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王総御前試合編
77 御前試合決勝戦<ファイナル>-9
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ふとルプリアが分身しているのを見ていて、思いついたことがある。
このわざはまるでミジルとハイロみたいだなといつも思っていた。そこにヒントがあった。
そうか、この手があったか。ある意味天啓のようなアイデアだったが、あんがい何気なく突破口はみつかった。
「ハイロ、分身作戦だ。こっちにきてくれ」
「え?」
下準備をすませて、迎撃の態勢をととのえる。
テネレモ、アーキテクチャ、ルプリアを前面に出しシャンバラエリュシオンとたたかわせる。戦闘を支援するため俺はトリックカードをかまえた。
やはりこのタイミングでまた呪文封じが来た。俺の手の中のカードがみるみる光をうしなっていく。
だが、こちらにとって望みどおりの魔法は、ちゃんと発動している。
トリック【ホイホイネバヌル】で相手の足元を粘着質にし、工学粘液との相乗効果でさらに移動を困難にさせる。氷の魔女の【サインオブウィンター】で粘液を凍らせ、ほぼ完全に足止めさせた。
ルプリアが至近距離からの衝撃魔法で、エリュシオンを撃破する。カードの力を最大限まで組み合わせて発揮する見事なコンボが決まった。吹き飛んだそのカードは壁に激突し倒れ、もはや戦闘続行は不可能な状態にまでなる。
「いま……なにが……」
ノコウの表情に焦りがみえる。センのほうも戸惑いをかくせていないようだった。
そう。やつらは確実に呪文を封じることができた。それなのに支援をふせぐことはできずコンビネーションを許した。
「分身したのさ」
もちろんハッタリだ。そんなカードはもっていない。
「まさかさっき……そういうことでしたのね。あなた方はカードを交換していた。一方がなんでもないカードを囮につかい、本命が同時にトリックを使っていた……」
ノコウは気づいたらしいな。そう、わかってみれば単純な話だ。
コマンドの俺ばかりがサポートするものだと考えるのが通常。だが実際は事前に手札を交換しておいて、俺が囮のトリックをつかうのとほぼ同時にハイロが本命の支援カードを使う。間髪がなければセンもすぐには対応できない。
そして狙い通りこちらはエリュシオンを倒すことができたというわけだ。
「工夫次第で強いカードも倒すことができる。こいつらの可能性が俺にそのことを教えてくれるんだ」
ノコウはぎりと歯をかみしめ、憎たらしそうにこちらをにらんでくる。
相当なダメージがあるだろう。呪文封じを防ぐ手段をつかわれただけでなく、エリュシオンまで失ったんだからな。
「マイナーごときが……!!」
「マイナーカードごとき? それはちがうな。マイナーだから対策もたてづらいし、まだだれも知らない可能性を秘めている。マイナーにはマイナーの戦い方がある」
強いのは未知のカードだけじゃない。さっきの粘液コンボもそうだ。カードには可能性がある。
状況はこちらが不利かもしれないが、まだいくらでも勝ち筋は残っている。
「セン、これで呪文封じもやりにくくなったな。お前のスキルはもうタネがバレてるぜ」
「ご明察。恐れ入るね。そう僕のスキルは【再使用】のちから。それがトリックでもなんでもゲーム中に味方の発動したスキルを使用できる。オドコストは同じ分かかるけどね」
「そうか……スキルはオドがある限り何度でも使用できる」
俺はおもわず片手で顔を覆った。ショック、というよりもさらに集中するためだった。なんつうスキルだよ……そんなのありえるのか。
勢いづいているのはこちらのはずなのに、やつの能力を考慮すると調子に乗っている余裕はないな。
「エイトさん、おそらくあれはカードゲーム専用能力です」
「なんだそれ」
「日常ではまったく使用できない代わりにカードゲームでは特別強いスキルのことです。ある意味彼女のちからはカードゲームに特化された才能です」
「それをうまく隠していたのに今大々的につかったということは、よほどこの試合にかける思いが強いのでしょうね」
簡単には終わらせてくれそうにないな。
まだノコウはエリュシオンを下げない。破られるギリギリまで戦わせるつもりなのか。だがやはりオドが尽きつつあるのか、エリュシオンは剣を地面に突き立ててそこから動かない。
間があってからようやくサルベージした。
これでエリュシオンは倒した。次は――
「さあ、スキルがわかったところで果たして止められるかな」
センがゼラフィムの手に乗って、俺たちの前に姿をあらわした。
そのとなりではオフィールが身体に光を溜め込んでいる。
まずい。またあれがくるのか。
どうする。一度だけならあの大技もトリックを駆使すればかわせなくもないだろう。だが今オフィールとセンはこちらに接近してきていて、さっきよりも危険度は格段に増している。
敵がふたたびあの技をはなつまでおよそ3秒もなかっただろうが、その短時間で極限の集中力で頭をフル回転させ、あるいはただのカンで適切なカードたちを切った。
オフィールが閃光を撃つ。無慈悲の極大魔法2連発が天空要塞を覆う。
ただの一回ではない。センのスキルだ。やけにオフィールの攻撃に間があると思っていたが、このコンボのために準備していたのだろう。
「力が天空を支配する。頂点は僕らのものだ」
光が消えるころには、俺たちは地面に倒れていた。
意識が朦朧として力がはいらない。
