神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第2章 ギースの塔

第22話 ギース冒険者協会

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冒険者協会の扉をくぐると、そこはまるで酒場のような雰囲気 だった。
木造の内装に、あちこちに設置された丸テーブル。
打ち合わせをする者もいれば、昼間から酒を煽っている者もいる。

しかし、全員が一様に使い込まれた武器や鎧を身に着けており、ただの飲んだくれではない ことが分かる。
冒険者――それがこの世界の一つの生き方なのだろう。

だが、俺とミーナが入ると、空気が変わった。

ジロリ……。

中にいた連中の視線が、俺を品定めするように眺めた後、ミーナに向けられると、露骨な嫌悪感が浮かんだ。
舌打ちをする者、唾を吐く者までいる。

(おいおい、なんだこの歓迎されてない感じは……?)

「行きましょう。受付は奥のカウンターよ」

ミーナはそんな視線を完全に無視し、堂々と歩き出した。

カウンターは全部で五つ。
左から順にD、C、B、A、Sと書かれたプレート が掲げられている。
一番左、つまりDランクのカウンターへと向かう。

受付に座っていたのは、美しいロングの金髪を持つ少女。
透き通るようなアイスグリーンの瞳に、長く尖った耳が特徴的だ。

(……エルフ!? まじで異世界なんだな)

そう思ったが、彼女は俺の視線を意に介さず、明るい声をかけてきた。

「いらっしゃいませ~! クエストの受注ですか?」

「いいえ、冒険者の登録をお願いします。」

ミーナが即答する。

「冒険者登録ですね。では、こちらの書類に記入をお願いします」

ミーナが書類を受け取り、俺の許可なく勝手に記入を始める。
チラッと覗き込むと、名前以外の部分は適当に埋めているように見えた。

(おいおい、俺の意思は……?)

まぁ、記憶が無い以上、どう書いても問題はないか。

ミーナが記入を終えると、受付嬢が確認しながら話しかけてきた。

「レンさんですね。えーと、使用する武器は剣ですか…… 今はお持ちではないようですが、装備はありますか? 無ければ無料レンタルも可能ですよ」

「お願いするわ。適当な剣とアーマーを見繕ってもらえる?」

(……俺の意思は?)

「かしこまりました。では、準備ができるまでフロアでお待ちください」

◆冒険者たちの冷たい視線

俺とミーナは、協会内のテーブルで待つことにした。
ミーナが頼んだのは「カナの実ジュース」。
森で採れるらしく、少し酸味が強いが疲れた体には染みる味だ。

俺が一気に飲み干したその時――

「おい! ミーナ! てめぇ、まだ冒険者続ける気かぁ?」

突然、大柄な男がミーナに絡んできた。
年齢は三十代後半くらいか? 筋肉質でガタイが良い。
鋼鉄製の片手斧を背負い、全身の装備も高級そうだ。

「また新人を連れてきやがって、今度は誰を殺すつもりだ?」

(……なんだ、この物騒な会話は?)

「ほっといてよ! あんたには関係ないでしょ!」

「いーや、放っておけねぇな! こいつが死んだら目覚めが悪くなる!」

男は俺を見て、ため息をつくように首を振った。

「おい、新人。こいつとつるむのはやめとけ。こいつは身内殺しで有名な女 だ。この町の冒険者で、ミーナと組もうって奴は誰もいねぇ」

(……身内殺し?)

ミーナは、唇を噛みしめて拳を握る。

「こいつはな、無理に上層階へ突っ込んで、パーティーを全滅させた んだよ。しかも、自分だけは前衛に出ないから生き残る ってな」

「違う! あれは事故だったのよ! 予想外の魔物が出現したの!」

「冒険者に予想外なんて通じねぇんだよ!!」

男は怒鳴りつける。

「まぁ、いい。忠告はしたぜ、新人。悪いことは言わねぇ、こいつと組むのはやめとけ。 もしそれでも行くなら、少なくとも10階層より上には行くな。先輩からのアドバイスだ」

「……ありがとうございます」

俺が礼を言うと、男は鼻で笑って自分のテーブルへ戻っていった。

ミーナは何も言わず、ただ唇を噛んでいた。

◆新たな装備と呪いの鎧

「レン様~、準備ができましたので、Dカウンターへ来てください」

受付嬢が声をかけてきた。

俺がカウンターへ向かうと、ミーナも黙ってついてくる。

「こちらがレンタル装備になります」

渡されたのは、鉄の片手剣と胸部を守る軽量プレートアーマー。
どちらも使い込まれた感があり、まるで歴戦の証のようだった。



(……悪くない)

剣を握ると、なんだかワクワクする。
記憶はないが、こういう武器を持つのは嫌いじゃないらしい。

「気に入ったみたいね」

ミーナが苦笑いする。

「装備の返却は無期限ですが、新しい装備を購入したら返却してくださいね!」

「……もし返さなかったら?」

「それは無理です。その鎧は呪われていて、協会で解除しないと脱げませんから!」

「は?」

試しに脱ごうとするが、ピクリとも動かない。

「な、なんだこれ!? マジで脱げねぇ!」

「ふふ、頑張って稼いでくださいね!」

受付嬢は爽やかに笑う。

(ちくしょう、罠か!?)

◆ミーナとの誓い

協会を出た瞬間、ミーナがポツリと呟いた。

「……抜けるなら今よ」

「抜ける?」

「さっき言われたでしょ? 私と組むと、死ぬかもしれない。」

ミーナは、視線を伏せる。

「本当はね……街で私と組む冒険者はいない。 だから、見かけないあんたを騙して仲間にしようとしたの」

「……でも、ミーナは塔に登る んだろ?」

「ええ、私には叶えたい夢があるから」

「じゃあ、俺も行くよ」

「……たった一食の恩で?」

「そんなの関係ないさ。危険なら、ミーナを連れて逃げる」

「……ありがとう。じゃあ、改めてよろしくね!」

ミーナは右手を差し出す。
俺は、その手をしっかりと握り返した。

こうして、俺の「冒険者」としての人生が始まった――。
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