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再びの首都
第368話 首都へ移動
「さて、思ったより早く帰還できたから 首都に戻ろうと思えばすぐに出発することもできるがどうする?」
ウミユダンジョンを終え、手続きも終了した私たちは 現在ウミユの町に向かっているところだ。
確かにネリアさんのワンパンでラスボスを倒したおかげで まだ早朝と言ってよい時間、選択肢はいろいろある。
「武器の修繕を頼んだらしばらく動けなくなるよね。
だったら あの先生のところでもしばらく動けないだろうし、武器は首都の方で修繕しようと思うけど どう思う?」
トンガお兄ちゃんの言葉に 皆が賛成の声を上げる。
「私も 調理器具とかもう少し良いのが欲しいから首都のお店を覗いてみたいわ。
まさかこんなに沢山レシピを覚えられると思ってなかったから、ここで買えるものをとりあえず揃えちゃったけど、どうせならちゃんとしたものを使いたいもの。
今ならクルト君とアルクさんにも助言をもらえそうだし……」
「まあ俺もプロの料理人じゃねえからあれだけど、ダンジョンでも使いやすい調理器具とかでよければいいぞ」
「そうじゃな、儂も随分調味料とスパイスが増えてきたから 小分け出来る容れ物も増やしておきたいから付き合うぞ」
スパイスの調合は また教えて欲しいとクルトさん、そこまで覚えるのは難しそうだから 調合した幾つかを買取させてほしいと 女性陣、どうやら このまま王都行が決定したようです。
「直通馬車もあるけど 歩きでいいか?」
乗合馬車なら2日、直通馬車なら1日半らしいけど、それに乗るためには町に入る必要がある、入町料も余計な出費だし 今日は全く動いてないと言ってもいいくらいだ。
ということで 全員一致で歩いていくことになったよ。
街道は馬車がよく通るし 魔獣とのエンカウントを避けたい一般人もたくさん歩いているので、私たちは道を逸れて 真っすぐ首都に向けて歩くことにした。
街道は いくつかの町を経由できるように 少し大回りしているからね。
「父さん、この辺まで来たら アレやっても良くない?」
「ん~、まあ ええと思うが 土竜の皆はどうするんじゃ? やったことがないじゃろ?」
「「あ、そっか」」
「ん?なんだ?」
周囲に人が居なくなった辺りで トンガお兄ちゃんからウインドダッシュをしないかという提案。
土竜の皆は何だどうしたと 興味津々。
という事で簡単に説明すれば 男性陣が大いに盛り上がってやりたいと挙手したのは まあしょうがないよね。
「ここで練習してから行くの? 何ならお父さんとお兄ちゃんたち4人でやってもらえば、私が土竜の皆と一緒に行くよ? 誰かに抱っこしてもらわないとだけど」
「私が!」
「いや、ネリアはちいさ……んん! 小柄だから 流石にヴィオを抱っこするのは難しいだろ。
俺でいいだろ?」
まあ妥当だよね。
オトマンさんと レスさんは職業柄 そこまでガッチリしていない。成長してそれなりに身長も大きくなった私は お父さんと並んでも遜色ないくらいガッチリなテリューさんじゃないと ちょっと申し訳ない気がする。
「じゃあ テリューさんお願いします」
「お、おぉ。
なんだ、ヴィオ 飯食ってるか? 軽いぞ?」
いや、ここ1か月以上一緒にご飯食べてたよね? 前に比べれば 1回の摂取量も増えてきてますよ?
テリューさんの片手抱っこ状態になれば、テリューさんを中心に 2人ずつ並んでもらう。
アンさんはお兄ちゃんたちの方へ移動し、 あちらもクルトさんを中心に2人ずつ並ぶことにしたようだ。
左右対称の方が使いやすいからね。
「じゃあ 背中に追い風、足元は吹き上げるように風が当たるから それに合わせて走ってね。強すぎたら教えて」
「ふふっ、先生が馬車にしてたあれを自分で体験できるのね」
「聞いてたけど 体験できるとは思ってなかったな」
怖がるよりもウキウキしているというのが 流石銀ランクだよね。
ルンガお兄ちゃんも準備万端という事でいきましょう。
「【ウインド】」
5人の背中と足元に風を起こせば ググっと押し出される。それに抗わず走り出せば 一気に加速できるのだ。
「おおぉぉ!何だこれ!」
「すご~い!気持ちいい~」
「これは 凄いな!」
「私 風になってる~」
皆口々に 楽しげな声を上げて走ってます。オトマンさんは 久しぶりに尻尾がピーンと伸びて 耳がピルピルしているし、目がキラキラしているので 無言だけど楽しそう。
「いいな、これ! これは 誰でもできるのか?」
「ん~、得意属性に風があった方がいいと思うよ。トンガお兄ちゃんは風の魔法を少し使えるようになってるけど、ウインドダッシュは使わないし」
「シエナと テリュー以外は全員使えるって事だな。練習しようぜ、そしたら 高原とか砂漠とか楽になる。メネクセス王国も広いから 国内移動に馬車が要らなくなるぞ」
「確かに、帰ったら馬車を買うことも考えてたけど これが使えるならいらないな。
よっし、俺たちもドゥーア先生のところにいる間に使えるようになるぞ!」
新たな目標も決まったようですね。
確かに 私とお父さんの旅が時短で進んでるのも 人目を避けてウインドダッシュしてるからだもんね。