ちかくにいるはずのハイロの声がしない。負傷したか。
「僕のほうがまさっていたようだね」
倒れている俺の真上から、センの声がする。相手にとってはトドメを刺す一歩手前というところだろう。
このわざはまるでミジルとハイロみたいだなといつも思っていた。そこにヒントがあった。
そうか、この手があったか。ある意味天啓のようなアイデアだったが、あんがい何気なく突破口はみつかった。
「ハイロ、分身作戦だ。こっちにきてくれ」
「え?」
下準備をすませて、迎撃の態勢をととのえる。
テネレモ、アーキテクチャ、ルプリアを前面に出しシャンバラエリュシオンとたたかわせる。戦闘を支援するため俺はトリックカードをかまえた。
やはりこのタイミングでまた呪文封じが来た。俺の手の中のカードがみるみる光をうしなっていく。
だが、こちらにとって望みどおりの魔法は、ちゃんと発動している。
トリック【ホイホイネバヌル】で相手の足元を粘着質にし、工学粘液との相乗効果でさらに移動を困難にさせる。氷の魔女の【サインオブウィンター】で粘液を凍らせ、ほぼ完全に足止めさせた。
ルプリアが至近距離からの衝撃魔法で、エリュシオンを撃破する。カードの力を最大限まで組み合わせて発揮する見事なコンボが決まった。吹き飛んだそのカードは壁に激突し倒れ、もはや戦闘続行は不可能な状態にまでなる。
「いま……なにが……」
ノコウの表情に焦りがみえる。センのほうも戸惑いをかくせていないようだった。
そう。やつらは確実に呪文を封じることができた。それなのに支援をふせぐことはできずコンビネーションを許した。
「分身したのさ」
もちろんハッタリだ。そんなカードはもっていない。
「まさかさっき……そういうことでしたのね。あなた方はカードを交換していた。一方がなんでもないカードを囮につかい、本命が同時にトリックを使っていた……」
ノコウは気づいたらしいな。そう、わかってみれば単純な話だ。
コマンドの俺ばかりがサポートするものだと考えるのが通常。だが実際は事前に手札を交換しておいて、俺が囮のトリックをつかうのとほぼ同時にハイロが本命の支援カードを使う。間髪がなければセンもすぐには対応できない。
そして狙い通りこちらはエリュシオンを倒すことができたというわけだ。
「工夫次第で強いカードも倒すことができる。こいつらの可能性が俺にそのことを教えてくれるんだ」
ノコウはぎりと歯をかみしめ、憎たらしそうにこちらをにらんでくる。
相当なダメージがあるだろう。呪文封じを防ぐ手段をつかわれただけでなく、エリュシオンまで失ったんだからな。
「マイナーごときが……!!」
「マイナーカードごとき? それはちがうな。マイナーだから対策もたてづらいし、まだだれも知らない可能性を秘めている。マイナーにはマイナーの戦い方がある」
強いのは未知のカードだけじゃない。さっきの粘液コンボもそうだ。カードには可能性がある。
状況はこちらが不利かもしれないが、まだいくらでも勝ち筋は残っている。
「セン、これで呪文封じもやりにくくなったな。お前のスキルはもうタネがバレてるぜ」
「ご明察。恐れ入るね。そう僕のスキルは【再使用】のちから。それがトリックでもなんでもゲーム中に味方の発動したスキルを使用できる。オドコストは同じ分かかるけどね」
「そうか……スキルはオドがある限り何度でも使用できる」
俺はおもわず片手で顔を覆った。ショック、というよりもさらに集中するためだった。なんつうスキルだよ……そんなのありえるのか。
勢いづいているのはこちらのはずなのに、やつの能力を考慮すると調子に乗っている余裕はないな。
「エイトさん、おそらくあれはカードゲーム専用能力です」
「なんだそれ」
「日常ではまったく使用できない代わりにカードゲームでは特別強いスキルのことです。ある意味彼女のちからはカードゲームに特化された才能です」
「それをうまく隠していたのに今大々的につかったということは、よほどこの試合にかける思いが強いのでしょうね」
簡単には終わらせてくれそうにないな。
まだノコウはエリュシオンを下げない。破られるギリギリまで戦わせるつもりなのか。だがやはりオドが尽きつつあるのか、エリュシオンは剣を地面に突き立ててそこから動かない。
間があってからようやくサルベージした。
これでエリュシオンは倒した。次は――
「さあ、スキルがわかったところで果たして止められるかな」
センがゼラフィムの手に乗って、俺たちの前に姿をあらわした。
そのとなりではオフィールが身体に光を溜め込んでいる。
まずい。またあれがくるのか。
どうする。一度だけならあの大技もトリックを駆使すればかわせなくもないだろう。だが今オフィールとセンはこちらに接近してきていて、さっきよりも危険度は格段に増している。
敵がふたたびあの技をはなつまでおよそ3秒もなかっただろうが、その短時間で極限の集中力で頭をフル回転させ、あるいはただのカンで適切なカードたちを切った。
オフィールが閃光を撃つ。無慈悲の極大魔法2連発が天空要塞を覆う。
ただの一回ではない。センのスキルだ。やけにオフィールの攻撃に間があると思っていたが、このコンボのために準備していたのだろう。
「力が天空を支配する。頂点は僕らのものだ」
光が消えるころには、俺たちは地面に倒れていた。
意識が朦朧として力がはいらない。
ちかくにいるはずのハイロの声がしない。負傷したか。
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