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ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第361話 ウミユ その28
しおりを挟む三つ目熊を討伐した場所に現れた宝箱からは 豊作ダンジョンらしい食材の他、回復薬が数本と短剣が入っていた。
「剣??? 宝箱から武器が出たのは はじめて見たね」
「え、そうなの? あれだけ沢山ダンジョンに潜ってるのに珍しいね」
珍しい宝物に驚いていたら トンガお兄ちゃんからビックリされた。そうなの???
「まあヴィオが潜ってたのは初級ダンジョンが多かったし、中級は俺たちと一緒になってからだろ?だったらしょうがねえんじゃねえの?」
「そっか、初級とかってそうだったっけね。
ヴィオ、中級以上のダンジョンだと 結構武器が出ることは多いよ。
魔法武器とか属性武器は 魔道具屋でも買えるけど、やばい性能があるとしたらダンジョン産だね。
この短剣は……、へぇ~珍しい、氷の短剣だって」
トンガお兄ちゃんが鑑定眼鏡で短剣を調べてくれた。
どうやら魔力を流しながら使うと凍るらしい。どれくらいの範囲が凍るのかは分からないけど、なんかファンタジーの武器って感じがするね。
「あ、でも お肉とかの解体で使ったら 保存にもいいかもね。
まあ私たち皆時間停止のマジックバックだから意味がないかもだけど」
「氷の剣と聞いて調理を思い浮かべんのなんか ヴィオくらいだろうな。
炎と氷は 冒険者なら憧れる武器の代表格だぞ」
クルトさんが呆れたように言ってくるけど、凍るナイフの活用方法なんて それくらいしか考え付かないのだから仕方がない。
短剣に関しては 私が持つには大きいし重たい。自分用の双剣があるから不要という事で クルトさんが持つことになったよ。
最近長剣を使わない時は短剣も練習してたから丁度良さそうだね。
あまりゆっくりしていては 土竜の皆の待ち時間が長くなってしまうので、回復薬は其々に分けて 食材はお父さんの鞄に収納。
忘れ物が無いか確認したら21階へ。
索敵をすれば中層階の森との違いがよく分かる。
フロア全体を鬱蒼とした樹々が生い茂っているため 視界が良い場所を選んで歩くという事は難しいだろう。
「うわぁ、これは【索敵】を持ってなかったら引き返してたね。
広さは11階と同じくらいかな……。とりあえずセフティーゾーンを目指そうか」
ということで 森を歩き始めたんだけど、上級ダンジョンという理由がやっとここに来て分かったよね。
ここまでは美味しいお肉と 沢山の素材、ありがとう豊作ダンジョン!って浮かれるだけだったんだけど、流石にこの森にフライングラビットや カウカウはいない。
大きな二足歩行の豚と人型がセットになって行動しているのは オークナイトとオークの団体だろう。
10階層の中ボスが普通に歩いているというのも このダンジョンを踏破する人が少ない理由なのではなかろうか。
それ以外にも ギルドの資料に情報が無かった事もあるけど、よく分からない魔力反応が幾つかある。
「木の傍にある小さい反応は 多分茸系の魔草だよね? 小さくないけどなんか動いてるのもあるんだよね、これなんだろう」
「ん~、可能性としてはミニトレントかな。上の階が森なのにいなかったのが不思議だったけど、ここから出るなら納得かも」
「トレントって 魔木だっけ。枝でブンブンしてくるんだよね?
でもあれって動かないって話じゃなかった?」
豊作ダンジョンは森になっていることが多いから 魔木関連の情報も調べていたけど、今のところトレントに会ったことはなかったんだよね。
しかもトレントは上位種のエルダー以上じゃないとその場所から動けないと書いてあった。
だけど今索敵で見えている変な奴は動いているんだよね。
「あ~、ミニトレントは動くぞ。見た目は切り株だな。
太い根っこを足にしてちょこちょこ動き回んだよ。人の気配を感じたら切り株のふりして 通り過ぎる時に根っこを引っ掻けてきたりすんだよな」
「そうそう、弱いから問題になんねえけど、他の魔獣とやり合う時にいると地味に鬱陶しいから先に片付けといた方がいいぞ」
成る程、確かにオークナイトとやり合おうとしている時に足を引っかけられたら 思わぬ怪我をすることもあるかもしれないよね。
今動いているのは 人がいないからなんだね。
この階から出現するはずのアンテッドは 昼日中だからいないようだ。ブラックウルフも夕方からしか出てこないもんね。
フロア全体のマッピングは 相変わらず3人のうちの誰かが代表で行い、マッピングした人が先頭を歩くようにしているお兄ちゃんたち。私は毎回フルマッピングしているし、お父さんも多分している。
それ以外にも 歩くときに自分の周囲数メートルの索敵は全員がやっていることもあり、慎重にゆっくりと進むべき森を これまでと同じくらいの速度で歩いている。
「あ、ヴィオ来て。 ほら、あれがミニトレントだよ」
先頭を歩くトンガお兄ちゃんに呼ばれて行けば 100メートルほど先に小さな切り株がモゾモゾを動いているのが見える。
