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王総御前試合編
74 御前試合決勝戦<ファイナル>-6
しおりを挟むセンの場所を探し出さなきゃな。俺は左目を閉じたまま、【壁に目あり】でさらに広範囲を索敵(さくてき)する。
「ハイロ、ローグ。センが視界共有でウォリアーとつながってる。正確に魔法をとばしてくるから気をつけろ」
「了解です」
ローグのほうは余裕がないのか返事がない。
「それとあの天使みたいなカード、なにかわかるか?」
「あれは……まさか……『エリュシオン』!」ハイロの声は驚愕のあまりふるえているようだった。「幻(まぼろし)のカードですよ……! 自然系のアンチカードです」
「自然系……」
エリュシオンは胸の前で祈るように手をあわせ、そこから透明の光がこぼれだした。
光が地面に吸い込まれると、そこから落雷のような光の剣が何本も発生しこちらに向かって飛んできた。
「よけてください、エイトさん!」
ハイロの声がきこえて、とっさに近くにいたテネレモと共にトリック【曲芸飛行<スパイラルマニューバ>】で回避行動をとる。魔法が当たるすんでのところで風に包まれて現在いる地点とは横に移動し、直撃は避けた。
「や、薮の盾が……発動しない」
ふつうであれば、いつもなら薮の盾で敵の魔法を止めるか、押しとどめている間に回避するかの場面だった。薮の盾自体の防御力はほぼ紙にひとしく連発することではじめて効果をだす技だが、今テネレモのカードをかまえて使おうとしても発動しなかった。
俺の疑問を、ハイロが解説してくれる。彼女は危険があらかじめわかっているようだった。
「あのカードのレコード【約束の地へ】は、自然系のウォリアーが倒されたときや自然系のわざや魔法を、すべてオドコストにかえすんです。ほんらいはそういうオドを増やす補助系の力ですが……数十年前にある大会王者がアンチスキルとして使い始めて。敵に使えば自然系のわざをすべて無効化してしまうのですから、その威力はすさまじいものがあります。どういう経緯で彼らが手に入れたのかはわかりませんが……」
ハイロはそこで言葉をとめたが、次に続いてくるはずだった言葉は「御前試合にでてくるレベルを越えている」だろう。キゼーノの次はエリュシオンか。それでもシャンバラゼラフィムアポロンの時点で戦力としては充分エグすぎるのだが……
さっきとは雰囲気が一転して試合を楽しむかのように、あかるげなセンの声がきこえてくる。
「エイト、君のカードへの気持ちは本物なんだろうね。だけどそれが仇(あだ)になることもある。
ノコウにカードを投げられたときの反応。特定のカードにこだわるタイプだとすぐにわかった。君がテネレモでくることは予想がついていたよ」
センは有能だ。冷静に戦力分析ができる。友人であっても勝負になれば容赦のない勝負強さも持ち合わせている。
「こむずかしいことは関係ありませんわ。しょせん雑魚は雑魚ということ」
ふてぶてしい態度のノコウにたいし、不利な状況も影響してハイロが表情をくもらせちぢこまる。
「まあ、キゼーノと早くに当たってしまったのはお気の毒でしたわね! あの試合に総力をだしてくれたおかげでこちらも対策しやすくなりましたのよ」
敵は高らかに笑い声をあげる。
どうする……。この無視できない戦力差をどうやって埋める。
敵を妨害しようとしてもむしろ反撃をくらってしまっている。強カード軍団の猛攻にこちらは防戦一方だ。
どうすれば勝てる。
「私たちは私たちの力で戦えばいいのよ。ここまでやってこれているのだから、これからも恐れなくていい」
カードを通してローグの言うのがきこえた。ローグもチェイスとアポロンの相手で余裕はないだろうに、その言葉に勇気付けられる気がする。
ハイロも今のですこしは気持ちがきりかえられたはずだ。
冷静に戦力分析をしよう。今こちらは俺がテネレモとベボイ、ローグが狼とマシーナリー、ハイロがルプリアと魔女を率いている。それぞれ距離はあり、またローグとチェイス以外は敵とも遠くからの魔法の打ち合いが続いている。
敵はノコウがハイロと向かい合う形でシャンバラとエリュシオンで左辺を押さえ、チェイスは右辺でアポロンと共にローグとやり合っている。オカルトハンターは中盤でローグとハイロどちらも監視しているような状況だ。
魔女とルプーリンをハンター1体ににらまれてしまってノコウのほうに攻めいることができない。こちらはマッチアップ、対カード相性的にもアドがとれていないのが現実だろう。
カードを活かした戦術ができていないなら、その局面を無理やりにでもつくりだす。カードの力を引き出すために大幅な配置転換を思案する。
ようやく[目]でセンを見つけることができた。ここからかなり遠いところで、ゼラフィムの手にのって空中を浮遊しカードをかまえている。
あそこから支援していたのか。徹底して遠距離で勝負を決めるのが狙いなのだろう。
上等だ。俺がカードと仲間たちを活かす道をみつけることができれば、相手がなにをしてこようと戦える。
指示をだし、ハイロについていた氷の魔女をローグのほうに加勢させる。薄くなった左辺の守りは、あえて俺がハイロと接近してベボイとエリュシオンを一騎打ちにさせておぎなう。
ルプリアの分身とハイロの鎖でシャンバラを一時的に抑え準備はととのった。
「トリックカード【ハロウィンパーティ】! このカードは特定の種族たちの魔法攻撃力を増加させる」
「【ブラスト】……!」
「【スノウ】!」
あわせて、狼のレコード【ブラストクロー】魔女の【バブルスノウ】物理と魔法の遠距離合体攻撃をしかける。俺もベボイのスリップギミックでアポロンを瞬間的にひるませ電磁バリアでの防御を遅らせる。
チャンスは一度きりだったがローグとハイロはみごとに打ち合わせどおりコンビネーションをつなげてくれた。連携は成功し、オカルトハンターに冷気をまとった衝撃波が直撃した。
当然この陣形ではエリュシオンを押さえ込めるわけがない。ただでさえテネレモは今は戦えないうえベボイを使えば隙だらけだ。センはこのタイミングを逃さず、すぐに反撃をいれてきた。
シャンバラは鎖とルプリアが抑えてくれていたが、エリュシオンはフリーだ。すばやいベボイでもあの剣の魔法は避けきれず、トリックを使った直後俺のサポートも間に合わず致命傷をうけた。
俺はたまらずベボイを下げ、向こうも行動不能になったハンターをサルベージする。
「よくやってくれた」
自分の口から、自然とねぎらいの言葉がでてくる。本心からの言葉だ。
ベボイが欠けるのは痛手だ。だがハンターがベボイとルプリア2体に特効がある以上まっさきに倒す必要があった。ベボイのここまでのがんばりを無駄にしないためにも、この勝負負けられない。
これでおたがい1体ずつアウトか。すこしずつでもアドを稼いでいくぞ。
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