カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

76 御前試合決勝戦<ファイナル>-8

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 出したのは多彩な能力のあるカード。いわば今回の試合の最終兵器として用意した頼れる存在だ。
 なんというか頭の部分が打ち上がった花火みたいなミミズというか、なんかウィルスみたいな独特で個性的な外見をしている。カクカク動いたりヌルヌル動いたり、能力だけじゃなく動きもおもしろいカードだ。
 アーキテクチャが出てきたときのノコウの反応はひどかった。歌舞伎役者のようにけわしい顔をしている。

「うわっ。夢にでてきそうですわ……!」

「かっこいいだろ」

 シャンバラがそのへんに落ちていた瓦礫を念動力で浮かしこちらに投げるようにぶつけてきた。この念力がかなり厄介で、こちらの魔法攻撃がことごとくあれで防がれておりいまだにシャンバラは無傷に近い状態だ。
 しかし心配はない。アーキテクチャは対遠距離攻撃対策カード。
 発動したレコード【3Dプラグイン】は弱魔法であれば物でもなんでもアーキテクチャの口の中に吸い込める能力だ。吸い込みの範囲はあまり広くないが、一方向からの攻撃であれば充分守れる。

「こいつの力はまだこんなもんじゃないぜ」

 と言ったもののウォリアーだけではリードをとることは難しい。あのオフィールの大技がまたくるとするとどうするか考えている時間もあまりないが、ここはやはり攻めるべきなのだろうか。それともいったん引くべきか。
 ここで決断しなければこのままずるずると相手のペースでいかれそうだ。
 あの呪文封じが脳裏にチラついて、思い切ってトリックを使っていけない。魔法に頼りたいところだが勝負どころでまたあれを使われてはいよいよ危うくなってしまう。

「エイト、支援がおくれているわぁ」

 ローグから通信が入る。かなり消耗しているのか、カード越しでもいよいよ息が切れ始めているように思える。

「……。方法はわからないが……向こうは呪文封じを何度もつかえるみたいだ。うかつに今魔法を使っても止められて逆にピンチになるかもしれないと思う」

「呪文封じですか」

「ホーンテッドハウスを2回、魂の測知を2回とめられてる。それにまだ使えるみたいだった。妙すぎる。オフィールとか言うのの力か、あるいはほかのカードのものなのか……」

 むこうは最初からそういう戦術だったんだろう。約束の地の効果でテネレモを封じるかわりに、こちらはオドコストが倍増してメリットもある。だが呪文も封じることでアドバンテージを消していく。
 そしてカードの力と大技、遠距離重視でこちらを削(けず)っていく戦法だ。かつチェイスという接近戦に強い手合いもいるから一筋縄ではいかない布陣になっている。

「あるいは……」

 ハイロがそこでいいかけて止(と)めた。
 もうのんびり談義していられる時間はないので催促する。

「なんだ?」

「あ、いえ……」

「もう後がないのだから、なんでも言ってみるべきよ」

「わ、わかりました。本当にもしかしたらですが……センリティさんのスキルなのではないのでしょうか」

「セン……コマンドの子ね」

「ホープ杯での彼女の試合を何度かみていました。彼女はスキルを隠していて不明ですが、いつも不自然なプレイングがあったんです。でも今おもうと、もしカードの力を何回もつかえるスキルだとすると……つじつまが合うかもしれません」

「……」

 スキルを隠していた、か。たしかにセンはいくらも強カードを持っている。常に有利な試合運びができれば隠し切ることも不可能ではない、たしかにな。
 そう考えるとつじつまはあう。

「そうだと仮定してやってみましょう。もし本当なら厄介なんてものじゃないけれどね」

 まったくだな。正直そうでないことを祈りたい。

「さすがだな、ハイロ。カードゲーマーの経験ってやつは、いろんなところで活きてくるらしいな」

「え? いやいや、そうだと決まったわけでは……」

 和ませるつもりで褒め言葉を言ったが、逆にすこしあわてさせてしまったようだ。

「でも、カードはやっててよかったです。みなさんと一緒にやってこれてよかった。絶対に……勝ちたいです」

「もちろん」

 カード越しでも、ハイロとローグの意志がつたわってくるようだった。
 ふたりはここまで完璧にやってくれている。俺も持てるすべてを出し尽くそう。

「ああ。勝負はここからだ」

 逆襲といきたいところだな。
 意外にも先にしかけてきたのはセンだった。トリックを切ってくる。

「【キューピッドアロー】。しばらくの間アーキテクチャのカードはエリュシオンの近くを離れることができない。天使のダンスに付き合ってもらうよ」

 なんだ。ここにきて近接戦を向こうからしかけてきただと。
 なにか変だな。罠か、あるいはなにかあると見せかけて時間をかせぐつもりか。
 判断に迷う。でもここをうまくやれれば主導権を奪い返せるかもしれない。
 リスクは承知の上だ。待っていてもオフィールの魔法に潰されるだけだからな。

