ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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再びの首都

第369話 ドゥーア先生のお屋敷へ

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「アルク殿、ヴィオお嬢様、〔サマニアンズ〕の皆様、〔土竜の盾〕の皆様、ようこそおいで下さいました。
旦那様には既に連絡をしておりますので、本日のお夕食はご一緒出来れば嬉しいとの事でした。
皆様を客室へご案内させていただきますが、〔土竜の盾〕の方々は男女別か ご夫婦ごとかどちらのお部屋割りになさいますか?
〔サマニアンズ〕の皆様は同室がよろしいでしょうか、個室だと少し手狭となりますが」

オットマールさんの伝達魔法のお陰か、玄関前には久しぶりのメイドさんたちがずらりと並んで迎えてくれた。
ホントに、私たち平民ですからね?
あ、土竜の二人は貴族だったけど もう実家とは縁を切ったらしいから やっぱり平民なのかな?

「え、俺たちもお屋敷に泊まって良いんですか?」

「俺たちは 男女別で大丈夫だ、です、ありがとう、ございます」

お兄ちゃん達は 宿に泊まって通うつもりだったらしい。
土竜の人たちは 前にお屋敷でお世話になってたんじゃないの? テリューさんの言葉が変になってるけど大丈夫だろうか。

「うふふ、お嬢様とアルク様のお部屋は以前のお部屋をそのままにしておりますのでね、ご案内しますわ。皆様も 各部屋付の者がご案内いたしますので どうぞ」

エミリンさんが嬉しそうに手を引いてくれるので 一緒にお屋敷に入る。
どうやら本当にあのお部屋を残してくれていたらしい。
土竜の皆が男女に分かれたので、全員が3人ずつの部屋割りになったみたい。

「さあ、お嬢様からのご連絡の時点で4の鐘が鳴りましたからね、然程お時間はありませんが 軽い湯あみは出来ますわ。
しっかり磨いて差し上げたいですが、それは就寝前に致しましょうね。
アルク様の 晩餐用のお洋服も クローゼットにご用意させていただいておりますので、どうぞそちらをお召しくださいませね」

「あ、あぁ、感謝する」

エミリンさんのパワーに圧倒されるのは初めてではないものの ウミユの町ではそんな事なかったから忘れてたね。
あそこはアウェイだったから我慢してたのかな?
あれよあれよという間に風呂に入れられ、磨かないとはマッサージのことであり、しっかり石鹸で磨いてもらいましたよ。

「あら、お嬢様ってば 本当に半年でご成長なさったのですね。エミリンに聞いてましたが ドレスの裾直しをしたのにぴったりですわ。
もう少し余裕があると思いましたが これは次にお越し頂くときのドレスは新作が作れますわね」

「あら、ダンジョンに潜っていらしたのは一月程でしたのに、その間にも少し伸びていらっしゃいますね。袖も 裾丈も余裕が全く無くなっていますわ」

ドレスを着付けしてくれているメイドさんが 驚いてるけど、私も驚いてますよ。
まさか こないだウミユでお会いして成長した分 全てのドレスの裾直しをしてくれていたなんて 思ってなかったです。
だけど そうか、この一月でも成長してるなら嬉しいね。
豊作ダンジョンは よく食べて よく寝て 良く動いているから、子供の成長には凄く良いのかもね!


