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第2章 ギースの塔
第21話 ギースの塔の麓で
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◆漆黒の亀裂の向こうへ
亀裂の向こう側へ踏み込んだ瞬間、視界がすべて暗闇に包まれた。
何も見えなければ、音すらもない。
一瞬のことなのか、永遠に続いているのか、時間の感覚すら分からなくなる。
恐怖、疑心、不安――そのすべてを振り払い、足を踏み出した。
次の瞬間、世界が反転するような感覚が襲い、視界が一変する。
◆新たな世界の光景
眩しい。
強い日差しを受け、思わず目を細める。
顔に日差しの熱を感じる。
肌に触れる風は心地よく、鼻腔には湿った土と草の匂いが広がっていた。
目が徐々に光に慣れてくると、目の前にそびえ立つ巨大な塔の姿が見えた。
深い森林に囲まれたその塔は、まるで天へと届くかのようにそびえ立っていた。
頂上は厚い雲に覆われ、どこまでも高く続いているように見える。
窓一つない、茶色い壁だけがそそり立つ、無機質な建造物――異様な存在感を放つ塔だった。
「ここは……森? それに、なんだあの塔? ……人間が、あんな建物を作れるのか? ……。しかし、まぁ……」
全身にこみ上げてくる感情に、俺は叫ばずにはいられなかった。
「外だ――――!!!!!!!」
喉の奥から、解放された喜びが溢れ出す。
俺は間違いなく、あの白い牢獄から抜け出したのだ。
◆少女との出会い
ガサガサッ!!!
突然、草むらが揺れ、俺は思わず飛び跳ねた。
「な、なんだ!?」
音のした方へと視線を向けると、一人の少女がこちらを見ていた。
美しい金髪を肩のあたりで揃え、大きな青い瞳と白い肌。
可愛らしい西洋風のワンピースを纏った、十代半ばくらいの少女だった。
「……あっ! 人だ!!」
俺が思わず声を上げると、少女はビクッと肩を震わせた。
(やばい、警戒されてる……)
今近づいたら、逃げられそうな気がする。
何日ぶりかわからないが、ようやく会えた人間だ。
このチャンスを逃がすわけにはいかない。
できるだけ穏やかな口調で話しかける。
「あ、あの~、すみません。近くに、人が住んでる場所はありますか?」
少女はじっと俺を見つめたまま、しばらく沈黙していた。
「……あっちにある」
そう言って指をさす。
「案内って、してもらえます? 俺、この辺のことがよく分からなくて」
「……あなた、冒険者じゃないの?」
少女が不思議そうな顔で尋ねてくる。
「冒険者? ……何それ?」
「違うなら、いい。……ついてきて」
俺は少女の後をついて森の中を歩き始めた。
◆異世界の街
およそ20分ほど歩いた先に、人里が広がっていた。
そこには、森を切り開くようにして作られた賑やかな街があった。
家々は木造が多く、ところどころに石造りの建物も混じっている。
舗装されていない道には多くの人が行き交い、時折、馬車が通り抜けていった。
(……なんか、時代が違う?)
馬車を見て違和感を覚える。
まるで、中世ヨーロッパに入り込んだような光景だった。
俺が周囲をキョロキョロと見回していると、少女がジロリと睨んできた。
「ねえ、あなた……どこの田舎から来たの?」
「えっと……実は記憶喪失みたいでな。ここがどこなのかも、自分が何者なのかもよく分からないんだ」
「えぇ!? それって大変じゃない!?」
少女は目を丸くして驚く。
「でも、なんでそんなに落ち着いてるのよ!」
「いや、焦っても仕方ないしな。少しずつ情報を集めていくよ」
「ふーん、つまんないわね。でも、記憶喪失なら、まずはお腹を満たさないとダメよね! ちょうど良いお店があるから、行きましょう!」
「え? いきなり?」
少女は俺の腕をぐいっと引っ張る。
◆ギース亭
案内されたのは、木造の食堂だった。
扉の横には看板が掲げられている。
「ギース亭」 と書かれていた。
「へい! いらっしゃい!」
扉を開けると、丸々と太ったおばちゃんが笑顔で迎えてくれた。
「二名よ!」
少女は慣れた様子で答える。
奥のテーブルに座ると、少女が注文を取り始めた。
「私は鶏肉のソテーを。レンは?」
「じゃあ、ギース豚の角煮……と、水をくれ」
数分後、料理が運ばれてきた。
目の前に置かれたのは、とろとろに煮込まれた豚肉の塊。
ソースの甘い香りが食欲を刺激する。
一口食べると――
「うまい!!」
思わず声が出た。
柔らかい肉が舌の上でほどけ、濃厚なソースの甘みが広がる。
「ははっ! いい食べっぷりね!」
少女――ミーナは笑う。
「ところで、お会計だけど……」
「え? ああ、そうだな……」
俺はポケットを探る。
――しかし、財布には見覚えのない硬貨が入っていた。
(……まずい)
「レン、お金……持ってないわね?」
「……うっ」
「やっぱりね! 仕方ないわ、私が立て替えてあげる!」
「助かる……!」
「でも、その代わり……あなたには、ちゃんと働いてもらうわよ?」
「えっ?」
「ギースの塔で、ね!」
ミーナはニヤリと笑った。
こうして、俺の異世界での冒険が始まった――。
亀裂の向こう側へ踏み込んだ瞬間、視界がすべて暗闇に包まれた。
何も見えなければ、音すらもない。
一瞬のことなのか、永遠に続いているのか、時間の感覚すら分からなくなる。
恐怖、疑心、不安――そのすべてを振り払い、足を踏み出した。
次の瞬間、世界が反転するような感覚が襲い、視界が一変する。
◆新たな世界の光景
眩しい。
強い日差しを受け、思わず目を細める。
顔に日差しの熱を感じる。
肌に触れる風は心地よく、鼻腔には湿った土と草の匂いが広がっていた。
目が徐々に光に慣れてくると、目の前にそびえ立つ巨大な塔の姿が見えた。
深い森林に囲まれたその塔は、まるで天へと届くかのようにそびえ立っていた。
頂上は厚い雲に覆われ、どこまでも高く続いているように見える。
窓一つない、茶色い壁だけがそそり立つ、無機質な建造物――異様な存在感を放つ塔だった。
「ここは……森? それに、なんだあの塔? ……人間が、あんな建物を作れるのか? ……。しかし、まぁ……」
全身にこみ上げてくる感情に、俺は叫ばずにはいられなかった。
「外だ――――!!!!!!!」
喉の奥から、解放された喜びが溢れ出す。
俺は間違いなく、あの白い牢獄から抜け出したのだ。
◆少女との出会い
ガサガサッ!!!