顔がある訳ではないけど なんとなく動きがコミカルに見えて可愛い。
「で、あいつらは自分自身で敵を倒すことが出来ないから 誰かに倒してもらう必要があるんだよね。
だからミニトレントがいる周辺には 必ず別の敵がいるんだ」
そう言われて 切り株を中心とした周辺を確認すれば、確かに木の上に蛇、私たちと反対側50メートルほどにゴブリン集団がいることが分かる。
トレントは死んだ生物が土に還ることでその栄養素を吸収すると書いてあった。
森であれば生き物そのものだろうし、ダンジョンだったら血液とかそういうものなのだろう。オークとかは本体をバリボリ食べるらしいけど、流石に魔木は肉食ではないらしい。
まずはどういう風に戦うのか、ミニトレントがどんな風に動くのかを確認するように言われ、私とお父さんは 今居る場所から動かずに お兄ちゃんたちを見守ることにした。
何やら小躍りしているように見えたミニトレントは、お兄ちゃんたちが近づいたことでピタリと動きを止めて 先ほどまで出ていた根っこも落ち葉の下に隠してしまった。知らない人ならただの切り株だと思うかもしれないね。
切り株を避けるように通り過ぎようとした瞬間、ミニトレントはその根っこをビョーンと伸ばし トンガお兄ちゃんの足に絡まりついた。
同時に木の上から 茶色い蛇が下りてくる。
「はじめて見る蛇だ!」
「あれは フォレストスネークじゃな、麻痺毒を持っておるから気を付けるんじゃぞ」
イエロースネークよりは細いけど、茶色い蛇は 木の枝に擬態するのが上手だった。
まあこの蛇は 木から下りてくる前に ルンガお兄ちゃんの【ファイアボール】でサクっと倒されたけどね。
ミニトレントは2体、クルトさんとトンガお兄ちゃんの足に巻き付いたまま、別の根っこで地面をバンバン叩き 音を立てている。
「ああして魔獣を呼び寄せるんじゃ」
お父さんの説明を受けて切り株の賢さを知る。
というか 切り株のどこにそういう事を考える器官が付いているのだろうかと考える。
いやいや、国民的ヒーローの菓子パンだって 頭を使い捨て出来るんだから あのヒーローだって 記憶は頭ではなく身体のどこかにあったんだろう。
首から上に記憶を司る器官があるとしたら 毎回「ここはどこ?」になるはずだもの。
ああ、ダメダメ、そんな事は考えてはいけない。あれは脳ではない、美味しい美味しい餡子なんだから。
顔をお食べなんて 結構サイコなことを言ってくるヒーローだけど
食べさせといて「頭が欠けて力が出ない……」とか言ってピンチになるけど
普通ならそれで食べた相手が 「自分のせいで……」なんて超絶後悔しそうになるはずだけど
絶対にピンチになれば どこからか車を走らせて 替えの頭を持ってくるおじさんと、メジャーリーガーもびっくりな投球技術をもつ女の子。
どちらかというと おじさんが真のヒーローなんじゃね?とか思ってはいけない。
あの投げ技があるなら 女の子でも 敵を倒せんじゃね?とか思ってはいけない。
閑話休題
私の推しは おにぎりでした。
じゃなくて、お兄ちゃんたちですよ。
バンバン根っこで敵を呼んだ切り株君のお陰で 近くにいたゴブリン隊が 嬉々として近寄ってきましたよ。格好からして ゴブリンナイトをリーダーとした5体だ。
「よし、ヴィオ こんな感じだって分かった?」
「うん、ありがと」
クルリと振り返って確認してくれたので 大丈夫だと言えば 足元の切り株に【ファイアボール】をぶち込んだお兄ちゃんとクルトさん。
本当に見学させるためだけに攻撃を受けるとか、ほんと凄いよね。
ゴブリン集団は ルンガお兄ちゃんの木魔法で身動きできない状態。木魔法が得意なメンバーが多いので、森での戦いは非常にやりやすい。
もちろん木がない場所でも使えるんだけど、ある方が使いやすいからね。
周辺の樹々から蔦が伸びてきて ナイトは吊り下げられている状態。メイジがいないから蔦を燃やす事も出来ないで ギャッギャギャと叫んでいるだけだ。
木の幹に縛り付けられている奴、ぐるぐる巻きにされている奴、両足に絡みついた蔦で逆さ吊りにされた奴、ナイトは両手を左右の木から伸びた蔦で絡めとられて釣り上げられているから空中十字状態だ。
「お兄ちゃんたち凄いね」
「そうじゃな、蔦の使い方もうまくなったし 魔法の発動が早くなった。魔力操作の訓練を頑張っておる成果が出とるな」
うんうんと二人で感心しながら見ていれば サクサクと身動きが取れないゴブリンたちを倒していく。
ナイトから落ちた魔石以外は拾う必要もなく、蛇のお肉とナイトの魔石が戦利品となった。
ミニトレントは枝を落としたけど、トレントの枝とは違い 杖の材料にもならないとの事なので放置です。
その後は 同じようにミニトレントに出会っても 奴らの攻撃範囲に入る手前で【ファイアボール】を使うので足止めされることもなく進むことが出来た。
お陰で2時間弱で1つ目のセフティーゾーンに到着することが出来た。
昼食を作って 土竜の皆を迎えないとね。
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