ドゥーア先生のお屋敷では髪も瞳も 色を隠さずに過ごしていたので、イヤーカフは外して準備をしてもらっている。
数日滞在する間に このイヤーカフを作った魔法陣を見せてもらうつもりなんだ。もし壊れた時でも 自分で作れるようにね。
土竜の人たちにはこの色を初めて見せるけど、私に関する事は他言無用になってるし あの人たちなら大丈夫だろう。

「あ、そういえば 炊飯器は作れましたか?」

「ええ、そうでしたわ。最終確認をお嬢様にしていただきたかったので 完成とは言えませんが 明日 ご覧になって頂けますか?」

おぉ!一月で完成間近まで作ってくれているとは流石です。
お米も沢山採ってきたし、是非お試ししてみたいね。
エミリンさんと魔道具談義をしながらも 髪は複雑に編み込まれ リボンで可愛くしてもらってます。シンデレラの魔法使いも あの魔法の呪文を唱えながら 凄いスピードで ヘアメイクをしていたのではなかろうか。

「うふふ、やっぱりお嬢様の髪色で 整えさせていただけると 可愛さが爆発いたしますわ~」

「ええ、わたくし達の髪色では この華やかさは出ませんでしたものね。お可愛らしいですわ」

完成した自分を見て 姫っぷりに驚く。
そして作り上げたメイドさんが頬を染めながら 褒めちぎってくれるのも前回と同様です。どうやら 髪の長い人達同士で 色んな髪型を練習してくれていたとの事。
用意してくれた皆にお礼を言って お父さんが待っている客室へ向かった。

「お父さん 格好良い!」

前回と同じように開襟シャツは薄桃色で 私の髪色に合わせてくれたことが分かる。胸元から覗く林檎のチャームも赤いから とっても可愛い。

「そうか、この色はヴィオだったら可愛いじゃろうが、儂が着るには可愛すぎんか?」

「そんなことないよ!お父さんは姿勢も体格も凄く良いし 男前だからね、ピンクのシャツも凄く素敵で似合ってるよ!」

多分着付けのお手伝いをしたであろうメイドさんが満足そうに頷いているので お父さんは一度断ったんだろうね。でも男性のピンクシャツって似合う人には似合うと思うよ。

「ええ、アルク様 とても素敵でいらっしゃいますわ。ほら、お二人が並べばとても素敵」

私が今日来ているドレスは 薄茶色のドレスで、お父さんの髪色ともマッチする。お父さんは私の髪色を纏っているし、エミリンさん達が色々考えて準備してくれいたことがよく分かる。
お父さんも照れているけど 格好良いを連呼したからか 「そうか」と言いながら 嬉しそうに笑ってくれた。
子煩悩で料理上手、強くてイケメン、こんな人が独身なんて信じられないよね。
物語だったら主人公クラスのお父さん、私がいなかったら ギルドに行くたびに小娘が絡みついてくる未来が見えるよ。

「では 参りましょう。皆様の準備も整ったようですわ」

ということで お父さんと一緒に食堂へ。先生も帰ってきたらしいので私たちが最後なのかもしれない。

「おお、ヴィオ嬢 またうちのメイドたちの趣味に付き合わせたようだね。うん、元気な姿が見れてよかったよ、おかえり」

食堂に入れば ドゥーア先生が嬉しそうに迎え入れてくれた。

「先生も社交と学校お疲れ様でした。ウミユで沢山新しい食材が見つかったから 明日から料理長さんと一緒に作ってみるね。
あと、お部屋と お洋服もありがとうございます 」

新しい食材という言葉に 側にいた料理長の目がキランと光ったよ。
20階層までで採集出来たものだけでもかなりあるからね、楽しみにして欲しい。

よく見れば 女性陣もドレスまではいかなくても いつもの冒険者装備ではなく 少しおめかししているし、お兄ちゃんたちも お父さんと同じように シャツにスラックスという普段見慣れない格好をしている。

「わぁ!皆も素敵だね! お兄ちゃんたちも格好良いし、アンさん達も お貴族様みたい!」

思わず手を叩いて喜べば、トンガお兄ちゃん達からも「ヴィオもお姫様みたいだぞ」と褒められた。
クルトさん「髪の色と服が違うだけで化ける」とはどういう意味ですか?


口を開けたまま固まっていたネリアさんが ポロポロと涙を流している。

「アイリス……」

ん? アイリスはお母さんの名前だけどお知り合いですか?
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