数か月かかる道のりが 数週間とか、お金もかからないし 良い事尽くめです。
2時間ほど走ったところで一旦休憩。
「そういえばずっと魔法を使いっぱなしだったな。ヴィオ大丈夫か?」
「うん、体力使ってないし、大丈夫だよ」
抱っこスタイルだから 結界も身体強化も使ってない。【索敵】と【ウインド】だけなら 普段よりも使用魔力は少ないくらいだ。
ただ クルトさんは 流石に2時間使いっぱなしは疲れたらしいので 軽食と水分補給の休憩となった。
「大分進んだな。あと1時間も走れば 街道に合流するじゃろう。
流石に街道近くまで この走りで行くと 魔獣と勘違いされるかもしれんからな、30分ちょっと走ったら 残りは普通に行く方がええじゃろう」
「確かに かなりのスピードが出てるしな。王都に近い街道じゃ勘違いされるとまずい」
貴族も使う街道だから 斥候役とか 気配察知に長けた護衛がいることもあるらしい。そんな人たちに 驚異的な速さで 近づいてくる魔力が10体分察知されたら……、察知した方も恐ろしいだろうね。
この辺は魔獣も殆ど出ないから そこまで気配察知が出来る奴はいないだろうけど、高ランク冒険者がいないとは限らないからという事です。
10分ほどの休憩を挟んだら 今度はお父さんに抱っこされています。
あちらはルンガお兄ちゃんが中央に立って オトマンさんとネリアさんがあちらに参加。両端に二人が立つことで 風の動きをしっかり確認したいとの事。
なのでこちらも レスさんとアンさんが外側に、シエナさんとテリューさんがお父さんの両サイドに立ってます。
さっきは初体験で浮かれすぎて 風の割合とか全く考えてなかったんだって。
休憩中に お兄ちゃんたちが練習した時の失敗談を聞いて反省してました。
私の【索敵】によるマッピングは 【索敵】をしながら通過したことがある場所が記録として残っている。
なので 王都からウミユまでは すでにほぼマッピングが出来ている状態だ。
ウミユに来るまでの道も アンヤから ジャトラ、そこから真っすぐウミユまで街道無視で歩いてきている。なので 既に今居る場所も マッピングが重なって 王都までのマップが完成しているのだ。
お父さんの抱っこに変わったのはそれも理由のひとつだね。
この完全マッピングに関しては お兄ちゃんたちにも内緒だからね。
≪直進20キロくらいで街道だよ≫
≪そうか、予想通りじゃな≫
「そろそろ普通に戻すぞ~」
「わかった」
頭の中のマッピングで 街道までの距離を告げれば お父さんが指示を出してくれる。
これだけ距離があれば 多少気配や魔力が読める人が護衛にいても 今の私たちに気付いてないだろう。
1時間ほど更に歩いたところで昼食休憩を挟み、更に3時間ほど歩けば 首都リズモーニが見えてきた。
「マジか……」
「馬車でも早かったけど、まさか走って半日で到着するとは思ってなかった……」
「今日私たち 走る事しかしてないわ」
「ボス戦したの今朝だし あれもネリアが ワンパンで終わらせたしな」
「あれは 私だってびっくりしたんだから」
「けど 魔法陣でキラキラ~ってして 一気にアンテッドを殲滅しちゃったのは 物語の聖女様みたいで とっても素敵だったよ」
「ヴィオ、良いこと言うね。確かに 冒険者の聖女って感じで素敵だったよ」
最後はオトマンさんが嫁を褒めて イチャコラ始まったけど この人達は皆仲良し夫婦なんですよ。
早朝にウミユの町を出てきた私たちは、4の鐘が鳴る頃に首都リズモーニの外延部に到着した。
首都に戻ってきたら連絡をするように言われていたので オットマールさん宛に伝達魔法を飛ばした。
昼食時間に飛ばしておけばよかったんだけど うっかり忘れてて 外延部が見えたところで思い出したんだよね。
『これから迎えに行きますので 冒険者ギルドでお待ちください』
え……?
まさかの返答に驚いたけど、伝達魔法の紙は他人には見えないから お父さんとテリューさんに内容を告げる。
「あ~、そっか。確かに貴族街に俺たちがそのまま入るのは難しいだろうからって事だろうな。
これは どっちのギルドを想定してるんだろうな」
たしかに、外延部と町の中 2か所に冒険者ギルドはある。私たちはまだ外延部に入ったばかりで 田んぼ状態だから 外延部のギルドですらまだ距離はあるんだよね。
という事で失礼は承知のうえで 再度オットマールさんに確認すれば 外延部のギルドの方が貴族街の門を使えるから 早いとの事。
確かに 南門はかなり長蛇の列だもんね。
ということで 貴族に迎えに来させるとは何様だ状態ですが、あの屋敷の人たちに遠慮しても断られるだけなのはもう知っているので甘えることにしましょう。
少しだけペースを上げて ギルドに向かえば ほぼ同時くらいに見覚えのある馬車が ギルド前に到着した。
周りの騒めきは多少あったものの、御者がオットマールさんだった事もあり、さっさと馬車に乗り込んだ私たち。何事もなかったように11名の冒険者を乗せた馬車は ギルドに立ち寄ることもなく立ち去った。
偶々その場に居合わせた冒険者たちは 「多分貴族の冒険者だったんだろう」という事で会話が終わり 特に騒がれることはなかった。
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