カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

78 ローグのアドバンス

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 やられるところだったが、なにかにひょいと持ち上げられて乱暴に壁にたたきつけられた。その衝撃で目をひらくと、狼が俺の背をくわえてここまで運んできてくれたらしい。ローグも灰だらけになりながらハイロとルプリアを抱えて守っていた。

 目の前には瓦礫の山がひろがっていた。俺の倒れていた場所あたりにソードオブカードが突き刺さっている。
 あのオフィールの攻撃が来るまでの一瞬のあいだ、俺はローグだけは確実にのこそうと『リフレクション』で彼女をまもった。そしてテネレモの盾でハイロたちのダメージを軽減し、俺とアーキテクチャはスパイラルで回避した。

 一回目の攻撃はそれでなんとかなったが、センのスキルによる二回目のほうはほとんどどうにもならなかった。ローグの方面をのぞくほぼ全員があの魔法を食らった。
 頑丈なテネレモと運よく軽傷で済んだ氷の魔女はまだ戦えそうだった。しかし俺と一緒にいたアーキテクチャは、もともとの耐久性がひくいのもあってセンの近くで倒れたまま起き上がれないようだった。

「いい働きだった。アーキさん」

 アーキをサルベージする。
 いつのまにか片目の視力がもどっている。さっきの爆撃に目の魔法も巻き込まれたか。

 ハイロがなんとかというような感じでふらふら起き上がり、それを見てセンもふたたびゼラフィムに乗って後退していく。
 目の魔法が使えなくなった今状況を把握しやすい位置に移動しなければならない。痛むカラダを起こして、テネレモとともに高台の階段へと向かう。

「ようやく決着のときのようだな」

 瓦礫をけっとばし、チェイスがローグに詰め寄る。

「決着ね……。そんなつもりはなかったけれど……壁になるというなら斬り破る」

「フッ。だがもう限界だろう? 味方の小さなミスをかばいながら戦ってさすがのあなたも息が乱れ始めている」

「よく見ているじゃない」

「そのくらい判断するさ。引退した者に負けたら部隊の連中に面目が立たんからな」

「そう……いい目をするようになったわぁ」

 ローグたちの会話がきこえてくる。決着のときはたしかに近い。この試合においてもすでにおたがいのカードは少なくなってきている。

「とっておきにしておきたかったのだけれどね。私にとってエンシェントの大会もこれが最後でしょうし……お披露目といくわ。自分自身のもうひとつのスキルを……」

 こちらの戦力はテネレモ、狼、ルプリア、氷の魔女か。ずいぶん減ってしまったな。だがカードたちのがんばりのおかげで、向こうもすでにゼラフィム、オフィール、アポロン、シャンバラまで削ることができた。
 高台へとたどりつく。天空要塞の地が目前にひろがっている。俺たちの戦っていた場所はずいぶんめちゃくちゃになってしまった。 
 ゼラフィムと共に宙に浮くセンと、おたがいカードを持ってにらみ合う。
 カードゲームで向かい合ったときと同じ感覚がする。いよいよ最終局面だ。

 オフィールは大技のほかに翼で起こした風で刃状の魔法を飛ばすことができるようだ。
 ゼラフィムの光線とシャンバラの魔法をかいくぐって、ルプリアとハイロ、氷の魔女がつっこんでいく。
 俺はときおり『リフレクション』などの罠や魔法などで支援をし、またハイロもトリックを混ぜてやってくれてはいるが、現状[攻めている]というより[しのいでいる]というほうが正しいだろう。マシーナリーもベボイもアーキもいなくなって単純な火力差には厳しいものがある。
 せめてあのアポロンの電磁バリアさえなければこちらもやりようがあるのだが。
 ローグは試合前、チェイスは任せてほしいと言っていた。彼女を信じるしかない。

 そのチェイスがふたたびスピードフォースをつかい突進してきた。今度はアポロンだけでなくシャンバラとオフィールまで加速させる範囲にいる。
 ローグはそれとみて黒い霧を出現させ、それに隠れるのではなく手でつかんだ。闇のかたまりのような黒い炎が燃えるようにうごめいて、彼女の手にだんだんと燃えひろがっていく。

 彼女はアポロンのほうに手をのばす。すると3つの球体のうち1つがなにかにつかまれたかのように動きを停止し、そして次には黒い炎が出現し爆発してアポロンを吹き飛ばした。
 黒い霧の応用技なのか。おいオイオイ。そんな技があるなら早くつかってくれよ。
 すぐにそうしなかったわけはわかった。あのスキルをつかってからローグは異常な量の汗を浮かべて、息苦しそうにしている。

 その隙にレーザーが狼に命中し、狼は後方へと吹き飛び倒れた。ローグは退かずに同じ要領でチェイスに近づきながら次々とアポロンを仕留めていく。そのたびにローグの手の炎は彼女の体をむしばんでいった。だんだんと彼女の身体が虹色のオドの欠片へと溶けていく。
 チェイスは人間の限界を越えた反応速度で、その黒炎までも槍さばきではじき飛ばしてみせた。近づききったところでローグと刃が交わりあい、両者ともにおたがいの武器が遠くへと転がっていった。
 その後がすばやかったのはチェイスだった。腰元のダガーをかまえ、ローグへと突き立てる。しかしそれより早く白い毛並みの狼が躍(おど)り出てチェイスの肩に食らいついた。最後の力をふりしぼった一撃だろう。
 
 相打ちだった。チェイス、狼ともにその場に伏し、ローグは胸を押さえてその場にうずくまる。

「ローグさん!」

「エイト、ハイロ……。必ず勝って、探索のカードを手にいれなさい。……まだ逆転の芽は残ってる。頼んだわ」

 チェイスとローグは姿を消し、ゲームから除外された。
 ただここから外れるだけで死んだわけではないのだが彼女がいなくなったことにショックはある。
 ハイロがそれに気をとられたすきに、オフィールの光の刃が俺のいる高台の方へと飛んできた。

 攻撃をうけて建物自体が半壊し、爆風でテネレモが横に吹っ飛んでいった。俺はすかさず落下しそうになるテネレモを追いかけて飛び出し、なんとか手すりにつかまりながらテネレモをキャッチして抱えた。
 一方の手はしがみついているのでやっとだった。テネレモをさきに上へ投げもどし、そのあとから俺もなんとか身を乗り出す。
 
 ノコウが俺のほうを見て、なにかつぶやいているのがわかった。

「理解……できませんわね。そんな雑魚カードのためにキケンを侵すなんて。あなたとちがってその高さから落ちてもカードは破れはしないのに」

「俺にとってテネレモはただのカードじゃない。テネレモだけじゃない、他のだって。お前にはそういうカードはないのか」

「おかしなことを。カードはただの魔法でございましょう? いわば消耗品ですわ。長年つかっていなければシークレットまではたどりつけませんが、その前に破られるのならそれまでのカードだったというだけのこと」

 ただの魔法、消耗品……か。

「……しょせん、カードゲームは弱肉強食。……負けてしまえば弱いカードは……見捨てざるを……えませんわ。たとえどんなに思いいれがあっても……」

 そう言うノコウには、そうだと決めた覚悟のようなものがみてとれた。ある意味そうやって割り切ることが彼女の強さの芯になっているんだろう。

「……」
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