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ウミユ遺跡ダンジョン 後半
第362話 ウミユ その29
しおりを挟む「さてと。この感じで鬱蒼とした森が最後まで続くんじゃ カウカウの再登場は望めそうにないね。
あれだけ狩ってきたから肉の在庫はまだあるけど、ちょっと心許ないよね」
元々保存食だけで行動していた人達だから 量を減らしても大丈夫だとは思うけど、毎回結構な量を皆食べるからね。1フロアを2日かけることを考えれば 今までの使い方をしていたら足りなくなる可能性はある。
「ん~、けど オークナイトもいるし 大丈夫じゃない?
そういえば オークナイトの肉って10階で出たけど 食べてないよね?」
ギクッ‼
10階ボス部屋で出たお肉、鑑定眼鏡でも〈オークナイトの肉〉と出たあれは 保存したまま まだ出していない。
前にオーク肉を嗅いだ時の衝撃が忘れられないのもあるけど、豚みが残っているとはいえ 二足歩行の相手を食べるという忌避感がないとは言えない。
「皆が見捨ててたハズレを食べるヴィオにしては 変なこと気にするんだなぁ」
ルンガお兄ちゃん、ハズレ素材は臭いで決めつけられていただけじゃん。
「それなら肉もそうじゃね? オークはマジでヤベエけど、ナイトの肉は美味いぞ。
それに二足歩行って言うなら ラットだって攻撃してくるときは二足だし、フライングラビットだって二足だぞ?」
……そうですね。
あの魔獣たちは 人型でもないから何も考えてなかったけど、よく考えれば 兎は後ろ脚だけで移動しないし、ネズミも然り。うん、気にするのは止めておこう
「じゃあ オークナイトの肉をはじめて食うヴィオの為に 今日は俺が作ってやるよ」
クルトさんがそう言ってくれたので 宝箱から出て以来 マジックバックの奥にしまい込まれていたお肉を取り出す。時間停止しているし、マジックバックだから奥とか手前とか無いんだけど気持ちです。
お肉は倒した個体から出たものと、宝箱から出たものがあるので かなり多い。
お父さんとクルトさんで相談した結果、お肉本来の味を楽しむために肉串と 野菜炒めにするとの事。
本来の味を楽しませたいと思うくらい美味しいという事だろう。
ダンジョンだと肉に加工された状態で貰えるから良いけど、地上だと解体の必要があるよね……。
うん、オークナイト以上はギルド持ち込みにして 解体依頼しよう。
「良いと思うよ。オークナイトはともかくとして、それ以上の上位種は 皮だけじゃなくて内臓系も薬の素材とかで買取してもらえるからね。
ゴブリンもジェネラル以上になると 全身買取に回せるから ギルドに持ち込みする方が早いよ」
「でもさ、それって魔獣を丸ごと入れることができるマジックバック持ちの冒険者じゃないと無理じゃない?」
「いや、その上位種を倒せるだけの実力がある奴らなら 大概マジックバック持ちだからな。
銀ランクの中級以下だと 逃げる一択だと思うぞ」
ああそういう事か。
そういえば中級ダンジョンでは ハイオークまでしか会った事が無かったかもしれないね。
お父さんたちが肉を、私がスープを、トンガお兄ちゃんがテーブルの準備をしていたら 土竜の皆が到着した。
流石は銀ランク上級パーティー、私たちが21階に来て30分くらいで下りてきたし、無属性の索敵じゃないのにこの森を この速さで追いつくとか凄いよね。
「お~、もう準備万端かよ。結構早く下りてきたつもりだったのに 早いな」
「私たち 多分5人が通った道を選んだから 殆どエンカウントしないで来れたわ、ありがとう」
到着して早々 【クリーン】で身綺麗にしたら 直ぐにテーブルセッティングをしてくれる6人は流石です。
「今日はヴィオのオークナイト初体験だからな、10階のボス部屋で出たやつを使ってるぞ」
「そっかぁ、ヴィオはまだ食べたことがないのね。 オークナイトも美味しいけど、ジェネラルとかはすっごい美味しいんだから。
大抵倒した冒険者が食べちゃうから出回らないけど、スタンピードとかの時は 素材全部回収だから そういう時には 貴族が買い占めに走るくらいなのよ」
スタンピードって 結構危険な事のはずなのに その時には貴族が素材を買い求めるって中々ですね。
「スタンピードってダンジョンから溢れる奴だよね? それって出てきた魔獣はドロップアイテムにならないって事?」
昔 お父さんに聞いたことがあった質問だね。あの時は忘れたって事だったけど。
「おお、ダンジョン産の魔獣だけどドロップアイテムにはならないぞ。浅い層の魔獣なんかは 深い奴らに踏みつぶされたりするから原型残ってない事も多いけど、その分貴重な素材が採れる深層階の魔獣の全部が素材として活用できるからな」
「スタンピードは危険だけど 防波堤から外に漏らさないで討伐しきれたら かなり高額素材が集められるいい機会でもあるのよね。
だからこそ メネクセスのダンジョンでは 時々 スタンピードを起こすために 入場禁止期間を設けるダンジョンがあるくらいよ」
ええっ!?
