神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第2章 ギースの塔

第43話 目覚めと錯覚

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◆目覚めと錯覚

 柔らかく、心地よい感触が頭を包み込んでいた。

 これは、夢か?

 俺の身体は驚くほど軽く、痛みも感じない。意識が深い霧の中を漂い、何も考えることなくただこの感触に身を委ねていた。

 ――誰かが、俺の頭を撫でている?

 ゆったりとした指の動きが、妙に心を落ち着かせる。指先が額に触れ、やさしく髪を梳く。その手の動きに、俺の心は次第に穏やかになっていった。

 「……俺、何してたんだっけ?」

 闘っていた。
 オーバーロードと戦い、致命傷を負った。
 血を流しすぎて、意識が遠のいていった。

 ――だが、痛みを感じない。

 この温もりと安らぎに包まれたまま、思考が漂う。
 まるで母親の腕の中に戻ったような、懐かしく、そして寂しい感覚。

 ――もしかして、俺は死んだのか?

 そう思った瞬間、胸の奥が妙にざわついた。

 「……死ぬのは、やだな。」

 ふと、本音がぽつりとこぼれる。

 ――もう一度、キョンちゃんに……会いたい。

 その名前を口にした瞬間、俺の意識は急激に覚醒した。

◆覚醒と現実

 「キョンちゃん!?」

 勢いよく目を開く。

 視界に映ったのは――紅い瞳。

 「あっ! 目が覚めた! 良かった!」

 ――赤髪の女の子。

 誰だったか? どこかで見たことがある……。

 思い出す。鎖に繋がれ、辱めを受けそうになっていた少女――エニス。

 どうやら俺は、彼女の膝の上で眠っていたらしい。

 「そうか……君も死んでしまったのか。助けられなくて、ごめんよ。」

 俺は悲しさに耐えられず、左手で顔を覆った。

 すると、その瞬間――

 「痛っ!? ……ん? 痛い?」

 肩に鋭い痛みが走った。驚いて肩を触る。

 ――痛みを感じる。

 つまり、俺は……生きている。

 「当たり前でしょ!? 何寝ぼけてんのよ!」

 透き通るような声が響く。

 視線を向けると、金髪の少女――ミーナが腕を組んで立っていた。

 「ミーナ……そうか、ミーナが助けてくれたのか。」

 ようやく意識がはっきりしてくる。

 周囲を見回すと――

 数千もの骸骨兵士が、氷漬けになっていた。

 まるで巨大な彫像のように、骸骨たちは凍りつき、動きを止めていた。

 「すげぇな、これ全部ミーナがやったのか?」

 「レンのおかげで魔力を温存できたからね! でも、もうスッカラカンよ!」

 ミーナは誇らしげに胸を張る。

 ――だが、その後ろで、エニスの豊満な胸が揺れたのを見た後だと、ミーナの貧乳が余計に哀愁を帯びて見えた。

 「……なによ、その目は?」

 「いや、別に。」

◆塔の頂上への招待

 俺たちは戦いを終え、ようやく地上へ帰ろうとしていた。

 だが、その瞬間――

 「帰さないよ。」

 少年のような声が響いた。

 「……今のは何だ?」

 俺はミーナに視線を向ける。

 「私じゃないわよ!」

 ミーナがむくれるように言う。

 「まだ敵が残っているんでしょうか?」

 エニスが不安げに呟く。

 「いや、そんなはずはない。」

 ――俺の空間認識には、敵の気配は感じられない。

 しかし――

 「君たちは、絶対に帰さない。」

 次の瞬間、俺たちの視界がぐにゃりと歪んだ。

 壁が揺らぎ、天井がねじれ、世界そのものが変貌していく。

 「な、何だこれは!?」

 瞬きをした次の瞬間、俺たちは全く違う場所にいた。

 そこは――

 異常に広い子供部屋のような空間。

 床には無数の玩具が散乱し、壁には落書きがびっしりと描かれている。

 だが、何よりも異様なのは、この空間が持つ”圧倒的な違和感”だった。

 「ここは……どこだ?」

 俺の背筋に、じわりと冷たい汗が滲む。

 その時――

 「やあ、よく来たね!」

 背後から、明るくも冷たい声が響いた。

 俺たちは、一斉に振り返る。

 そこにいたのは――

 真っ白な髪と朱い瞳を持つ少年。



 青いローブをまとい、透き通るような白い肌を持つ美少年が、ニヤリと笑って立っていた。

世界の管理者 ラティヌス

 「……お前は誰だ?」

 俺は警戒しながら尋ねる。

 ――この少年の”力”が、俺を遥かに凌駕していることを、本能で理解していた。

 こいつは、ヤバい。

 俺の頬から、一筋の汗が流れる。

 「まあまあ、そんなに警戒しないでよ。僕の名前は ラティヌス。」

 「……ラティヌス?」

 「そう、僕は この世界の管理者 を司っている。」

 「世界の管理者……?」

 ミーナが驚きの表情を浮かべる。

 「つまり、“神”ってこと?」

 「アハハ、神様じゃないよ。でも、神にこの世界の管理を任されている存在さ。」

 ラティヌスは微笑みながら言う。

 「それにしても、君たちはすごいよ。塔の頂上まで来た最初の人間 になったんだからね。」

 俺たちは、衝撃で言葉を失った。

 「そう、ここは塔の最上階。そして、君たちは 最初の到達者 だ。」

 ――だが、これは祝福ではない。

 この少年は、“何か”を企んでいる。

 俺は、拳を握りしめながら、静かにラティヌスを睨んだ。
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