カードワールド ―異世界カードゲーム―

イサデ isadeatu

文字の大きさ
152 / 169
王総御前試合編

74 御前試合決勝戦<ファイナル>-6

しおりを挟む

 センの場所を探し出さなきゃな。俺は左目を閉じたまま、【壁に目あり】でさらに広範囲を索敵(さくてき)する。

「ハイロ、ローグ。センが視界共有でウォリアーとつながってる。正確に魔法をとばしてくるから気をつけろ」

「了解です」

 ローグのほうは余裕がないのか返事がない。

「それとあの天使みたいなカード、なにかわかるか?」

「あれは……まさか……『エリュシオン』!」ハイロの声は驚愕のあまりふるえているようだった。「幻(まぼろし)のカードですよ……! 自然系のアンチカードです」

「自然系……」

 エリュシオンは胸の前で祈るように手をあわせ、そこから透明の光がこぼれだした。
 光が地面に吸い込まれると、そこから落雷のような光の剣が何本も発生しこちらに向かって飛んできた。

「よけてください、エイトさん!」

 ハイロの声がきこえて、とっさに近くにいたテネレモと共にトリック【曲芸飛行<スパイラルマニューバ>】で回避行動をとる。魔法が当たるすんでのところで風に包まれて現在いる地点とは横に移動し、直撃は避けた。

「や、薮の盾が……発動しない」

 ふつうであれば、いつもなら薮の盾で敵の魔法を止めるか、押しとどめている間に回避するかの場面だった。薮の盾自体の防御力はほぼ紙にひとしく連発することではじめて効果をだす技だが、今テネレモのカードをかまえて使おうとしても発動しなかった。
 俺の疑問を、ハイロが解説してくれる。彼女は危険があらかじめわかっているようだった。

「あのカードのレコード【約束の地へ】は、自然系のウォリアーが倒されたときや自然系のわざや魔法を、すべてオドコストにかえすんです。ほんらいはそういうオドを増やす補助系の力ですが……数十年前にある大会王者がアンチスキルとして使い始めて。敵に使えば自然系のわざをすべて無効化してしまうのですから、その威力はすさまじいものがあります。どういう経緯で彼らが手に入れたのかはわかりませんが……」

 ハイロはそこで言葉をとめたが、次に続いてくるはずだった言葉は「御前試合にでてくるレベルを越えている」だろう。キゼーノの次はエリュシオンか。それでもシャンバラゼラフィムアポロンの時点で戦力としては充分エグすぎるのだが……
 さっきとは雰囲気が一転して試合を楽しむかのように、あかるげなセンの声がきこえてくる。

「エイト、君のカードへの気持ちは本物なんだろうね。だけどそれが仇(あだ)になることもある。
 ノコウにカードを投げられたときの反応。特定のカードにこだわるタイプだとすぐにわかった。君がテネレモでくることは予想がついていたよ」

 センは有能だ。冷静に戦力分析ができる。友人であっても勝負になれば容赦のない勝負強さも持ち合わせている。

「こむずかしいことは関係ありませんわ。しょせん雑魚は雑魚ということ」

 ふてぶてしい態度のノコウにたいし、不利な状況も影響してハイロが表情をくもらせちぢこまる。

「まあ、キゼーノと早くに当たってしまったのはお気の毒でしたわね! あの試合に総力をだしてくれたおかげでこちらも対策しやすくなりましたのよ」

 敵は高らかに笑い声をあげる。
 どうする……。この無視できない戦力差をどうやって埋める。
 敵を妨害しようとしてもむしろ反撃をくらってしまっている。強カード軍団の猛攻にこちらは防戦一方だ。
 どうすれば勝てる。

「私たちは私たちの力で戦えばいいのよ。ここまでやってこれているのだから、これからも恐れなくていい」

 カードを通してローグの言うのがきこえた。ローグもチェイスとアポロンの相手で余裕はないだろうに、その言葉に勇気付けられる気がする。
 ハイロも今のですこしは気持ちがきりかえられたはずだ。
 冷静に戦力分析をしよう。今こちらは俺がテネレモとベボイ、ローグが狼とマシーナリー、ハイロがルプリアと魔女を率いている。それぞれ距離はあり、またローグとチェイス以外は敵とも遠くからの魔法の打ち合いが続いている。
 敵はノコウがハイロと向かい合う形でシャンバラとエリュシオンで左辺を押さえ、チェイスは右辺でアポロンと共にローグとやり合っている。オカルトハンターは中盤でローグとハイロどちらも監視しているような状況だ。

 魔女とルプーリンをハンター1体ににらまれてしまってノコウのほうに攻めいることができない。こちらはマッチアップ、対カード相性的にもアドがとれていないのが現実だろう。
 カードを活かした戦術ができていないなら、その局面を無理やりにでもつくりだす。カードの力を引き出すために大幅な配置転換を思案する。

 ようやく[目]でセンを見つけることができた。ここからかなり遠いところで、ゼラフィムの手にのって空中を浮遊しカードをかまえている。
 あそこから支援していたのか。徹底して遠距離で勝負を決めるのが狙いなのだろう。
 上等だ。俺がカードと仲間たちを活かす道をみつけることができれば、相手がなにをしてこようと戦える。

 指示をだし、ハイロについていた氷の魔女をローグのほうに加勢させる。薄くなった左辺の守りは、あえて俺がハイロと接近してベボイとエリュシオンを一騎打ちにさせておぎなう。
 ルプリアの分身とハイロの鎖でシャンバラを一時的に抑え準備はととのった。

「トリックカード【ハロウィンパーティ】! このカードは特定の種族たちの魔法攻撃力を増加させる」

「【ブラスト】……!」

「【スノウ】!」

 あわせて、狼のレコード【ブラストクロー】魔女の【バブルスノウ】物理と魔法の遠距離合体攻撃をしかける。俺もベボイのスリップギミックでアポロンを瞬間的にひるませ電磁バリアでの防御を遅らせる。
 チャンスは一度きりだったがローグとハイロはみごとに打ち合わせどおりコンビネーションをつなげてくれた。連携は成功し、オカルトハンターに冷気をまとった衝撃波が直撃した。
 当然この陣形ではエリュシオンを押さえ込めるわけがない。ただでさえテネレモは今は戦えないうえベボイを使えば隙だらけだ。センはこのタイミングを逃さず、すぐに反撃をいれてきた。
 シャンバラは鎖とルプリアが抑えてくれていたが、エリュシオンはフリーだ。すばやいベボイでもあの剣の魔法は避けきれず、トリックを使った直後俺のサポートも間に合わず致命傷をうけた。
 俺はたまらずベボイを下げ、向こうも行動不能になったハンターをサルベージする。

「よくやってくれた」

 自分の口から、自然とねぎらいの言葉がでてくる。本心からの言葉だ。
 ベボイが欠けるのは痛手だ。だがハンターがベボイとルプリア2体に特効がある以上まっさきに倒す必要があった。ベボイのここまでのがんばりを無駄にしないためにも、この勝負負けられない。
 これでおたがい1体ずつアウトか。すこしずつでもアドを稼いでいくぞ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜

来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。 自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。 「お前は俺の番だ」 番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。 一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。 執着と守護。すれ違いと絆。 ――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。 甘さ控えめ、でも確かに溺愛。 異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...