それって大丈夫なの?
「ダンジョン毎に違うとは思うけど、同じダンジョンであれば 人が立ち入らなくなってから スタンピードを起こすまでの期間は あまり変わらないようなのね。
だからスタンピードが起きる時期に 指名依頼した金ランク冒険者や 銀ランクの上級を集めて 一気に叩いてもらうって訳」
「あんまり凶悪なのがいるダンジョンではできないけど、まあ 一種の祭りみたいなもんだな」
……マジか。
人間の欲求って凄いね。
普段は恐ろしいと思っている魔獣ですら 迎え撃つ準備が出来ていれば スタンピードすら人為的に起こすなんて。
「リズモーニのダンジョンでもそんなことするところあるの? お父さんも参加したことある?」
「いや、儂は無いな。たまたまスタンピードが起きたダンジョンの討伐に参加したことはあるが、まさかあえて起こすようなところがあるとは知らんかった。
リズモーニ王国ではそんな事をしておるダンジョンはないと思うぞ、聞いたことがないだけかもしれんが……」
「いや、アルクさん リズモーニではないと思うぞ。この国のダンジョンって中級以下は冒険者の育成用だろ?上級はヤベエのが多いし、あえてスタンピードを起こすとか無理だろ。
メネクセスは うまみのない初級ダンジョンは殆どないし、中級以上は豊作か魔道具、鉱山ダンジョン以外は潰されるしな。
そういう中級の旨味がないダンジョンで 良い感じの魔獣だけがいるダンジョンをスタンピード用にとってたりするんだ」
成程ね。国によってダンジョンの使い方も違うって事だね。
リズモーニは 小さなダンジョンでも 初心者育成のために村を作って管理してるもんね。
そう考えると 冒険者の国なのかもしれないね。
お兄ちゃんたちは スタンピードを起こさせるダンジョンが気になるようだけど、これはメネクセスに行っている間に一度は訪れそうだね。
まあ 金ランクを集めて 安全を確保したうえでやるんだったら 経験として良いのかもしれないけど、絶対なんてことはないんだから 無茶はしないで欲しいね。
でも 行くんだったら是非その感想を聞かせてもらいたいです。
と、そんなダンジョンのお話を聞いていたら ジュージューと良い感じに肉串が焼き上がっている。
肉串というか鉄板焼きですね。
一番シンプルなスパイスだけで味付けされたはずの肉なんだけど、匂いがヤヴァイ。
焼き台で野菜炒めを作っているけど、そのソースの匂いよりも 目の前の肉が焼ける匂いの方がヤヴァイ。
「ヴィオ 涎が垂れそう」
クスクス笑いながら 手巾を口元に当てられて 粗相しそうになっていた事に気付く。トンガお兄ちゃんありがとうです。
「さあ、もうええじゃろう。クルトもいけるか?」
「大丈夫っす、ルンガ 大皿4枚くれ」
大皿4枚に野菜炒めを取り分けたら テーブルへ。
もう目の前の肉から目が離せません。
「では頂こうか」「「「「いただきます!」」」」
いつの間にか土竜の人たちも一緒に言うようになった食前の挨拶。
お父さんが一口大に切り分けてくれた お肉を一口パクリ。
「ん~~~~~~~~(お口の中が旨みと上質な脂で大洪水や、肉のパレードやで~)」
美味しくて頭の中をマロが踊りまくっているけれど、考えているのは私だから語彙が貧弱すぎる。
だけど凄く美味しいのだよ。まさか あの豚みが強いオークがこんな美味なお肉になるなんて。正に美豚!あ、これコンプラ引っかかるかもだな。やめとこ。
「お父さん、凄い美味しし!」
「ぷはっ、オイシシってなに!? 」
あ、噛んでた。美味しいってことだよ。
皆も一緒になって笑ってから じゃあと食べ始める。どうやら初オークナイト肉を食べる私のために待っててくれたらしい。
お父さんも嬉しそうに 頭を撫でてくれてから 自分の前にある肉に手を伸ばす。
ルンガお兄ちゃんが野菜炒めを小皿に取り分けてくれたので それも食べてみる。
お野菜に肉の旨みが絡まって凄く美味しい。脂身が多い訳でもないからいくらでも食べれそうだ。
「クルトさん、これも凄く美味しいね。ナイト狩りしないとだね」
「くっくっく、まあ美味いし 出来なくもないから良いけどな。
普通はオークナイトなんか 銀ランク中級以下の奴らは逃げる相手だからな。ほんと、他の奴らと行動するときは気を付けろよ」
そうか、そうだよね。
このダンジョンを終えたら お兄ちゃんたちはメネクセスに行ってしまう。数年は戻ってこない事を思えば お父さんと二人での旅になる。
それは良いけど、きっとまた風の季節には ダンジョン巡りをするだろう。
その時に他の人たちと一緒になることもあるかもしれない。その時はよほど気を付けていないと危険だね。肉……、貯肉しておこう。
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