる。多分次にリズモーニへ戻ってくるのは早くて2年後くらいだろう。
「まあ 2年では難しいじゃろうが、3年目には銀の上級になっとる可能性が高いぞ。
そしたら 金ランクの祝いを一緒にすればええ」
「その時は お父さんも一緒に金ランクになってるから 二人分のお祝いだね」
「まじか……。けど あり得なくないのがやばい。
ヴィオ、金ランクにはそんなに急いでならなくていいと思うぞ」
ルンガお兄ちゃんが ちょっと焦ったように言ってくるけど ノンノンです。
お父さんと最年少&最年長金ランク祝をしたいんだもの。
まさかお父さんがそんなに早く金ランクになれると思ってくれているなんて思ってなかったけど、10歳か。頑張らないとね。
「ふふっ、ヴィオなら10歳の金ランク 本当になれそうだよね。
父さんも 金ランクになって直ぐに引退なんてことにならない様に 頑張んないとね」
「それが一番不安な事じゃな。加齢にだけは抗えんからなぁ」
「あと5年弱で如何こうなるとは思えねえっす」
クルトさん、私も同意ですよ。お父さんってば 体力の衰えどころか 魔力だって鍛えてるし、こないだの忍者走りだってそうだけど、だんだん人間離れしてきている気がする。
いや、元々獣人だからとかいうツッコミは不要です。そういう意味じゃなく マジで超人じゃないかと思ってます。
「到着~! さて、無いとは思うけど、既に3回当たっているヴィオがいるから想定はしておこう。
もしここに変異種が出るとしたら どんな魔獣だと思う?」
「種族が全く違うって事はないだろ?てことは熊の変異種だよな……?」
「兜か鎧か?」
クルトさんの言う兜と鎧というのは “兜熊” “鎧熊” という種類の熊だ。
兜の方は 頭と手足が硬い鱗のようなもので覆われているらしく、兜をかぶっているような姿からそう名前がついている。
鎧の方は 完全二足歩行の熊で 武器も使えるし、胸当てなどの防具も身に着けているらしい。オークナイトみたいな感じかな?
でも 見た目が人っぽくなったオークナイトとは違って 熊のままだというからちょっと見てみたい。
「いや、その二体じゃったら変異種ではないな。
三つ目の変異種じゃとしたら ジュエルベアーじゃろうな」
「ジュエルベアー?」
三つ目熊の額にある魔石と似ているが ユニコーンの角のように 尖った魔石が生えているらしい。
三つ目熊も魔法を使うけど 土と木魔法だけというのは資料にあった。
だけどジュエルは 今までに発見されただけでも 複数属性を2~3種使うという事が知られているだけで 固定の属性はないだろうとの事。
熊としての力技の他、魔法攻撃、角による攻撃と 中々凶悪コンボを決めてきそうである。
「うわぁ、中々凶悪だね。
魔法耐性もあると思った方が良さそうだね。
それでも最初は同じかな、三つ目もしくはジュエルを壁で隔離、先にウルフをやろう。
魔法が効くようなら それを試してみて、もし無理なら武器で行こう。
皆はそれでいい?」
うん、良いと思う。
直接身体に触れる様な攻撃は弾かれても 少し離れた壁は問題なく作れるのは既に実験済み。どれだけ壁が耐えれるかが問題だけど、足止めが出来れば何とかなるだろう。
扉に触れる前に お兄ちゃんたちも身体強化を自分にかける。
常にかけている私とは違って お兄ちゃんたちはボス戦とかの必要な時にしかかけてないからね。
私も結界と強化にブレがないことを確認していざ扉へ。
開いた先は真っ暗闇、扉が閉まるまでは相手の姿が見えないのはいつも通り。
バタンと閉まった扉の音と同時に 少しずつ明るくなるけど その前に暗視で確認。角はツルンとした目にしか見えないので変異種ではなさそうだ。
「三つ目熊が1体、ビッグベアが2体、ウルフが5体」
「ありがと、じゃあ ヴィオは熊の分断、ルンガはウルフの足止め、俺がウルフを仕留めていく。クルトはビッグ2体をまずは片して」
「「了解」」「わかった」
見えた情報を共有すれば トンガお兄ちゃんから素早く指示が飛ぶ。私は熊を三分割だね。
「【エアウォール】【ウォーターウォール】」
まずは熊と狼を分断するように風の盾で包み込み 一瞬固まったところを 3体別になるように水の壁で分断する。
ボス戦は必ず 最上段の中央に一番強い敵がいて、お供は左右、雑魚は前と分かりやすく並んでくれる。だからこそこの分断がやりやすいのだ。
ビッグベアは 凶悪だけどそれだけだ。ヒグマのような見た目で体当たり、腕のぶん回し、噛みつきなどを防げば問題ない。
今も 粘着壁に気付かず体当たりしたせいで 全身の毛が絡まって動けなくなっている。
こうなればクルトさんは目を瞑ってでも倒せるはずだ。
手前のウルフたちは 足元から大量の蔦に絡みつかれて 動けないまま唸っております。
壁を作ってないから 唸り声も聞こえるけど、狼ってワンワン言うんじゃないんですね。『VAWOON』って感じ。
なんだろう、日本語で書くと「バウーン」なんだけど ちょっと違うのよ。
「バウーン」ではなく「VAWOON」
まあ どっちでもええとツッコまれそうなので 私のどう聞こえたか問題はこれくらいにしておこう。
蔦で絡められたウルフを サクサクと首チョンパしていくトンガお兄ちゃんは ちょっと楽しそうです。
さて、私は三つ目熊かな?
三つ目熊はどうやら2体のビッグベアを見て 壁に触れるのは得策でないことに気付いたらしく 壁に近付くことなく 土槍で中から攻撃しています。
私も実験を兼ねて 三つ目熊に向かって【アースランス】と【ウッドランス】を使ってみたけど、この二つは奴の得意属性だからか 表面に当たったと思ったところでパシュンと消えた。
水棲魔獣に火魔法を使った時と同じ感じだね。
次に水壁から 【ウォーターランス】を出してみる。
これは三つ目熊が自分の周囲に出した 土壁のようなもので防がれた。
「凄い!魔法で攻撃を防御した魔獣は初めて見たよ」
「メイジの上位種になってくると 複数属性を使うし 壁での防御もしてくるぞ。覚えておくとええ」
そっか、魔獣は上位種になれば賢くなるし そんな事も出来るようになるんだね。
マントを着てるだけで判断してたら痛い目に遭いそうだね。気を付けよう。
三つ目熊の額にある魔石が少し光を帯びてきている。
どうやら魔力を高めているらしく 何らかの攻撃魔法を使おうとしているのだろう。一度は見ておきたいとお兄ちゃんたちに言えば 了承をしてもらえたので 念のため 私たちを足元から全身を包み込むように水の壁で覆う。
バチバチと音がしているのでは?と思うほどに魔石が光った後に出したのは土の槍、先程とは違って 電柱くらいの太さがある槍が一点集中で 壁の一部を穿った。
ドオォォォォォン!
かなりの音が響いたんだけど、水の壁は粘着力だけではなく吸着力もある物だから ミョ~ンと一部が伸びたものの 穴が開くことも、勿論破れることもなく槍を受け止めていた。
再び熊を見れば 魔石の光は完全に失われており、エネルギー切れになった事が分かる。
「じゃあ 俺が行くぞ?」
「クルトよろしく」
その言葉で三つ目熊の近くで待機していたクルトさんが 長剣でスパッと首を落とす。
すでに戦意喪失していた感じの三つ目熊は 抵抗することもなく キラキラエフェクトと共に消えた。
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