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第2章 ギースの塔
第33話 トロール
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◆巨大草原に響く衝撃波
背の高い草に囲まれた湖の辺に、ぽっかりと開けた場所があった。
草は3メートル近くにもなり、大地を覆い隠すように密集している。
その中で、まるでサークルのように平らになったその場所には、二人の男女が立っていた。
一人は、美しい金髪を肩のあたりで切り揃えた少女。
彼女は、西洋風の蒼いワンピースを着こなし、大きな青い瞳で、もう一人の男の背中をじっと見つめていた。
もう一人の男は、この世界では珍しい黒髪と黒い瞳を持ち、背が高い。
ジーパンに黒いTシャツを着込み、その上からプレートアーマーを装備し、さらに黒いジャケットを羽織っている。
服は少しくたびれていたが、それでも戦い慣れた雰囲気を漂わせていた。
男は、自然体のまま、ゆっくりと呼吸をする。
「……じゃあ、行くか!」
そう言うと、男の体から光る透明なオーラのようなものが流れ出てきた。
それは次第に力強く、大きく膨らんでいく。
ミーナの青い瞳が大きく見開かれた。
男のオーラは半径3メートルほどの球状に広がり、凄まじいエネルギーを発していた。
大気が揺れ、周囲の草木がざわめく。
やがて、そのオーラは階層全体を包み込んだ。
ざわめく木々、飛び交う鳥や虫、土を這う小動物――
それらの一つ一つが、男の意識に鮮明に伝わってくる。
この空間のすべてを、男は正確に把握していた。
「これが……レンの、本気? あなた、本当に何者なの……?」
ミーナは、驚きに息をのんだ。
「かなり上の階層にも行ったことがあるけど、あなたほど化け物じみた魔力を持つ魔物はいなかったわよ?」
男――レンは、苦笑しながら肩をすくめた。
「酷いなぁ、魔物と一緒にしないでくれよ。それに、正確には、まだ全力じゃないよ」
「……あなた、本当に人間なの?」
ミーナの声が、かすかに震える。
「私、知ってるわよ。塔の魔力の泉を浴びた人間は魔法を使える。でも、あなたの力は、そういう次元の話じゃない。まるで――生まれながらに魔力そのものを操る存在みたい。」
レンは、その言葉には答えずに、ただミーナに手招きをした。
「な、何よ?」
ミーナは、若干警戒しながら、一歩後ずさる。
「いいから、来てって」
渋々、ミーナが近づくと――
一瞬のうちに、レンが彼女をお姫様抱っこした。
「……えっ!? な、何するのよ!? お、下ろしなさいよ! この、変態!!」
ミーナは一瞬、何が起きたのか理解できずに呆けたが、直後に顔を真っ赤にして、ジタバタと暴れた。
「こらこら、騒いでると、舌を噛むぞ? ……しっかり掴まってろよ?」
「えっ?」
次の瞬間――
空間干渉を発動したレンの足元の空間が歪む。
そして、一瞬にして音速を超えた。
気づけば、二人は上層への階段の前に立っていた。
◆暗黒の洞窟とトロールの襲撃
31階――そこは、光の一切差さない闇の洞窟だった。
今までの階層とは違い、松明のような明かりすら存在しない。
一寸先も見えず、ほんの少し動けば帰り道すら見失いそうなほどの完全な暗闇。
しかし――
「……なるほど」
レンにとっては何の問題もなかった。
即座にフォースを拡げ、空間認識を発動する。
洞窟全体が透けるように把握できた。
最短ルートも、上の階へ続く階段の位置も、一瞬で認識できる。
そして、前方に動く者の存在も――
岩のようにゴツゴツとした肌を持つ巨大な魔物。
身の丈15メートルの巨体に、鉄で覆われたフルフェイスの兜。
持っているのは、自分の体と同じくらいの大きさの棍棒。
「……通してくれそうにないな」
レンが一歩踏み出すと、トロールは気配を察知し、棍棒を振り上げた。
「ちっ」
巨大な棍棒が地面を砕き、洞窟全体に衝撃が走る。
レンは素早くミーナを下ろし、拳を握った。
「剣なんか、いらねぇな」
右腕に魔力を凝縮する。
「魔力圧縮拳」
拳の周囲に亀裂が走る。
次の瞬間――
ドンッ!!!
