神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

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第3章 魔法大学ザザン

第49話 交渉の座

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クラウスは深く息を吐きながら、自身の椅子へと腰を下ろした。
高級なレザーが体を包み込み、長年馴染んだ柔らかさが心地よい。
彼は椅子の背に体を預けながら、落ち着いた口調で言った。

「まあ、お主も座るがよい。」

クラウスは、向かいに立つレンへと視線を向け、豪華な毛皮張りのソファーを指し示した。

「あ、ああ……じゃあ、失礼します。」

レンは警戒しながらも、静かにソファーに腰を下ろした。
すると、ふかふかの感触が全身を包み込む。

(……想像以上に心地いいな。)

肩の力が抜ける。
だが、同時にこのソファーが交渉を有利に進めるための“道具”であることも理解できた。

「さて、まずは自己紹介といこうかのぉ?」

クラウスは手を組み、落ち着いた口調で続けた。

「ワシの名は、クラウス・バン・ウィリアム。この魔法大学ザザンの学長を務める者じゃ。」

「魔法大学……学長……?」

レンは少し目を細めた。

(また、違う世界か。)

何度繰り返しても、元の世界に戻れない。
最初の衝撃ほどではないが、諦めにも似た感覚が胸を満たしていた。

少なくとも、目の前の人物はこの世界の重要人物であり、敵対するのは得策ではない。

 「学長とは知らず、こちらこそ、大変失礼致しました。俺の名は、レンと申します。」

 レンは、名を名乗るが、自分の素性は話さない。前の世界では、異世界から来たと言う理由だけで、殺すと脅された。・・・何がきっかけで、命を狙われるか、分かったモノじゃない。

「ふむ、では早速じゃが、本題に入ろうかのぉ……レン殿、お主は異世界から来た者じゃな?」

その言葉に、レンの表情がこわばる。

「……どうして、それを?」

「先ほど見せた亀裂……伝説に聞く『ゲート』に似ておる。」

「ゲート?」

レンは眉をひそめた。

「うむ。神が異世界と繋がるために開く扉じゃ。時折、異世界の者を召喚するために使われるらしい。」

「……なるほどな。」

レンは少し考え込む。
この世界にも、異世界に関する知識を持つ者がいるのか?

だが、クラウスはその思考を見透かしたように笑う。

「お主がゲートを使わずに自力で異世界を渡ったこと、ワシには分かっておる。」

「……!」

「驚いたか? まあ、当然じゃろうな。ゲートは神の力がなければ開けぬ。
 だが、お主はそれを使わずに異世界の壁をこじ開けた。
 これは、異世界召喚の研究をしておるワシにとって、非常に興味深いことなのじゃ。」

クラウスは目を細め、慎重に言葉を選びながら続ける。

「そこで、お主に提案がある。」

「……提案?」

レンは警戒しながら尋ねた。

「そうじゃ。ワシと協力関係を結ばぬか?」

「俺に何をさせるつもりだ?」

「簡単なことじゃ。」

クラウスは指を一本立てる。

「まずは、このザザン魔法大学に入学してもらう。」

「……入学?」

「そうじゃ。大学の研究施設と膨大な文献、そして優秀な教授陣を使えば、異世界渡航の法則を導き出せる可能性が高い。そして、お主にはワシの研究を手伝ってもらう。」

「……なるほどな。」

レンは少し考えた。

(情報も得られるし、記憶回復の手がかりもある……この提案は悪くない。)

「条件は?」

クラウスは指を三本立てた。

「一つ目、ザザン魔法大学に入学し、正式な生徒として学ぶこと。
二つ目、ワシの研究に協力し、週に一度ワシの質問に答えること。
三つ目、最低しばらくの間は、この世界を離れないこと。」

レンは目を細めた。

「しばらくの間……? どのくらいを想定してる?」

クラウスは少し笑いながら答えた。

「具体的な期間は決めておらん。だが、お主の力を詳しく調べるには、少なくとも数年はかかるじゃろうな。」

「……随分と悠長だな。」

「急ぐ理由があるのか?」

クラウスの問いに、レンは一瞬黙った。
本当ならすぐにでも元の世界に戻る手がかりを探したい。
だが、ここには異世界召喚の研究がある。
焦って適当に異世界を渡り続けるより、ここで知識を得た方が合理的かもしれない。

「……少なくとも、この世界について知る時間は必要か。」

「その通りじゃ。急ぎすぎると道を誤ることもある。お主には慎重に歩を進めてほしいのじゃ。」

「分かった。……交渉成立だ。」

レンは手を差し出した。

クラウスは満足げに微笑みながら、その手をしっかりと握った。

こうして、レンの魔法大学での新たな生活が幕を開けることとなった——。
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