「エイトさん……」

「やるしかない。ハイロ、合わせてくれ。アーキテクチャレコード、【工学粘液】」

 バタバタとアーキテクチャがのたうちまわるようにあばれだす。すると敵ウォリアーたちののまわりをネバついた魔法が囲い始め、その動きを制限する。
 移動速度を下げるわざだ。ボードルールだと敵の攻撃力をほんのちょっと下げるだけで大した効果はないがヴァーサスでは使いやすいスキルだと俺は思っている。
 アーキテクチャはすばやいカードだ。かつあの独特なうごきはとらえづらく、エリュシオンとシャンバラの魔法じゃまず当てることはむずかしいだろう。

 センも呼応してトリックカードを切ってきた。なにか乱剣ファルシとかいうのをエリュシオンが装備する。天使が剣を撫でる姿はずいぶんサマになっていた。
 ヤバいな。これじゃぜんぜん近接も有利じゃないぞ。

「なんか……すごそうなの出してきたな」

「まずいですよ……」

 まいったな。近距離ならこっちに分があると思ったが、安易だったか。
 でもキューピッドアローの効果でひくにひけない状況だ。センめ、こちらが近接戦を望んでいるのがわかっててあえて釣ってきたな。
 ヤツの真の狙いはわかっている。あの聖剣とやらで近接戦を制するつもりはなく、消耗させつつ時間をかせいでオフィールのあの大技をまた使うつもりなんだろう。

 とにかく、テネレモが封じられてるのが痛手だ。
 問題はどうやってこの状況を有利にするかだ。具体的にいえば、エリュシオンの約束の地への効果をどうにかしたい。氷の魔女シークレットでビタ止めするかどうかを迷っている。

 魔女のシークレット【シュヴァルツブリザード】相手のトリック、もしくはスキルが直接味方ウォリアーになんらかの影響をおよぼす場合無効化する。ただしゲーム中に1度しか使えない。

 このスキルは一度つかうとフォッシャの実体化の能力でも数日は使えなくなる。仕組みはよくわからないが、氷の魔女自身のオド消費量が激しいらしい。
 何回か試しているのでわかっている。強力なわざだが連発は全くきかない。呪いのカードが関わってきたときのためにとっておきたかったが……

 だが迷っている余裕はないか。ここで使わなければ負ける。
 俺たちは実体化のカードを止めるため、そしてそれを見つける探索のカードを手に入れるためにこの大会を戦ってきた。一抹の不安はあるがこれも大事な目的だ。

「ハイロ、魔女のシークレットを使う」

「わ、わかりました」

 使用にともない、あたりに黒い雪がたちこめはじめる。

 突撃してくるエリュシオンとシャンバラにテネレモのドレインフラワーで牽制をいれる。ひきつけた不意打ちのつもりだったが見事に打ち返されてしまった。

「これは……!? それにこの黒い雪……」

 ノコウの様子をみるに、さすがに警戒していたか。でもこれで約束の地への効果はしばらく無効になりテネレモは自由になる。

「さあ近接でくるんだろ」

 アーキテクチャもやる気は充分だ。クネクネと動いて、相手を威嚇している。テネレモがいる今充分こちらの戦力は厚い。
 よほどこのカードのデザインが苦手なのか、まだなにもしていないのにノコウはだんだんと顔があおざめていっている。

「ヒィッ!?」と、いよいよかわいらしい悲鳴をはなつノコウ。

 そんなにイヤか。こちらとしては好都合だけどな。

「くっくっく……! お前がカスだと言ったカードたちの恨み……みせてやろうかぁ」

「わ、わたくし、見かけなんかにはだまされませんわ。しょせんはマイナーカード、大したことはないはず……」

 こころなしか、エリュシオンも嫌がっているように見える。

「かっこいいと思うんだけどなぁ……」

「私もそう思います!」

「だよな! わかってくれるか」

「私もきらいじゃないわぁ」

 よかったよかった。アーキテクチャがよろこぶどうかはわからないけど、味方がいるって心強いな。
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