レンの拳がトロールの腹に突き刺さる。
空間が歪み、衝撃波が四方八方へ広がった。
トロールの巨体がのけ反り、背中が砕けるように抉れる。
「ブ……ブギィ……」
トロールの目から光が消え、ゆっくりと崩れ落ちた。
◆ミーナの叫び
レンが振り返ると、ミーナが顔を真っ青にしていた。
「……はぁ……俺には、剣は向いてないな。やっぱり素手が一番か」
そう言いながら、レンはミーナの方へ歩み寄る。
「ま、まさか、またやるつもり!?」
ミーナが後ずさる。
「だって、この方が早いだろ?」
「ちょっと待って! 先に心の準備を――うわああああああ!!!」
洞窟に、ミーナの悲痛な叫びが響き渡った。
背の高い草に囲まれた湖の辺に、ぽっかりと開けた場所があった。
草は3メートル近くにもなり、大地を覆い隠すように密集している。
その中で、まるでサークルのように平らになったその場所には、二人の男女が立っていた。
一人は、美しい金髪を肩のあたりで切り揃えた少女。
彼女は、西洋風の蒼いワンピースを着こなし、大きな青い瞳で、もう一人の男の背中をじっと見つめていた。
もう一人の男は、この世界では珍しい黒髪と黒い瞳を持ち、背が高い。
ジーパンに黒いTシャツを着込み、その上からプレートアーマーを装備し、さらに黒いジャケットを羽織っている。
服は少しくたびれていたが、それでも戦い慣れた雰囲気を漂わせていた。
男は、自然体のまま、ゆっくりと呼吸をする。
「……じゃあ、行くか!」
そう言うと、男の体から光る透明なオーラのようなものが流れ出てきた。
それは次第に力強く、大きく膨らんでいく。
ミーナの青い瞳が大きく見開かれた。
男のオーラは半径3メートルほどの球状に広がり、凄まじいエネルギーを発していた。
大気が揺れ、周囲の草木がざわめく。
やがて、そのオーラは階層全体を包み込んだ。
ざわめく木々、飛び交う鳥や虫、土を這う小動物――
それらの一つ一つが、男の意識に鮮明に伝わってくる。
この空間のすべてを、男は正確に把握していた。
「これが……レンの、本気? あなた、本当に何者なの……?」
ミーナは、驚きに息をのんだ。
「かなり上の階層にも行ったことがあるけど、あなたほど化け物じみた魔力を持つ魔物はいなかったわよ?」
男――レンは、苦笑しながら肩をすくめた。
「酷いなぁ、魔物と一緒にしないでくれよ。それに、正確には、まだ全力じゃないよ」
「……あなた、本当に人間なの?」
ミーナの声が、かすかに震える。
「私、知ってるわよ。塔の魔力の泉を浴びた人間は魔法を使える。でも、あなたの力は、そういう次元の話じゃない。まるで――生まれながらに魔力そのものを操る存在みたい。」
レンは、その言葉には答えずに、ただミーナに手招きをした。
「な、何よ?」
ミーナは、若干警戒しながら、一歩後ずさる。
「いいから、来てって」
渋々、ミーナが近づくと――
一瞬のうちに、レンが彼女をお姫様抱っこした。
「……えっ!? な、何するのよ!? お、下ろしなさいよ! この、変態!!」
ミーナは一瞬、何が起きたのか理解できずに呆けたが、直後に顔を真っ赤にして、ジタバタと暴れた。
「こらこら、騒いでると、舌を噛むぞ? ……しっかり掴まってろよ?」
「えっ?」
次の瞬間――
空間干渉を発動したレンの足元の空間が歪む。
そして、一瞬にして音速を超えた。
気づけば、二人は上層への階段の前に立っていた。
◆暗黒の洞窟とトロールの襲撃
31階――そこは、光の一切差さない闇の洞窟だった。
今までの階層とは違い、松明のような明かりすら存在しない。
一寸先も見えず、ほんの少し動けば帰り道すら見失いそうなほどの完全な暗闇。
しかし――
「……なるほど」
レンにとっては何の問題もなかった。
即座にフォースを拡げ、空間認識を発動する。
洞窟全体が透けるように把握できた。
最短ルートも、上の階へ続く階段の位置も、一瞬で認識できる。
そして、前方に動く者の存在も――
岩のようにゴツゴツとした肌を持つ巨大な魔物。
身の丈15メートルの巨体に、鉄で覆われたフルフェイスの兜。
持っているのは、自分の体と同じくらいの大きさの棍棒。
「……通してくれそうにないな」
レンが一歩踏み出すと、トロールは気配を察知し、棍棒を振り上げた。
「ちっ」
巨大な棍棒が地面を砕き、洞窟全体に衝撃が走る。
レンは素早くミーナを下ろし、拳を握った。
「剣なんか、いらねぇな」
右腕に魔力を凝縮する。
「魔力圧縮拳」
拳の周囲に亀裂が走る。
次の瞬間――
ドンッ!!!
レンの拳がトロールの腹に突き刺さる。
空間が歪み、衝撃波が四方八方へ広がった。
トロールの巨体がのけ反り、背中が砕けるように抉れる。
「ブ……ブギィ……」
トロールの目から光が消え、ゆっくりと崩れ落ちた。
◆ミーナの叫び
レンが振り返ると、ミーナが顔を真っ青にしていた。
「……はぁ……俺には、剣は向いてないな。やっぱり素手が一番か」
そう言いながら、レンはミーナの方へ歩み寄る。
「ま、まさか、またやるつもり!?」
ミーナが後ずさる。
「だって、この方が早いだろ?」
「ちょっと待って! 先に心の準備を――うわああああああ!!!」
洞窟に、ミーナの悲痛な叫びが響き渡った。
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