カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

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王総御前試合編

75 御前試合決勝戦<ファイナル>-7

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「こざかしいですわね。セン様、もう勝負を決めにいっては?」

 不愉快そうに顔をしかめて、ノコウが言う。

「そのつもりだよ」 

 またセンの声がエリュシオンからする。やつはここから離れていてもウォリアーと視界を共有し的確な支援を可能にしている。

 冗談ではなく、センがカードを空につきあげたとき、頭上の雲が晴れていった。
 まばゆいばかりの光とともに、神殿の上に片翼の巨獣が出現する。

「神獣召喚、『オフィール』!」

 おいおいこりゃあ……!
 白金の鱗(うろこ)、いや鎧か? 刺々しいがその美しさには圧倒される。似た生物がおもいつかないが図体は巨大で重く頑強に思える。
 幻獣、とでも呼ぶべきなのか。立ち姿の神々しさもあいまってほとばしるような凄まじいオーラをまとっている。

 なんだ、このカードは。
 ハイロもローグも知らないのか、ただ気おされて黙っているようだった。

 常に宙に浮いていて、地上には降りてこない。どうやって攻めるか。いや、そもそも情報がないから慎重に立ち回らなければ。

「君たちの力に敬意を表して……お見せしよう。カードを超越した力を!」

 センから青色の光が放たれ、あまりのまぶしさに[目]のほうを閉じてしまった。だがやつの呪文詠唱は聞き取ることができた。

「アドバンス……【オーバーリミットホーリー<光の過剰覚醒(かじょうかくせい)>】」

 やや間があって、衝撃的な光景がひろがった。無数の光の柱が突如としてなにもないところから沸き起こり、次々に建物や地形を消し去っていく。
 いくつもの柱は無差別に出現するだけでなく、横や縦に動き回り周囲のものを飲み込んでいく。俺はテネレモを抱えて建物の陰ににげこみなんとか柱をかわしたが、最後に柱は爆発すると光の球体が拡散してさらに破壊の限りをつくした。運よく近くに遮蔽物がなければ直撃していた。

「な……」

 なんつう技だ、そう言うはずだったが顎がうまくうごかずに言い切ることができなかった。
 あまりにショックだった。これがカードのちからなのか。威力だけならおそらく審官よりも上。いやゼルクフギアにも匹敵するんじゃないか。
 精密性はあまりないようだがもうそういうレベルじゃない。あの規模ではシンプルに運だけで当たるかどうか決まるようなものだ。

「つよすぎるわね。なにか特殊な条件があるんじゃないかしら。わざの発動……あるいは召喚自体に」

 そう言うローグは冷静だった。チームの中でだれより修羅場をくぐってきた彼女だから、こういうときでも頼りになる。

「そうじゃないと困ります……」

 ハイロの感想に俺も完全に同意だった。

「限界がきているマシーナリーを下げるわ。あのわざもコストの関係で連発はできないはず。いまのうちに戦形を建て直しましょう」

「ああ」

 マシーナリーはもろにくらったか。まだ相手にアポロンとゼラフィムが残ってはいるが、しかたない。

「こっちは軽傷です。相手のウォリアーもちかくにいたので、光の柱はあまりこなかったみたいですね」

 近くにいたからわかるが、直撃は避けたものの建物の爆散した破片などがルプリアと魔女に当たっていた。ハイロ自身にもだ。おたがい目に見えているからあえて重大な報告は避けたのだろうが、俺より敵の近くにいたハイロたちには確実に少なくないダメージが入っている。

「ローグ、お前はだいじょうぶなのか?」

 俺は不審に思ってたずねる。ローグは身をかくすものの少ない前線の平らな場所でたたかっていた。遠目からだがあのあたりにはかなりの数の柱が出現していたように見えた。

「大したダメージはないわ」

 いつもどおり平然とした調子にきこえる。でもそういう言い方になるってことは、被害はあったんだろうな。
 ハイロのほうは軽傷、ローグのほうは重傷か。

 テネレモのちからが使えれば俺ももっと動き回れるようになる。あの幻獣は危険だがエリュシオンを先に倒すことのほうが戦略的には重要だろう。
 次にあの大技がくるまでには時間があるものとして、この時間の選択は間違えられない。
 使うか、【魂の測知】を。
 エンシェントにも慣れてはきたが、やはりこういう危険な状況の中で俺がやってきたカードゲームとはちがい冷静さを失ってしまうこともある。この魔法は自分の昔のカード勘を戻してくれるだけではなく、雑念が一切きえる異常なまでの集中力を思い出させてくれる。
 使う意味は充分ある。

 かまえたとき[目]のほうから情報が入った。こちらと同時にセンもカードをかまえている。

「そうはさせない。キゼーノ戦の記録はなんども見たよ。妙なカードを使ってから君のプレイングは冴えはじめたようだった……トリックカード、【賢者たちの沈黙】」

 俺の手に合った魂の測知のカードは、輝きを失って色あせる。発動は中断したようだった。
 あれが呪文封じか。だがこれで使用は2回目。
 センは間をおかずにエリュシオンで追撃をかけてきた。気づけば背後をとられていた俺たちは、剣の魔法が射出されたと同時に建物のそとに転がり出る。
 だがチャンスだ。やつはもう呪文封じは使えない。

「甘いな、セン。御前試合のルールでは同じトリックは2回までしか使えない。魂の測知が一時的に無効化されても……さっきのユニオントリックはまだ使うことができる」

「フフ。どうかな?」

 俺は用意していた【ホーンテッドハウス】をふたたび呼び出し天上に見えるオフィールめがけて発動した。
 はずだった。しかし魔法は、不発だった。

「なに……ッ!?」

 事態を理解する時間もくれずエリュシオンがふたたび追ってくる。ハイロは氷の魔女を前に出し、周囲に警戒をはらいつつ立ち回る。

 どういうことだ。なにが起きた。
 全く同じだった。さっき呪文封じを使われたときと同じようにカードが輝きを途中でなくした。
 なにかもう一度魔法をつかえる、というような効果のトリックを使ったのだろうか。
 それならばと、こちらも魂の測知をふたたびつかう。
 しかし、まただった。またカードの魔法は不発に終わった。
 今度はセンの動向も見ていた。カードを持ってやはり不審な動きをみせていた。

 おかしい……。なにかおかしいぞ。
 あのセンの余裕はなんだ。たしかに俺はもう魂の測知もユニオントリックも使うことはできない。だがセンにはそれ以上に今後の展開に強い自信があるように見える。
 不自然だ。仮にヤツがトリックでこちらのトリックを何度か封じたと考えよう。ヤツももうそのトリックは2度つかったはず。なのにあの表情はなんだ。

 俺はたしかめるために、ブラフ――ハッタリでトリックカードをかまえた。あえて発動せずに、だ。
 そして同時にセンも同じ動作をしていた。
 やはりまだ呪文封じが使えるのか。仕組みはわからないが、[やつは同じトリックを上限をこえた回数使えている]。もはやそれは確定的だ。

 オフィールのちからか。あるいはほかのカードのスキルでそれを可能にしているのか。
 わからない。どういう手段であれ相手もオドコストを消費するだろうとはいえ、ほとんどこちらの必殺の呪文は使うのを封じられたことになる。

 いや、とにかく魔法がだめならもう手段はかぎられている。
 最後のウォリアーを切る。

「たのむぞ……『アーキテクチャ』!」
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