カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

79 弱者の追撃

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 またあのオフィールの技がくるまえに、勝負をつけないと。
 空中戦ができるカードが必要だ。ここはチャレンジしておきたい。

「【魔女のホウキ】」

 氷の魔女が女の子らしい座り方で魔法の箒(ほうき)に乗り空を飛ぶ。
 かなりの飛行スピードで、速度だけならゼラフィムオフィールより数段上だと確信できるほどだった。
 オフィールの背後をとることに成功する。バブルスノウを撃ったが、直撃は避(さ)けられた。
 かすった程度ではほとんどダメージは入っていないようだ。白金の鎧には大した傷はついていない。

「ソラの覇者に有象無象の刃がとどくはずもない」とセンは自信をみせる。

 やはりラッキーパンチ狙いじゃだめか。至近距離で仕留めないと。
 そのためにはもっと攻めて、隙をつくる必要がある。
 いまのでその布石は打てた。センは空中の氷の魔女のほうを気にしている。
 俺は黙ったまま、味方にアイコンタクトを送る。
 ハイロ、ここだ。ここでやるぞ。
 カードたちをオフィールのいる真下の地点まで集める。

「俺は……信じる。リバーストリガー【天地無用(てんちむよう)】!!」

 このカードは相手の一番高いところにいるウォリアーの高さが地面になる魔法。薄く透明なオドの層があらわれ、ハイロたちを空中に引き上げていく。俺も遅れて空に発つ。
 とっさの事態に相手の反応もおくれ逆にこちらはオフィールまでゼロ距離。またとないチャンス到来となる。

「まずい! ゼラフィム! 守れ!」

 ゼラフィムを寄越してきたが後出しじゃもう遅い。テネレモのドレインルーツ、魔女の氷がオフィールに刺さった。
 かろうじて突撃したルプリアはゼラフィムが立ちふさがりトドメとはいかなかった。
 しかしゼラフィムが拳でなぎ払おうとするのにあわせルプリアは[空中の地面に逆さに立って]かわし、カウンターで衝撃魔法をゼラフィムにたたきこんだ。
 ぶち当てた。直撃だ。
 地面になるとは言ったが反対方向に立てないとは言ってないぜ。

 引力はあのオドの層にかかっている。当然こちらは逆さまでも落ちないし地面を蹴れるので、下に向かってジャンプという荒わざが可能になる。敵の攻撃はあたらず陣営も完全に混乱していた。

 またゼラフィムにダメージが入る。いいぞハイロ、いける。一気にいっちまえ!

「や、やっぱり高いです……こわいです……」

 いいところで、へなへなと座り込むハイロ。
 あ……あれ? 

 よく見るとルプリアも限界がちかい。動きのキレがおちている。
 最後のチャンスかもしれないんだ。もってくれ……!
 
「なぜ……まだついてこられるんだ……」

 センはこの異様な光景が信じられないといったふうにうなだれていた。

「知恵と勇気で空をとろうというんだね。……それが君たちの強さか。……でも、もっと君に勝ちたくなったよ」

 やはりここで折れるわけがないか。わかってはいるが最後まで手ごわい。

「……リバーストリガー【大天使の加護】! この軍団に勝てるかな」

 光る羽たちが舞い降りて、ゼラフィムとオフィールを包み込む。二体は黄金の輝きを放ち始め、みちがえるほど威容を増す。
 ここにきて全体強化か! 
 あのカードは知っている。翼を持つウォリアーのスピード、パワー、耐久すべてを大幅にアップさせる光類の超魔法。
 ゼラフィムの光線、オフィールの刃が強化され、こちらの攻撃魔法は弾かれる。どころか、相手の勢いを止められずに反撃をもろに食らってしまう。

 とうとうハイロとルプーリンも体力のそこが尽きかけ、空の地面にひざをついた。ハイロはもう限界を越えていてもおかしくない。休まず前線で動き回っていた彼女の疲労は俺の何倍もあるはずだ。

 でも相手もかなり消耗している。どうしてもここで決めたい。決めなければ。時間をあたえてしまえばノコウの再生で2体は回復されこれまでの努力が水の泡になる。そのうえオフィールのスキルもまたいつきてもおかしくない。ましてやセンの連発コンボがきたらジ・エンドだ。
 浮遊系の魔法をつかったか、シャンバラとノコウも空の地に降り立ち戦列に加わる。
 彼女の目は燃えていた。戦った今だからわかる、こいつもまたれっきとしたカードゲーマーだと。

「わたくしたちが勝ってみせますわ……!」

「……俺も負けたくない。カードたちが雑魚じゃないってことを証明したい。だから……全力をつくす。カードは信じてやらないと、そのカードがどんなに強くても力を発揮しない。だが逆に、信じてやればどんなカードにも意味がある。魂が宿るんだ」

「意味のわからないことを……」

「なんでもないように見えることにも可能性があるってことさ」

 可能性を本物にするんだ。自分の信念を力に。
 それがカードゲーマーの……

「エイトさん、すみません、さっきは足がすくんでしまって……でも、もう大丈夫。行けます。ベストを尽くして……優勝、したいです」

「……ああ。かならずやり切ろう」

 足がすくんだ、か。本当はもう足が痙攣(けいれん)しはじめてうごかないんだろうな。でもそれを言わずにまだ彼女は戦おうという。
 俺はハイロを信じる。信じて、すべてをやり切ってみせる。

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