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王総御前試合編
80 カードの魂
しおりを挟むセンはオフィールのカードを高々とかまえた。くるのか、あれが。
「オドは満ちた。もうこの天空要塞のどこにも逃げ場はない、次の一撃で終わる」
大天使の加護で強化されたあの技からはたしかにほとんど隠れ場はないだろうな。ちょっとやそっとの防御や回避も意味はないだろう。
「なら……逆にちかづきます!」
ハイロはカードたちを率いて、一斉につっこんでいく。
いいアイデアだ。そして練習してきた通りでもある。やはり接近戦こそルプリアの活きる道。
「考えましたわね。味方のいるところなら安全……と思ったのでしょうが。ちかづいたところで力の差は見えていますわ!」
ハイロは分身したルプリアと氷の魔女計3体を突撃させ、敵の狙いを分散させる。このままいけばシャンバラとゼラフィムの魔法の射程距離圏内のため、ただの無謀な突撃だ。
「……あきらめません。私の引いたカードは……【クロス・カウンター】」
クロスカウンター。接近戦にかぎり、防御か回避成功で確定反撃のわざだ。
だが今スピードの増した天使軍団が相手では……
「いまさらそんなカードでなにができる! なにか狙いがあっても無駄だ。スキル【賢者たちの沈黙】!」
そう、ブラフだ。
センがクロスカウンターを封じた、そう思えるタイミングで俺はカードを手にかまえる。
「と、みせかけて……TRPG解除。[目]の良さが逆効果になったな、セン。ハイロのカードをよくみてみろ」
変装の魔法を解いたのと同時に、ハイロが持っていた本当のカードの姿があらわになる。
ハイロがかまえていたのは、『氷の魔女』のカード。
TRPGでセンにはトリックカードクロスカウンターにたしかに見えていたんだろうが、それは大間違いだ。
カードとハイロのまわりに、冷気が集中していく。
「氷の魔女のカード……!? 氷魔法か! いや、オフィールの光の刃のほうが威力は上!」
たしかに今のオフィールの力なら、氷の魔法を相殺することなど他愛もないだろう。ただし、
「発動できればな」
「なっ……!?」
ここで使ったのは【ソードダンス・エアリアル】だ。と言ってもはちゃめちゃにブンまわしたわけじゃないし、そもそも俺の剣は遥か下の地面にある。
だからただ[呼び寄せた]だけだ。ハイロがクロスカウンター、もとい氷の魔女のレコードを発動したと同時にただ剣をセンのほうに向かわせた。
隙だらけのセンの背後に魔法の剣が横回転で飛んでくる。センはウォリアーじゃなく人間、あれをくらえばただじゃすまない。
コマンドの自分かオフィールか。選択があるように見えて、結局どちらが欠けても軸を失うことになる。
避けようが、呪文封じで剣を止めようが、ゼラフィムで自分を守ろうが、なにをしてももう氷の魔法は発動している。あの剣はただ一瞬でもセンの気を散らすための仕掛けだ。
勝負はついた。ゼロ距離で氷魔法をあてられ全身凍りついたオフィール。これを失った向こうにもう勝ち目はない。
サインオブウィンターで敵全体を弱体化し、ついに殲滅して試合は終わった。
勝ったのは俺たちだ。
霧が晴れ、テーブルにもどってくる。
だんだんと歓声がきこえてきて、やがてそれは耳がこわれそうなほどの爆音に変わった。
奇声。悲鳴。怒声。勝利の音楽。拍手喝采。なにがなんだかわからないほど会場に響き渡っていた。
「や、やった……」
気づけば顔中汗まみれだった。試合がおわってはじめてわかった。
呼吸がみだれて、今ようやくひと息つけたような感覚がした。
「勝ったの?」
おどろいている様子のローグに、ハイロも目を丸くしてあわてている。
「や、や、やっちゃ……か、か、勝っちゃいま…………」
「負け……た? そんな……」
チェイスだかセンだかわからないが、そんな声もした。
――雨?
ふと顔のうえになにかが落ちてきた。だが雨にしてはなにか変だ。
「なんなんだ、これ……」
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