突然、草むらが揺れ、俺は思わず飛び跳ねた。
「な、なんだ!?」
音のした方へと視線を向けると、一人の少女がこちらを見ていた。
美しい金髪を肩のあたりで揃え、大きな青い瞳と白い肌。
可愛らしい西洋風のワンピースを纏った、十代半ばくらいの少女だった。
「……あっ! 人だ!!」
俺が思わず声を上げると、少女はビクッと肩を震わせた。
(やばい、警戒されてる……)
今近づいたら、逃げられそうな気がする。
何日ぶりかわからないが、ようやく会えた人間だ。
このチャンスを逃がすわけにはいかない。
できるだけ穏やかな口調で話しかける。
「あ、あの~、すみません。近くに、人が住んでる場所はありますか?」
少女はじっと俺を見つめたまま、しばらく沈黙していた。
「……あっちにある」
そう言って指をさす。
「案内って、してもらえます? 俺、この辺のことがよく分からなくて」
「……あなた、冒険者じゃないの?」
少女が不思議そうな顔で尋ねてくる。
「冒険者? ……何それ?」
「違うなら、いい。……ついてきて」
俺は少女の後をついて森の中を歩き始めた。
◆異世界の街
およそ20分ほど歩いた先に、人里が広がっていた。
そこには、森を切り開くようにして作られた賑やかな街があった。
家々は木造が多く、ところどころに石造りの建物も混じっている。
舗装されていない道には多くの人が行き交い、時折、馬車が通り抜けていった。
(……なんか、時代が違う?)
馬車を見て違和感を覚える。
まるで、中世ヨーロッパに入り込んだような光景だった。
俺が周囲をキョロキョロと見回していると、少女がジロリと睨んできた。
「ねえ、あなた……どこの田舎から来たの?」
「えっと……実は記憶喪失みたいでな。ここがどこなのかも、自分が何者なのかもよく分からないんだ」
「えぇ!? それって大変じゃない!?」
少女は目を丸くして驚く。
「でも、なんでそんなに落ち着いてるのよ!」
「いや、焦っても仕方ないしな。少しずつ情報を集めていくよ」
「ふーん、つまんないわね。でも、記憶喪失なら、まずはお腹を満たさないとダメよね! ちょうど良いお店があるから、行きましょう!」
「え? いきなり?」
少女は俺の腕をぐいっと引っ張る。
◆ギース亭
案内されたのは、木造の食堂だった。
扉の横には看板が掲げられている。
「ギース亭」 と書かれていた。
「へい! いらっしゃい!」
扉を開けると、丸々と太ったおばちゃんが笑顔で迎えてくれた。
「二名よ!」
少女は慣れた様子で答える。
奥のテーブルに座ると、少女が注文を取り始めた。
「私は鶏肉のソテーを。レンは?」
「じゃあ、ギース豚の角煮……と、水をくれ」
数分後、料理が運ばれてきた。
目の前に置かれたのは、とろとろに煮込まれた豚肉の塊。
ソースの甘い香りが食欲を刺激する。
一口食べると――
「うまい!!」
思わず声が出た。
柔らかい肉が舌の上でほどけ、濃厚なソースの甘みが広がる。
「ははっ! いい食べっぷりね!」
少女――ミーナは笑う。
「ところで、お会計だけど……」
「え? ああ、そうだな……」
俺はポケットを探る。
――しかし、財布には見覚えのない硬貨が入っていた。
(……まずい)
「レン、お金……持ってないわね?」
「……うっ」
「やっぱりね! 仕方ないわ、私が立て替えてあげる!」
「助かる……!」
「でも、その代わり……あなたには、ちゃんと働いてもらうわよ?」
「えっ?」
「ギースの塔で、ね!」
ミーナはニヤリと笑った。
こうして、俺の異世界での冒険が始まった――。
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